連邦政府のITシステムは時代遅れ マスク氏が非難

(2024年12月27日)

2024年12月7日土曜日、パリのフランスの象徴ノートルダム大聖堂の正式リニューアルオープンに出席したイーロン・マスク。(Christophe Petit-Tesson, Pool via AP)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Wednesday, December 25, 2024

 内国歳入庁(IRS、国税庁に相当)は、申告の繁忙期になると1日に37万5000通もの郵便物を受け取るため、カンザスシティーにあるIRSの施設にある封書開封機が古くなり、使えなくなったときは大変だった。

 手作業での開封と仕分けに時間がかかり、封筒の中には政府宛ての小切手も含まれている。そのため、小切手はすぐに換金されず、政府は本来受け取るべき利息を受け取ることができなくなる。つまり、政府が受け取れる利息を逃すことになったのだ。

 それらは積み重なり、大変な額に上る。

 同局の監察官によれば、政府は、この遅れのために2019~2021年半ばまでに4億ドル以上の損失を被ったという。

 時代遅れの航空管制機から、75年前のコンピュータープログラミング言語をいまだに実行しているコンピューターまで、連邦政府は時代遅れのテクノロジーに悩まされている。

 この問題が今、世界一の富豪の注目を集めている。イーロン・マスク氏は、ドナルド・トランプ次期大統領が予算削減のために設置する「政府効率化省(DOGE)」の共同リーダーに指名した人物だ。

 マスク氏は今月初め、自身がオーナーのソーシャルメディア「X」に「連邦政府のコンピューターとソフトウエアはひどい状態で、支払いが不正、浪費、乱用でないことを確認できないことが多い。だから政府は基本的な監査に合格できない。国民の税金がどのように使われているかも分からない。正気の沙汰ではない」と書き込んだ。

 マスク氏は連邦政府の新しい 「ボランティアITコンサルタント」として名乗りを上げる用意があると語った。

 「これは骨の折れる仕事であり、楽しいものではないが、コンピューターが動かなければ、政府を効率的にし、赤字を解決することはできない」

 2018年の時点で、社会保障庁(SSA)のコンピューターシステムには、1950年代に作られたプログラミング言語であるCOBOLで書かれたコードがまだ6000万行あった。つまり、古すぎて、SSAには適していない。

 SSAは、コードの廃棄はある程度進んでいるというが、どの程度進んでいるかについては明言していない。

 SSAはワシントン・タイムズへの声明で「国立公文書館のガイドラインにより、SSAはアプリケーションを使用しなくなってからソースコードを7年間保存している。そのため、実際に稼働しているのは、6000万行以上のCOBOLの一部ほんのだけだ」と明らかにした。

 しかし、SSAは、さらにアップグレードするには予算が必要だと述べている。

 大規模な改善には、初期段階に多額の予算を投じる必要があるというのが、政府機関の常套句だ。

 IRSも同様だ。関係者によると、10年にわたる予算削減の結果、資金不足に陥り、納税者からの電話にも応えられず、提供するサービスも時代から大きく遅れていると述べた。

 バイデン大統領と議会民主党は、2022年の予算・気候法(インフレ抑制法)で、数百億ドルをIRSに投入した。IRS職員によれば、これによって、納税者の生活を容易にするために、電話を修理し、より多くの人を監査できるようになり、モバイル機器のアプリケーションを改善することができたという。

 手紙の仕分け機に関しては、IRSは追加資金を得たので、3月までに9台の新しい機械を設置することができたと述べた。

 「20年前の旧式の仕分け機は、処理速度が遅く、故障や停止が頻発し、メンテナンスにコストがかかっていた。選別機を近代化し、アップグレードしたことで、納税者により速く、より信頼性の高いサービスを提供できるようになった」

 マスク氏は、IRSが使用しているソフトウエアについても懸念を示している。あるユーザーがマイクロソフトのオペレーティングシステム(OS)ウィンドウズ98が稼働しているコンピューターの写真を投稿した。それに対してマスク氏は「その程度ならまだいいのだが、残念なことに、実際はそれよりもずっとひどい」と返答した。

 議会で特に無駄への監視が厳しい人物の一人で、マスク氏と改革に取り組む予定の上院DOGE議員連盟の創設者であるジョニ・アーンスト上院議員(共和党、アイオワ州)は、技術的な問題はリソースの問題ではなく意志の問題だと述べた。

 アーンスト氏は、「ワシントンの技術的な問題は、よく優先順位を間違えることだ。連邦政府機関は、古くさく、よく故障するITシステムに巨額の予算を投じるわりに、何百万人もの官僚がテレワークをするために必要なあらゆる機器を調達することに何の問題もなかった」と指摘した。

 連邦航空局(FAA)では、航空管制官が飛行機を誘導する際に、いまだに紙切れを使用している。段階的廃止の真っ最中だが、時間がかかっており、今後何年かは紙が使われる。

 2023年のこの問題に関する公聴会で、テッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州)は、その結果、すべてのフライトにわずかずつだが非効率が組み込まれていると述べた。

 「すべての民間航空便についていうと、飛行時間が必要以上に長くなっている。システムが飛行機を追跡できないため、飛行機の間隔を広くとらなければならないからだ。GPSはそれほど広く使われていない。その結果、離陸するすべてのフライトで、すべての乗客の時間が失われていることになる。それによって、他の生産的なことに使えるはずの膨大なマンアワーが無駄になっている。何百万ガロンもの燃料を費やし、運賃を押し上げている」

 しかし、更新を急ぐことが常に解決策というわけでもない。

 内務省の一部門である土地管理局は、石油・ガス探査への連邦所有地のリースを管理しているが、2013年にリース追跡システムの近代化を図った。それから8年後、同局はこの試みの失敗を宣言した。

 会計検査院(GAO)によると、このシステムは当初予算の3倍になり、予定より4年遅れ、すべての作業を完了させるために年間50万時間の追加労働が必要になったという。GAOは9月の監査で、事態があまりに悪化したため、代わりに紙の記録に頼るようになったと述べている。

 退役軍人省(VA)では、健康記録システムをアップグレードしようとしたがうまくいかなかった。

 新システムのせいで、退役軍人の予約スケジュールが狂い、同省の職員によると、この不手際が原因で数人が死亡した。

 GAOが9月に発表したところによると、このシステムのコストは、当初の160億ドルという見積もりから、おそらく500億ドル近くにまで膨らんでいる。

 アーンスト氏は、これは恥ずべきことだと述べた。

 「もしVAが、管理職が泡風呂からテレビ会議をするためのノートパソコンを提供できるのなら、退役軍人に不利益をもたらす電子記録システムの失敗はどう説明するつもりなのか」

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