新型コロナ大流行で社会保障が財源不足に

(2021年9月3日)

In this Feb. 11, 2005, photo, trays of printed social security checks wait to be mailed from the U.S. Treasury’s Financial Management services facility in Philadelphia. (AP Photo/Bradley C. Bower)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Tuesday, August 31, 2021

 社会保障制度の管財人は、31日に発表した報告で、社会保障制度の収入が今年から減少し始め、今後10年あまりで信託基金はいずれ底を突き、致命的な限界を迎えると厳しい見方を示した。

 また、社会保障制度の給付プログラムである高齢者向けの老齢・遺族保険(OASI)と就労不能者向けの身体障害保険(DI)の両方が、管財人が行った短期的な財政的妥当性のテストに不合格となった。

 このような収入減は、以前から予測されていたことだが、連邦政府の財政状態をチェックする上で、重大な警告となった。

 管財人によると、以前から厳しい状況は続いていたが、新型コロナウイルスの大流行とそれに伴う景気の悪化が社会保障制度に大きな打撃を与え、信託財産が枯渇し、約束された給付金の全額を支払うことができなくなる時期が1年早まったという。

 新たな期限は2034年となり、支給額は約束の78%にまで減少すると管財人は述べている。

 「パンデミックと急激な景気後退が、OASIとDIの信託基金の数理的状態に大きな影響を与えたことは明らかであり、パンデミックの今後の推移は依然、不透明だ」と管財人は述べている。

 メディケア(高齢者向け医療保険制度)もパンデミックの影響を受け、収入は激減、支出は急増し、特にパンデミックの影響を受けた高齢者の検査や治療のための支払いが発生したと管財人は述べている。

 しかし、管財人は、65歳以上の連邦医療制度であるメディケアに関する別の報告の中で、メディケアの受給者もパンデミックの中で手続きを先延ばしにしたため、新たな費用は「相殺された」と述べている。

 管財人は、死亡率の上昇がメディケアに与える影響については計算していないが、それ以外の点では、「実質的な財源不足」に直面している同プログラムの見通しがパンデミックによって変わることはないと述べている。

 2021年の報告は、パンデミックの影響を完全に考慮した初めての報告となった。

 社会保障制度については、新型コロナによる死亡者が老齢受給者の増加予測に影響を与えたとしている。また、労働人口が減少し、社会保障制度の収入が減少しているとしている。また、将来の労働者数は、出生数の減少により、これまでの報告書の予測より減少している。

 昨年の報告はパンデミックの初期に出されたもので、新型コロナが引き起こした経済的混乱の多くは含まれていない。

 社会保障制度は、給料にかかる給与税を財源とする。社会保障制度は福祉制度ではなく、一種の年金のようなもので、所得の異なる国民が保険料を支払い、それに見合った給付を受けることになっている。

 資金繰りは何年も前から悪化しており、2010年以降、給与税ではこの制度の給付金を賄うことができなくなっている。

 しかし、過去25年間、収入が給付額を上回り、余剰の収入が信託基金に注入され、政府内の貸付金から利息を得ていたため、プログラムの運用が可能になっていた。

 管財人は、今年は、給与税と利子を合わせた収入が約束された給付金をまかなうのに十分でなくなる最初の年になるだろう述べている。この不均衡は今世紀末まで続き、2034年には二つの信託基金が枯渇するという。

 法律では、社会保障制度はその後、収入に合わせて給付を削減しなければならず、プログラムが約束していた1ドルに対し78セントを支払うことになる。管財人が調査した75年の数理計算期間が終了する2095年には、約束した1ドルに対し74セントが支払われることになる。

 かつて社会保障制度の公的管財人を務めていたチャック・ブラフス氏は、「もし制度を修正してすぐに対応しようと思ったら、来年は給付金を21%削減しなければならないだろう」と語る。

 不均衡の背景には、退職者を支える労働者の割合がある。

 1974年から2008年までは、受給者1人に対する労働者の割合は3.2~3.4人だった。大不況で減少に転じ、現在は2.7人にまで減少している。ベビーブーマーがほとんど引退する2035年には、受給者1人当たりの労働者数は2.3人になる。

 社会保障制度の見直しは、長年にわたって議会で行われてきたが、民主党議員が要求する給付金の増額は、財政的に難しく見送られた。

 下院歳入委員会社会保障小委員会のジョン・B・ラーソン委員長は、「議会が給付金を改善するための措置を講じて50年がたった。新型コロナのパンデミックは、景気が悪化しても支払いが滞ることのないこの制度が、わが国にとっていかに重要であるかを浮き彫りにした。私たちは今、給付を拡大し、今日の高齢者と次の世代のためにこのプログラムを強化するよう努力しなければならない」と述べている。

 しかし、予算監視団体は、給付金拡大の前に、既存の不均衡を修正するべきだと述べている。

 ピーター・G・ピーターソン財団のCEO、マイケル・A・ピーターソン氏は、「社会保障やメディケアのような重要なプログラムが、このように不安定で不確かな財政状態のままであることは間違っている」と述べています。

 ピーターソン氏は、解決策は分かっており、「これらのプログラムをより持続可能なものにすることは、議員たちの手で可能だ」と述べた。

 ブラフス氏は、この数字があまりにも悪いため、「イデオロギーにかかわらず、双方がが譲歩しなければならない。保守派は増税を受け入れなければならず、リベラル派は給付金削減を我慢しなければならない」と述べている。

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