ウクライナ・ロシア:ハイテクを駆使した第一次大戦?
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Monday, May 8, 2023
【フロリダ州タンパ】それは主要大国の間で展開された初めてのハイテク衝突であり、21世紀に進化する戦闘を間近に見極める紛争になるだろうと言い交わされた。しかしロシアとウクライナの戦争は、ドローンやアイフォンを駆使した第一次世界大戦、とでも言えるような、戦術や戦略では大方の予想よりもはるかに、伝統的なアプローチに多くの共通性がある、一部のアナリストはそう指摘している。
確かにこの戦争では現代の技術、例えば無人航空機、高度な通信システム、次世代型ミサイル防衛システム、ソーシャルメディアなどが重要な役割を果たしている。しかし15ヶ月目に入った戦場の核心部分では大砲、地上での機動作戦、戦車戦や、一世紀以上も前の第一次世界大戦を思わせる深く掘った防御用の塹壕まで、どこかで見たような光景が展開してきた。
米国をはじめ各国の軍隊は、この紛争から何らかの教訓を引き出すだろうが、この戦争が今後の戦闘スタイルを永久に変容させる、という期待感はまだ証明されていない。
「私にとって今回の戦争は未来的な戦いのイメージより、第一次世界大戦に高精度の大砲やドローンを持ち込み、スマートフォン、対衛星・対戦車ミサイルを駆使し、戦闘の主体は弾幕砲撃と防御的な塹壕に支配された光景だ」、ブルッキングス研究所で外交政策を担当するマイケル・オハンロン主任研究員は語った。同氏は軍事政策と現代型の戦争を幅広く研究している。
今週、米国の特殊作戦司令部とグローバル特殊作戦部隊財団が主催した特殊作戦部隊会議の主要テーマは、ロシア・ウクライナ戦争から見た米国の兵器開発と戦時の戦略、というものだ。特殊作戦の専門家や、防衛産業のリーダーによる世界規模の集まりとして、最先端軍事技術の重要なイベントだ。
ここで論じられる軍事技術は、将来の戦いに確実に影響を与えるだろう。仮に太平洋で中国との衝突が発生した場合、海上や沿岸地域で戦われる可能性が高く、上空や海上での無人航空機・船舶や、サイバー戦争能力、電子戦その他の画期的な機材に依存するだろう。またロシア・ウクライナ戦争の戦場では、サイバー攻撃や偽情報キャンペーンよりも、天候が極めて大きなウェイトを占めてきた。
過去15ヶ月間にウクライナが要請し続けてきた軍事援助は、軍事産業の世界で「肉とジャガイモ」と呼ぶミサイルシステムや戦車、対戦車兵器、装甲地上車両、そして戦闘機などが中心だ。秋の戦闘でウクライナはそれらの武器を駆使し、ロシア軍をハリコフ、ヘルソンなどの主要都市から撃退した。
それ以降の数ヶ月間、戦闘の前線はほぼ凍結状態だ。例外は、ウクライナ兵たちがロシアの冷酷な攻撃に耐え、バフムトの西端にしがみついている激戦だ。バフムトの次にウクライナが標的にしているのは、ロシアと奪い合っているドンバス地域から追い出す第二次反転攻撃、およびロシアとその代理軍が2014年以来保持してきたウクライナ領クリミアから撃退する野心的なものだ。
一方でロシア軍は防御態勢を固めてきたが、その方法は主に膨大な量の土砂を移動するやり方だ。英国の諜報関係者は今月、ロシアの戦場について「数十年このかた世界のどこでも見られなかった規模の軍用防御工事のひとつ」と表現した。いわば第一次世界大戦の最も暗鬱な時代、敵味方の緩衝地帯として作られた塹壕ラインの再現だ。
米軍トップも過去6ヶ月間に展開された戦闘に、そうした共通性を感じている。米誌「フォーリン・アフェアーズ」との最近のインタビューで、統合参謀本部議長を務めるマーク・A・ミリー将軍は、ウクライナの反撃作戦が首尾よく行われ、状況は「冬に向けて準備されている」と述べた。
「冬の間に多くの戦闘が行われたが、ほとんど第一次世界大戦のスタイルを踏襲したものだ。バフムトが例外的になるかもしれないが、大きな領土の主権変更はほとんどなかった」、ミリー将軍は続ける、「今の前線の状況は、たぶんワシントンD.C.やアトランタにまで拡大し続けるようなイメージだ。前線での主権交代は少ないが、根本的に行き詰まっているからだろう」。
振り返り、そして未来へ向かう
第一次世界大戦に酷似する要素はあっても、ロシア・ウクライナ戦争が起きているのは歴史上の今の瞬間だ。砲兵の出来具合と、間近に迫っている塹壕をめぐる戦闘の行方が、この紛争の次の段階を規定する可能性がある。より広く言えば、軍事指導者たちは、戦争が間違いなく大きな歴史的変貌を遂げているのを目撃しているようだ。戦争の手法が大弓から火薬の発明、連装ライフル銃、装甲車両や艦船の導入といった具合に、数世紀をかけて変わってきたのと似たようなものだ。
「フォーリン・アフェアーズ」誌へのインタビューでミリー将軍は、現代の技術が防衛産業界に、いまだ不透明だが確実に革新の波を起こしているようだ、と説明した。
「今我々が経験しているのは、記録された歴史の中で戦争の性格が根本的に変化していることで、それは技術に主導されたものだ」、ミリー将軍はその例として、センサー、長距離の精密射撃能力、極超音速兵器、通信、ロボット工学、無人システムなどを挙げた。
「それらが将来の軍事作戦に大きな影響を与えることは疑いの余地がない」、同将軍は続けた、「過去と同様、戦争遂行のためにこうした技術を最適化できる国が、少なくとも戦争の初戦段階で決定的な優位性を持つだろう。私はそれがアメリカであってほしい。」
ウクライナはこれら技術の一端を使って、しばしば大きな成果を収めてきた。首都キエフに向けたロシア側の大規模前進を止めるために、戦争初期からドローンと長距離大砲を駆使した。最近もウクライナ当局者は、ロシア支配下のクリミア半島にある石油貯蔵庫へのドローン攻撃は、ウクライナ側に責任があることを示唆した。一方で、クレムリンへのドローン攻撃未遂については、ロシアがウクライナ関与を主張しているにもかかわらず、ウクライナ側は否定している。
ウクライナは破壊されたロシアの装備の写真やビデオを、ソーシャルメディアを通じて流している。一方のロシアは広範なネット検閲を駆使して、国民が入手できる戦争情報を制限している。
アナリストは、そのいずれも戦争の真実で公平な評価を提供していないと言う。戦略国際研究センターのマーク・A・カンシアン上級顧問は、戦争初期での技術に関するすべての話の中で、ウクライナの最も切迫したニーズは間違いなく、少しでも多くの砲弾がほしいという、戦争の昔ながらの性格を示している、と指摘した。
「戦争が終わってから精度の高い情報を得られるまで、我々は明瞭な教訓を持てないだろう」、カンシアン上級顧問はワシントン・タイムズに語った。「現状でロシア・ウクライナ双方とも、戦争戦略の一環として情報を厳しく管理しており、どの戦術が効果的または効果的でなかったかを明言するのは難しい。オンラインビデオは強いインパクトを与えてくれるが、それらは二次的な挿話のようなものだ。」「一つの明確な教訓は、紛争中に弾薬生産を急増させる必要性だ。砲兵用の弾薬だけでなく、他の地上攻撃でも同様だ」、「戦車は開戦当初に極めて脆弱だと見なされていたが、今は重要視されているようだ。ドローンは明らかに強力だが、それが戦局を転換できるものか否か、より多くの分析が必要だ。」