米大リーグでドラフト指名された正統派ユダヤ教徒は安息日もプレーするのか
By Mark A. Kellner – The Washington Times – Monday, July 19, 2021
1世紀半近くに及ぶ米大リーグ(MLB)の中で、仮にあったとしてもほとんどない決断だ。
2人の若い投手がMLBにドラフトされ、キャリアをスタートさせようとしているが、週の7日目もプレーするのか選択を迫られている。安息日とスライダーの投球、どちらを取るのだろうか。
先週のMLBドラフトで、正統派ユダヤ教徒の選手がナショナル・リーグのチームに指名された。エリー・クリーグマン投手(18)はワシントン・ナショナルズに、ジェイコブ・スタインメッツ投手(17)はアリゾナ・ダイヤモンドバックスにそれぞれ指名された。
両投手ともまだチームと正式契約はしていない。
クリーグマン投手は、ヘブライ語で安息日を意味する「シャバット」には出場しないと表明している。スタインメッツ投手は安息日に車には乗らないが、投球はすると複数のメディアに語った。
イスラエル五輪代表チームに同行した遠征試合先からワシントン・タイムズの取材に応じたクリーグマン投手は、ナショナルズと契約する場合は具体的な方策を立てる必要があると語った。
野球選手にとって特に問題となるのは、ユダヤ教の安息日のタイミングだ。正統派ユダヤ教徒の選手は、金曜日のナイトゲーム、土曜日のデーゲームに加え、場合によっては土曜日のナイトゲーム序盤も出場できない可能性がある。
安息日に何をすべきか、何を慎むべきかは、微妙な問題だ。キリスト教徒が旧約聖書と呼ぶヘブライ語聖書にある613の戒律に加え、タルムード(ユダヤ教聖典)にもルールや規則がある。タルムードにはラビ(ユダヤ教指導者)の教えや聖書の教義に関する注釈が書かれている。
ヘブライ語聖書第2巻から、ラビは数世紀にわたり、出エジプト記31章14~15節で禁じられた「仕事」に分類される39カテゴリーの活動を定義してきた。ヘブライ語で「メラチョット」と呼ばれるこれらのカテゴリーには、農業や建設作業が含まれる。スポーツに関する定義はないものの、野球をしながら起きることがその範疇(はんちゅう)に該当すると主張する学者もいる。
「野球については、仕事に該当することがいくらでも思い付くと思う。グラウンドを歩いている時に芝生を掘ってしまうこともそうだ」。コネティカット州スタムフォードのベス・エル寺院の保守派ラビ、ジョシュア・ハマーマン師はこう主張した。「それは仕事の一形態だ。芝生を掘るだけでなく、ボールを一定距離投げることも仕事に当たるかもしれない。ラビたちは、ボールを打つことも仕事なのか、このような問題について堂々巡りの議論をしてきた」
野球の歴史家であるロン・カプラン氏は、ユダヤ通信社のニュース解説で、大リーグ選手2万2000人のうちユダヤ人は1%(約230人)にすぎないと書いている。ハンク・グリーンバーグ氏やサンディー・コーファックス氏らユダヤ人選手が教えを順守する程度は選手によって異なっていた。ハマーマン師によると、コーファックス氏はヨム・キプル(贖罪〈しょくざい〉の日)に投げなかったことで有名だが、安息日は投げることにしていたという。
「彼は(安息日に投げることが)好きではなかったと思う。彼はそれを分かっていた」と、ハマーマン師はコーファックス氏についてこう語った。同氏は1972年に野球殿堂入りしている。「彼はユダヤ人のアイデンティティーを非常に意識していた。それでもプレーした。それは彼にとってやむを得ない妥協だった。ロシュ・ハシャナー(ユダヤ教の新年)と贖罪の日のような祝日だけは一線を引いていたが」