米移民当局、犯罪歴のある不法移民を多数解放

(2023年5月16日)

2023年5月9日火曜日、メキシコのシウダー・フアレスから見た、米国とメキシコの国境にある有刺鉄線バリアと国境フェンスの間で、米国当局を待つ移民たち。米国は、亡命を求める多くの移民を迅速に追放することを可能にしたコロナウイルスのパンデミックと関連したタイトル42政策の5月11日(木)の終了に向けて準備を進めている。(AP Photo/Christian Chavez)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Tuesday, May 9, 2023

 移民税関捜査局(ICE)は、国境に迫る移民の急増に備え、犯罪歴のある者を含む拘束中の不法移民を解放して、収容スペースを確保する計画だ。

 ICEは、6週間前の2万8000人以上から、今月初めには2万3000人以下に収容人数を減らした。これには、ICEが解放した犯罪歴のある数百人が含まれている。

 ICEのテ・ジョンソン長官代理は先月、議会に対し、11日夜に政権が新型コロナの感染拡大を受けた移民制限措置(タイトル42)を失効させることから、国境の混乱に対応するためのスペースを十分に確保するために、収容者数を2万1000人以下にまで削減したいと述べた。

 ジョンソン氏は、犯罪者でない収容者を中心に解放するつもりだが、犯罪者を解放する可能性もあると述べた。ジョンソン氏は、解放される犯罪者は「刑が非常に軽い犯罪者」となると述べた。

 ICEは9日、コメントの要請に応じなかったが、4月下旬に公表したデータでは、3月の1410人に加えて、先月は800人以上の犯罪歴のある移民を解放したと述べている。そのほとんどは、裁量による解放だった。

 これは、国土安全保障省が、今後急増する不法移民と、彼らをどこに収容するかという難問に対処するための方法の1つに過ぎない。

 全米の州や都市は、過去2年間に入国してきた移民で手いっぱいだと主張している。

 ニューヨーク市は、その負担を軽減するために、人々を内陸に移動させるとしている。しかし、内陸部では移民を受け入れることができないとしている。テキサス州は州兵を一種の国境警備隊として送り込み、新たな入国者を阻止し、グレッグ・アボット知事(共和)はニューヨークなどに移民を送るためのバス輸送を増やすと宣言した。

 一方、連邦政府の状況も決して良くはない。

 ICEの関連機関で、移民を国境で短期滞在させる税関・国境警備局(CBP)は、9日には2万7000人を拘束していたと報告されている。FOXニュースのビル・メルギン氏は、国境警備隊は、移民を受け入れるスペースがない場合、国境のコミュニティーに直接、解放するよう命じられていると報じた。

 その数は増える一方だ。

 週末、国境警備隊は、タイトル42の失効前にもかかわらず、1日に9000人近くの不法移民を拘束したと報告した。数週間前は、1日5000人だった。

 カリーヌ・ジャンピエール大統領報道官は、対応に必要な手段を議会が政権に十分与えていないと非難した。

 ジャンピエール氏は、各機関は今あるものを使って取り組まざるを得ないと述べた。

 「今、私たちは、人道的な方法で対処するためのしっかりした計画、複数の省庁が取り組むべき計画があると思っている」

 国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、タイトル42の失効後、不法移民を抑制するために通常の移民法を活用することになると述べた。これは「略式退去」として知られ、この手順に従って迅速に移民を退去させる。マヨルカス氏は、「数日から数週間で、退去させることができる」と述べた。

 マヨルカス氏は先月、自身の計画を発表した際に記者団に、「国境に到達したものの、滞在する法的根拠を持たない人々は、大変なトラウマを抱え、密入国業者に全財産を支払っていることがよくあるが、すぐに追い出されることになる」と語った。

 略式退去はまた、長期的な影響をもたらす。タイトル42の追放とは異なり、正式な国外退去としてカウントされる。退去後に再入国した者は、重罪に問われる可能性がある。

 略式退去は一般に追放よりも時間がかかり、母国の政府の多大な協力が必要となることもある。敵対する国の中には、そのような協力を拒否するところもある。

 その結果、多くの国籍の人々にとって、略式退去は、略式とは言い難いものとなっている。

 共和党のジェームズ・ランクフォード上院議員(オクラホマ州)が昨年入手した資料によると、2022年に略式退去に追い込まれた移民のうち、実際に退去したのはわずか7%だった。オバマ政権時の割合はそのおよそ10倍だった。

 ランクフォード氏は声明でワシントン・タイムズに、「バイデン政権では略式退去が間違って理解されている。退去させられた移民はほとんどおらず、迅速な退去はさらに少ない。タイトル42の代用として略式退去を使用していることは、厳しく対応しているように見えるかもしれないが、略式退去の対象のうち、米国から退去させられたのはわずか7%であり、わが国をより安全にするためには何の役にも立たない」と述べた。

 メキシコは、退去させられた自国民を引き取ることに加え、国境を越えて米国に流入した人々の中から、月に最大3万人を受け入れることに同意している。マヨルカス氏は、タイトル42の終了後もその協力は続くと予想していると述べた。

 国境に到達した移民のおよそ4分の1は、親を伴わない子供や、家族で一緒に移動する親子だ。バイデン政権の政策では、そのほとんどが捕まり、自動的に解放される。

 そのため、メキシコに戻すこともできず、すぐに強制送還することもできない独身の大人がかなりの数残っており、ICEが新たに確保したスペースはすぐにいっぱいになってしまう。

 ICEは1日に3万4000床の収容ベッドを確保する予算を有しているが、現在進行中の新型コロナの制限により、そのうちの数千床は使用できない。最近の解放でICEはおよそ1万床を空けていることになり、これは急増する移民1日分を収容するのに十分な数だ。

 先月のICEの最新データでは、2万4944人(すべて単身の成人)が保護された。そのうち1万790人は犯罪歴があることが分かっており、残りは通常の移民法違反者とみなされる。

 問題の一つは、移民が母国でどのような犯罪歴を持っているかを米国が把握していないことが多いことだ。

 ジョンソン氏は先月、議会で「私たちが記録を入手できない国は多い」と述べた。

 ICEに拘束された人々のうち、およそ半数は略式退去を待っている。

 一部のアナリストは、バイデン氏には他の手段もあるが、それらを使おうとしないと主張している。

 元移民判事で、現在は移民改革法研究所の調査部長を務めるマット・オブライエン氏によると、トランプ大統領が一部のイスラム圏の国々に渡航禁止令を出したことに対する最高裁の判決が示している通り、大統領は、正当な理由がある限り、あらゆる移民を阻止する広範な権限を与えられている。

 オブライエン氏は、移民制度が対処しきれていないことはこの正当な理由に該当すると述べた。

 「タイトル42がなくても、この問題に対処するために、あらゆる種類のことが可能だ。移民国籍法(INA)には、十分すぎるほどの権限がある」

 その最たるものがINAの1182条(f)で、大統領が「米国の利益に反する」と判断した場合はいつでも、「あらゆるレベルの外国人の入国を停止する」ことができるとされている。

 トランプ氏の渡航禁止令に関する2018年の判決で最高裁は、その条項は大統領が「優越していることを示している」と述べた。

 共和党のトーマス・ティファニー下院議員(ウィスコンシン州)は今週、迫り来る大波に対処するため、バイデン氏にこれらの権限を行使するよう促す書簡を発表した。

 ティファニー氏は書簡で「大統領に就任してからの2年間、国境をめぐる前例のない混乱と国境開放政策が米国の家族、地域社会、納税者に不利益をもたらしたことは間違いない。大統領はもっと早く、この権限を行使すべきだった」と主張した。

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