ポーランド大統領、ウクライナの早期NATO加盟呼び掛け

(2024年7月15日)

2024年1月10日、ポーランドのワルシャワで、権力乱用の罪で有罪判決を受けた政治家2人が逮捕され、大統領官邸に数時間避難した後、報道陣に声明を発表するポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領。ポーランド大統領府によると、アブドルジェイ・ドゥダはコンゴ大統領と電話で会談し、妨害行為の罪で終身刑を言い渡されたポーランド人旅行者の釈放を求めた。(AP Photo/Czarek Sokolowski, File)

By Ben Wolfgang and Guy Taylor – The Washington Times – Tuesday, July 9, 2024

 ポーランドのドゥダ大統領は9日、ウクライナにロシアへの領土割譲を要求するような停戦合意は拒否することを明らかにした。一方で、中国、北大西洋条約機構(NATO)同盟国のハンガリー、米国の有力政治家の一部が、交渉による紛争の早期集結を呼び掛けている。

 ウクライナと国境を接する国々の中では最も国力のあるNATO加盟国、ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領は、NATO首脳会議がワシントンで開催される中、ワシントン・タイムズの独占インタビューに応じ、この問題に関して断固とした態度を示した。

 ロシアは2022年2月の侵攻から2年以上をへて、ウクライナの東部と南部、同国領の推定20%を支配し、一部を併合している。

 ドゥダ氏は、ウクライナは大西洋をまたぐ同盟、NATOに「できるだけ早く加盟」すべきだと述べた。

 ロシアのプーチン大統領の脅威は、冷戦絶頂期のソ連と「少なくとも同じくらい危険だ」と警告。「プーチンのロシアは、当時のソビエト・ロシアよりも残忍で、より確信に満ちているのではないかと思っている」と語った。

 ドゥダ氏は興奮気味に、ポーランドは紛争地に近いため、ロシアがクリミアやドネツク地方の一部、あるいは主権を持つウクライナの領土を恒久的に領有することを認められた場合の影響について、欧州のどの国よりもよく知っていると語った。

 「ウクライナの土地の一部をロシアに譲りたいという人がいて、その人がウクライナ人でないなら、ロシアに譲ることになるだろう。他の人の土地を手放すことは容易だからだ。私はこの戦争を一刻も早く終わらせたい。しかし、終わらせられない。ロシアの勝利で終わらせてはならない。そうなれば、ロシアが再び攻めてきて、すぐに戦争が再発する」

 「一言で言えば、ロシア帝国主義は非難されるべきだ。ロシア帝国主義はウクライナで懲らしめられなければならない。世界が平和と平穏を望むなら、この戦争を終わらせる唯一の方法はこれしかない。そうでなければ、またすぐに戦争が起こるだろう」

NATOは過去最強か

 ワシントンのポーランド大使館で、ワシントン・タイムズのインタビューに応じたドゥダ氏は、ウクライナのNATO加盟を強く主張し、同盟への完全かつ正式な招待を推進するために、他の同盟国よりもさらに踏み込む用意があると述べた。バイデン大統領ら他のNATO首脳は、最終的なウクライナ加盟への「橋渡し」を提案しているが、具体的なタイムテーブルの設定には消極的だ。

 ドゥダ大統領は、ロシアとの紛争が終結するまでは「ウクライナはNATO加盟国になれない」ことを認めた。

 52歳のドゥダ氏はまた、自身の政党「法と正義」の保守的な政治を擁護した。法と正義政権は、ブリュッセルの欧州連合(EU)首脳と対立してきた。2015年に政権に就いて以来、ポーランドでの保守的な世代交代の顔と広く見なされてきた。1989年にソ連共産主義が崩壊し、ソ連のポーランド支配が終焉して以来、民主的に選出された6人目の大統領だ。

 ポーランドは、ロシアのウクライナ侵攻に対抗する西側の決意と力をリードしてきたが、政界は分断し、EUとの関係が緊迫したこともある。左派の知識人らは、社会的に保守的な法と正義は、外国人嫌いで、女性差別、同性愛者差別、権威主義的だと言う。また、同党は2019年、司法改革を強行したが、これはEUの基準や民主主義の慣行に反し非民主的だと主張している。

 ドゥダ氏はワシントン・タイムズに対し、法と正義の政治プログラムは「伝統的価値観と呼ぶべきものに、かなりの程度基づいている」と述べた。

 「私は、これは基本的には共和党の政策に似ていると感じている。多分、米国の聴衆には理解しやすい」

 「(ポーランドの保守派は)EUがその基盤としている価値観を堅持していると思う。…このような価値観は、EUが自由な国家、平等な国家の連合体として最強の時代に達成した成功の基盤だったと思っている」

 「EUが力関係で結びついていれば、弱体化する」

 ドゥダ氏は、NATOに対する米国の関与が弱まっているという見方に反論した。専門家らは、共和党のトランプ氏がホワイトハウスに戻れば、そうした傾向が急速に加速するだろうと懸念している。

 ドゥダ氏は、創設から75周年を迎えるNATOにとって、米国は依然として欠くことのできない存在だと述べた。

 「私にとって、この記念すべきNATO首脳会議がワシントンで開催されることは非常に重要なことだ。この重要な機関がどういうものかを示すことができるからだ。最も強い国がこの記念すべきサミットを主催している。…NATOでは誰もそれに抗議しなかった」

 ドゥダ氏は、NATO加盟国の防衛費に関するトランプ氏の強硬なレトリックが同盟を強化したと主張した。

 ポーランドはウクライナとロシアの戦争に対応するため、軍備を劇的に強化した。国内総生産(GDP)の4%以上を国防費に費やしており、国民一人当たりの割合は、米国を含むどのNATO諸国よりも高い。

 ドゥダ氏は、大統領就任時、GDPの2%を国防費に充てるというNATOの目標を達成した加盟国は5カ国で、ポーランドもそのうちの一国だったと指摘、「現在、NATOの23カ国がこの目標を達成している」と述べた。

 また、バイデン大統領がポーランドに米軍を派遣するという約束を守ってくれたことに感謝の意を表した。

 「私たちはこのことにとても感謝している。…米国の人々との協力関係、友好関係を信頼している。バラク・オバマ大統領とも、1期目のドナルド・トランプ大統領とも、そしてジョー・バイデン大統領とも良好な協力関係を築いてきた」

「残忍な」ロシア

 ドゥダ氏は、ロシアの重大な脅威と、現在3年目に突入している紛争を終結させるための広範な合意の一環として、ウクライナの領土の一部をモスクワに割譲する見通しについて質問されると、熱のこもった様子で答えた。

 彼は、プーチン氏の「生まれ変わったロシア帝国主義」をソ連時代の侵略と比較した。ソ連の侵略の中でポーランドは、冷戦の世界的分裂の中でソ連側へと引き込まれた。

 「ソビエト・ロシアは牙を剥いていたが、西側諸国を公然と攻撃する勇気はなかった。しかし今、プーチンのロシアが、独立した主権国家であるウクライナに、非常に残忍で、攻撃的で、全面的な攻撃を仕掛けている」

 「冷戦時代、ロシアはポーランドや東ドイツを含む勢力圏に核兵器を配備していた」

 「同じように今日、ロシアはベラルーシへの核兵器配備を口にし、カリーニングラード州の軍事力を増強している」。カリーニングラードは、リトアニアとポーランドの間にあるロシアの飛び地で、バルト海の対岸にはスウェーデンがある。

 ポーランドは、ウクライナとの安全保障協力をさらに深める必要がある。

 ポーランドのドナルド・トゥスク首相は8日、ワルシャワにウクライナのゼレンスキー大統領を迎え、NATO首脳会議に先立ち、ウクライナに対する西側の軍事支援の拡大について話し合った。ゼレンスキー氏は、ウクライナに向けて発射されたロシアのミサイルを、パートナー諸国が防空システムを使って撃ち落とすようになる可能性があると考えていると述べた。

 地域内の他の利害関係国は、できるだけ早く戦闘を終結させるという別の計画を推進しているとみられ、ウクライナの領土譲歩の見通しが勢いを増しているようだ。

 ハンガリーのオルバン首相は最近、ウクライナ、ロシア、中国を訪れ、公に戦争終結を呼びかけた。米国では、トランプ氏が大統領に選出されれば、紛争を直ちに終結させると宣言しており、一部の国家安全保障関係者は、ウクライナの領土の譲渡が停戦協定の一部となる可能性を指摘している。

 ウクライナの最終的なNATO加盟についても、和平交渉の中で話し合われる可能性がある。だが、停戦を受け入れるようプーチン大統領を説得するには、ウクライナをNATOに加盟させないという約束が、和平交渉への重要な条件になると考えられている。

 だがドゥダ氏はそのような可能性を否定し、ウクライナには最終的な加盟への「橋渡し」は必要ないと述べた。今必要なのは正式な招待であり、ポーランドは戦争の最前線にあり、この危機的状況を特によく理解している。

 「だからこそ、私はウクライナをできるだけ早くNATOに正式加盟させるべきだと言っている。私は、ウクライナはNATO加盟に正式に招待されるべきだと考えている」

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