実験室流出説を主導する国防情報局
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, September 1, 2021
米国の諜報分野を構成している17の機関の間では、COVID-19の世界的流行をもたらしたウイルスの発生経路について意見が分かれている。その中で国防情報局(DIA)は、ウイルスが中国の研究所内で発生した可能性が高い、と主張しているひとつだ。
バイデン大統領が3か月前に命じたウイルス発生源に関する「情報アセスメント」は機密扱いではなかったが、先週公開された。公的なアセスメントとは、米国の諜報専門家たちに言わせれば、「両手使い」の分析と呼ぶほど、様々な見解の寄せ集めなのだ。
かたや情報機関のいくつかは、最初にウィルス発生した時期に、危険なコウモリ・コロナウイルスの改変に従事していた武漢ウイルス研究所など、中国の研究所から来た可能性があると指摘した。
その一方で、国家情報長官室(ODNI)の下で働く分析官らは、動物から流出したウイルスが人間に付着して汎感染を引き起こした可能性が高いと指摘している。これが数百万人の命と数十億ドルの経済的損失をもたらしたわけだ。
公開されている「主な調査結果」を1ページ半に要約した文書によれば、特定されない4つの米国諜報機関と、ODNI主導の国家情報会議は、ウイルスの正式名称である「SARS-CoV-2」と99%以上も類似したウイルスを保有する動物から始まったという見方には、「信ぴょう性が低い」と述べている。
3つの諜報機関はお手上げ状態で、実験室からの漏出説にも、動物からの流出説のどちらにも同意できず、「一部の分析官は自然原因説を採り、他の分析官は実験室説、その他はどちらの説も同じ程度の可能性があると見ている」などと表現するばかりだ。
これら情報機関は、しっかりした結論を引き出せない理由として、ウイルス起源に関する国際調査に中国が協力を拒否してきたことを挙げ、非難している。
情報筋によると、国防情報局は実験室からの流失説を確信している機関のひとつだ。ある筋によれば、DIAがそう確信している根拠は、2009年に「軍医学情報センター」から改名され「国立医学情報センター」と呼ばれてDIAの指揮下にあった知名度の低い研究機関と、ある業務を実施したことにある。
同センターの使命は、外国の医療能力、感染症をふくめ国の軍事上に重要な健康リスクなど、世界中の健康上の脅威の発生源を収集・分析することだ。また米軍を医学上および健康上の脅威から保護する責任も負っている。
同センターは、米国の生物兵器防衛を研究しているメリーランド州フォートデトリックにあり、他の諜報機関よりもウイルスの脅威に対応する経験が豊富だと見られている。米当局者の指摘では、中央情報局(CIA)のスタッフには、保健上の危険に関する専門知識が不足しているため、非政府系専門家の分析に大きく依存しているが、彼らの多くは実験室流失説に懐疑的なのだという。
上記の「アセスメント」によれば、ウイルス起源に関して諸機関の食い違いが大きい理由は、「それら諸機関が諜報報告書と科学出版物とをどう評価するかの違いや、そもそも諜報と科学の業務上の違いにある」と述べている。
国家安全保障局で働いたジョン・シンドラーは、公開された「アセスメント」について手厳しい。世界が直面している最重要課題のひとつに関し、情報機関が国民に説明できていないのは失敗だ、と鋭く批判した。
「端的に言って、COVID-19がどこから来たのか、機密でない調査結果でも色々なことを伝えているのだから、それらも含めて国民は真っ当な諜報アセスメントを得て当然だ」、シンドラー氏は自身のブログ「トップシークレットの闇」で述べている。
そして中国で始まった汎感染は政治・経済・社会的に莫大な損失をもたらしたのだから、公共的なODNI評価よりもっと明瞭な答えが必要だ、と主張した。
「米国民は1ページそこらの官僚の作文で、本当のところ武漢で何が起きたか分かるものか、と言っているだけの文書以上のものを要求するべきだ。」