対ハマスで新たな軍事戦略を試すイスラエル
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, November 16, 2023
イスラエルは願わずして、21世紀の戦争に対する新たな戦略を試すこととなった。
専門家によると、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスに対して繰り広げる反撃は、イスラエルが再構築した軍事ドクトリンの初の実地試験となっている。イスラエルは、既存の軍隊との大規模衝突の可能性よりも、21世紀の非対称戦に勝利するため、特殊地上部隊、航空戦力、情報収集、サイバー戦能力の融合に重点を置いている。
イスラエルの新戦略は、必要に応じて2正面戦闘を遂行できるだけの人員と火力の必要性も認識している。イスラエル軍はガザ地区でハマスと対峙する一方、北部国境ではレバノンを拠点とする過激派組織ヒズボラとの間でくすぶる抗争に巻き込まれている。
専門家によると、2006年に起こったイスラエルとヒズボラによる戦闘と、ハマスとの戦いにおけるイスラエルの能力は、イスラエル軍の歴史において、「劇的に異なる二つの事件」となった。ガザ地区にいるイスラエル軍特殊部隊司令官は、上空の戦闘機や無人機を操縦するドローンオペレーターとリアルタイムで通信できると専門家は指摘。これにより、イスラエル軍は戦場における航空・地上部隊の融合がはるかに向上し、理論上は巻き添え被害を減らしながら局部攻撃の成功率を高めることが可能になる。
改革の一部は、意図しない結果をもたらしたかもしれない。
一部の軍事専門家は21年時点で次のように警告していた。イスラエルは、ハマスのような非国家組織には、エジプト、シリア、ヨルダンなど過去の戦争で対峙した近隣諸国が持つ伝統的な地上攻撃やミサイル砲撃のような能力はないだろうと結論付け、自らを脆弱な状態に置いている可能性がある。
ハマスが10月7日に行ったテロ攻撃は、ある意味、この概念を否定するものだった。よく計画されたこの作戦は1200人以上のイスラエル人と外国人を殺害し、240人以上を人質に取った。ユダヤ人国家のイスラエルにとって、過去数十年で最も犠牲者の多い一日となった。
イスラエルの「国際対テロ研究所」のアビ・イェーガー研究員は、米海軍大学校が21年に発表した研究の中で、戦術の進化に伴い、「イスラエル軍は、非国家敵対勢力が規模を拡大し、かつては国家だけのものだったロケットやミサイルの能力を獲得するにつれて、進化する複雑な脅威に対抗するための適切な準備ができていない可能性がある」と指摘していた。
イェーガー氏は、イスラエル軍特殊部隊で偵察将校とチーム指揮官を務めた。
イスラエル軍改革は、15年の「ギデオン」複数年計画に遡る。同計画では、伝統的な地上戦闘部隊の一部を縮小し、戦闘集団の編成をより機動的で多目的な部隊に再構築することで、軍隊の構造を改革する構想を持っていた。この再編成は19年の「モメンタム」計画でも続けられた。同計画は、イスラエルがさまざまな領域で多数の敵に直面するのは避けられないという認識から生まれたものだ。伝統的な軍隊のように行動する敵もいれば、悪質なテロ組織のように活動する敵もいる。
「われわれは異なる敵や能力に対し、同時に2正面、3正面の活動地域・領域で戦闘に直面する可能性がある。われわれはそれに対処しなければならない」。米国の「ディフェンス・ニュース」によると、イスラエル軍報道官のジョナサン・コンリクス中佐は当時、こう発言していた。