北朝鮮、ミサイル実験で「核の反撃」シミュレーション
By Andrew Salmon – The Washington Times – Monday, March 20, 2023
【ソウル】北朝鮮は、米韓の軍事訓練は侵略の予行演習だと主張し強く反発、20日にまた短距離弾道ミサイルの発射実験を行った。北朝鮮は、ミサイルの試射は戦争ドクトリンを見直し、向上させるための幅広い取り組みの一環だと主張している。
2日間にわたった北朝鮮の試射は、復活した米韓両国軍によると軍事演習「フリーダムシールド」中に行われ、韓国側の情報によると、試射の中で、核攻撃制御システムの管理、部隊の核反撃態勢への移行、模擬核弾頭を搭載した戦術弾道ミサイルの発射が行われた。
今回も金正恩総書記とともに10歳になったばかりの娘、ジュエさんがミサイル発射を視察、北朝鮮北西部の路上から発射されたミサイルは、800キロ飛行し、日本海に落下した。
北朝鮮はあらゆる種類のミサイルの発射を行ってきており、短距離弾道ミサイルの発射実験は特に注目されるものではない。しかし、北朝鮮の公式メディアは、今回の演習がより広範囲に及ぶ包括的な戦略的重みを持つものであることを強調した。
北朝鮮の国営通信は、金氏は「いかなる不測の事態にも対応し、…いつでも即時かつ圧倒的な核反撃を行うという積極的な姿勢で完璧に準備する」必要があると強調したと伝えている。
一方の韓国では、ソウルとワシントンが2017年以来最大の年次軍事演習「フリーダムシールド」を繰り広げている。演習は23日まで行われ、進化する北の脅威に対抗することを目的としている。米韓両軍は大規模な上陸演習を計画しており、北朝鮮のミサイル発射が目撃されたのはその直前だった。
韓国の訓練は、2月に米国で行われた非公開の図上訓練に続くもので、北朝鮮による核兵器攻撃への対応に特に焦点を当てている。
北朝鮮は先週、大型の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」と潜水艦発射ミサイル2発を発射した。また、約140万人の国民が軍に志願したと主張した。
しかし、韓国のアナリストらによると、北朝鮮が核兵器使用手順の修正とミサイル部隊の訓練を強調したことは、孤立したこの国の大量破壊兵器プログラムにおける明確な変化を示している。
ソウルを拠点に活動する米トロイ大学のダニエル・ピンクストン教授(国際関係学)は、「脅威とは、能力と意図であり、北朝鮮は過去10年間、集中的に能力の獲得に取り組んできた。今、それは結実し、私たちは配備と準備を目にしている。意図の部分は、『それを使って何をするか』ということだ」と述べた。
ソウルの多くの人々は、金氏がロシアのプーチン大統領に倣ってウクライナに侵攻し、核攻撃という脅しで外部からの介入を防ぐことを恐れている。
もう一つの可能性は、米国の援軍が半島に到達するのを防ぐために、北朝鮮がより小規模な「戦術的」核攻撃を行うことである。
毎年春に実施されるこの演習に参加している退役米軍少佐のデービッド・パーク氏は「米国の抑止力は、数日以内に旅団戦闘チームを空輸し、1、2カ月以内に師団を空輸する能力に依存している。そのためには、空と海の降下地点が完全に機能している必要がある。もし、敵対行為の最初の24時間以内に、現在駐留している在韓米軍とともに、これらが破壊された場合、米軍の反撃計画は練り直す必要がある」と述べた。
また、パーク氏は、自国が攻撃されることを恐れる日本政府によって、米国の行動の自由が制限される可能性があると指摘した。実際、グアム、日本の沖縄と嘉手納、韓国南部など、米軍が集中している地域は、北朝鮮の兵器が届く範囲にある。
そして、もし米政府が自国の核で対抗した場合、米国へのリスクはスパイラル的に増大する。韓国系米国人のパーク氏は「北朝鮮からワシントンへの攻撃なら、米国はその気になるのか」と言う。
バイデン政権は、今週の演習にB1B戦略爆撃機を投入し、同盟国を守るという約束を繰り返し表明し、米国の関与を強調した。
現在行われている演習には、米国のB1Bが参加しており、14日にも従来通り米国の関与を改めて表明した。
国防総省のパット・ライダー報道官は最近のブリーフィングで、「北朝鮮が核兵器を使用すれば、北朝鮮政権の終焉となることをわれわれは明確に伝えてきた」と述べた。
韓国の退役将校であるチュン・インボム氏は、北朝鮮が核攻撃を開始した場合、米国はそれ以上の反撃をする可能性が高いと警告した。
彼は外国人記者団に、「韓国には約5000人の(軍属の)米国の子供たちがいる。もし北朝鮮が米国の子供たちを殺したら、米国民の怒りは凄まじいものになるだろう」
米韓は朝鮮戦争が終息した1953年に締結された相互防衛条約で結ばれており、ピンクストン氏も韓国への米国の支援が弱腰とは思っていない。
「もし、韓国を侵略し、米国が介入しないと思っているのなら、それは単なる勘違いであり、北朝鮮もそれを知っている。北朝鮮がグアムや嘉手納、釜山を核攻撃したら、米大統領は何もしないで黙っていることはできない」
このようなリスク評価は、国家の経済的資源の膨大な割合を、実用性に乏しい兵器に投資してきた金氏にとっては問題である。
核武装した米国が非核のベトナムに勝てず、核武装したロシアが非核のウクライナに苦戦しているように、金氏の核兵器は分断された朝鮮半島での通常戦争でも同様に役に立たないかもしれない。
ピンクストン氏は「核兵器は抑止力として信頼できる。しかし、核兵器を使っていかに脅迫し、強制するかは、誰も実証できていない」と述べた。