コロナ関連給付が中国・ロシアに流出?下院共和党が調査を要求
By Stephen Dinan – The Washington Times – Monday, December 6, 2021
共和党の上級調査官らは月曜日、バイデン政権に対して、COVID-19大感染との関連で失業した米国市民に給付されるはずの血税が、如何なる経路で中国またはロシアのシンジケートに盗まれたかについて回答を要求した。
下院監視改革委員会で共和党トップのジェームズ・コーマー議員(ケンタッキー州)と、同委員会メンバーのスコット・フランクリン議員(フロリダ州)が主張する調査とは、もともとワシントンタイムズが報道した内容を後追いしたものだ。タイムズの報道では、大感染によって米国政府が給付した失業関連の資金のうち約1400億ドルが、中国、ロシアまたはそれ以外の国の支援を受けた詐欺シンジケートに流れたというものだ。
司法省の当局者は先月、議会への報告で、COVID-19関連の詐欺で被害総額約10億ドル相当の各種容疑について訴訟を起こしたことを明らかにした。しかしコーマー・フランクリン両議院が、リサ・モナコ司法省副長官に送った書簡では、さらに数千億ドル相当の被害が計上されていないと指摘した。
「数百億ドルもの血税が、外国の敵対グループに盗まれたことは容認できない」、コーマー議員は調査についての声明で述べた。「司法省は、これら犯罪行為と如何に闘い、起訴しようとしているのか、回答するべきだ。」
フランクリン議員は莫大な額の失業給付金が盗まれたことは、「国家安全保障への侵害だ」と語った。監視委員会に属する多数の共和党議員も両議員に同調して回答を要求している。
タイムズ紙が先月報道したのは、レクシスネクシス・リスク・ソリューションズ社の政府部門の執行担当者、ヘイウッド・ウッディ・タルコーブ氏の算出によるもので、それによれば、大感染関連の失業手当給付の総額7,000億ドルの約40%が、詐欺グループに流れたと見られている。その大半(1,750億ドル)は外国に流れ、1,400億ドルは外国政府に支援された組織に流れたとタルコーブ氏は推定している。
ロシア、中国、イランのハッキング集団による活動が目立っており、彼らは米国の政治に異論を持ち込もうとしている。それを考えれば米国の納税者は、こうした反米的な策動の一部に資金を提供した可能性がある。
合衆国議会は大感染の当初、各州が支払った給付額に加えて、週600ドルを上乗せするという、前例のない失業手当増額を承認した。また受給の適格チェックも簡略化されて、受給申請者は雇用状況について自己申告するだけで済んだ。
大感染が始まって以来、3000万人以上の米国市民が最初の失業手当を申請した。その結果、例えば2020年8月と2021年9月初旬の2回、カリフォルニア州では一週間に40万件を超える新規申請があった。専門家の見るところ、それほど集中的に申請が出されれば、大規模詐欺を阻止するのは難しくなるという。
それについてタルコーブ氏は、申請を受けても給付金支払いを回避できなかったわけはない、と指摘する。同氏によれば単純な身分証明の確認作業をしていれば、多くの詐欺は抑制できたはずだという。だが州毎の失業関連プログラムは不備のままだった。
コーマー議員によれば、大感染関連の詐欺調査を彼の属する監視委員会に打診しているが、同委員会を牛耳る民主党側は、「納税者の血税に対する重大な管理ミスなのに、たった一度の公聴会も拒否している」という。
ワシントンタイムズは、同委員会のキャロリン・B・マロニー委員長(民主党、ニューヨーク州)にコメントを求めて連絡を取った。一方、司法省は当初の報道に関して、ワシントンタイムズが求めた質問への回答を拒否したままだ。
司法省は11月19日、詐欺にかかった可能性のある10億ドルと、支払われてしまった数億ドルの件の詳細と、それらの起訴の見通しについて、同委員会に概略説明をした。しかしこれらの金額は、詐欺の推定総額をはるかに下回っている。
共和党議員らの報告によれば、司法省関係者は「国際的組織および他国の政府機関に支援を受けた組織が関与した事件がどれほどあるのか、情報公開を拒否した」という。
失業給付金詐欺の中には初歩的なものもある。例えば囚人は給付資格がないが、それでも申請できる。刑務所の外の仲間と結託して、留置されている囚人名義で申請書を提出した件もあった。
もっと突飛なものでは、詐欺グループがインターネット上から名簿を選び出し、闇ネット上で名前一人分につき数ドル単位で、個人識別情報を購入していた。
偽装された身分証明のうち、十件に一件がうまくいけば、それに必要だった投資は20ドルに過ぎない。タルコーブ氏によれば、大感染関連の失業手当給付の平均額は25,000ドルに達するという。
詐欺師たち、特に大規模シンジケートの場合は通常、米国税庁からの払い戻しなど、他の行政サービスを標的にした身分証明関連の詐欺活動をすでに実行している。合衆国議会が数千億ドルを失業関連給付に投入すると決定し、しかもそのシステムがサイバー攻撃に脆弱であると判明した後、詐欺師連中は失業関連詐欺に鞍替えしたようだ、とタルコーブ氏は指摘した。
ジョージア州では連邦検察が、アトランタ近郊に住むナイジェリア人のバミデレ・ムライナから、同人が会計税務支援会社のシステムにハッキングし顧客の識別情報を盗んだ、との罪状認否を勝ち取った。ムライナはこれら身分証明情報を利用して、国税庁からの払い戻し請求を偽装・提出し、2018年から2020年までに260万ドル以上をかき集めた。
彼はその後、失業給付詐欺に注目した。2020年5月のある1週間、ムライナはワシントン州の失業者支援サービスに50件の偽装申請を提出し、数週間後に逮捕されるまで28万ドル以上の給付金をせしめたのだ。
ムライナは懲役5年10か月と56万ドル以上の賠償金支払いを命じられた。検察はさらに、彼の資金洗浄役だったガブリエル・カレンボからも有罪の罪状認否を勝ち取った。カレンボは4年以上の懲役と30万ドル近い支払いを命じられた。
タルコーブ氏は、詐欺師たちが「テレグラム」などのメッセージングのシステムで、申請偽造のやり方などを共有していると指摘した。そして膨大な数の給付申請が数州の失業支援給付システムを圧迫したため、正当な申請者たちが失業給付を受け取りにくくなったという。
失業給付の問題は、大感染に便乗した不正請求に圧倒された公的プログラムの一つにすぎない。緊急中小企業向けローンや、従業員を解雇して失業に追い込むよりも、従業員の給与維持のために企業に支払うよう設計された給与保護プログラムも、詐欺師たちの標的にされた。
法律事務所のアーノルド&ポーター社が管理している不正追跡データベースの中には、司法省が起訴した9件が記録されていて、それら不正行為疑惑は各々少なく見積もっても2、000万ドルの被害があり、その他に16件の不正疑惑起訴で被害額が1,000万ドルから2,000万ドルとされた記録が残っている。