米露電話会談、ウクライナめぐる緊張緩和につながらず

(2022年1月5日)

2021年12月30日木曜日、ジョー・バイデン大統領がデラウェア州ウィルミントンの私邸から、ロシアのプーチン大統領と電話で話している。ホワイトハウス提供

By Joseph Clark and Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, December 30, 2021

 バイデン大統領とロシアのプーチン大統領は12月30日に1時間近く会談した。ロシアは、ウクライナ国境沿いに軍を集結させ、紛争を避けるには西側の大きな譲歩が必要と主張、緊張緩和にはつながらなかった。

 バイデン氏は、経済制裁を強化し、ロシアの近隣諸国で北大西洋条約機構(NATO)軍を増強すると脅した。プーチン氏は、さらなる制裁は「重大な誤り」だと警告した。

 電話会談は、米露当局者が1月、ウクライナ、NATO、欧州安全保障などに関する一連の重要な直接交渉に備える中で行われた。バイデン氏にとって、危機の拡大と東欧での紛争が現実味を帯びていることは、重大な外交課題であり、大統領としての今後の動向にも影響が及びうる。

 しかし、バイデン氏は、外交によってこれ以上の流血を防ぐことができると確信しているようだ。

 政府高官によれば、10万人近いロシア軍がウクライナとの国境に駐留する中、両首脳は1カ月足らずで2度の会談をしたが、歓談はほとんどなかったという。

 モスクワで真夜中過ぎに終了した50分の電話会談の後、政権高官は記者団に「両大統領の会話の調子は真剣で実質的だった」と語った。

 バイデン氏は、膠着状態の中、外交と緊張緩和への米国の決意を強調したが、抑止策は依然として協議中だ。バイデン氏は、今後の米国の対応は、今後の短期の間にロシアがどのような行動を取るかによって大きく左右されると述べた。

 この高官は「一つは、外交による緊張緩和の道、もう一つは、ロシアがウクライナへのさらなる侵攻を選択した場合の深刻なコストと結果など、抑止策に重点を置いた道だ」と述べた。

 「これらのコストには、経済的コスト、同盟国のNATO軍の態勢の調整と増強、ウクライナの自衛のための追加支援などが含まれる」

 バイデン氏は今月初め、ロシアの侵攻を阻止するためにウクライナに米軍を派遣する考えを否定したが、ロシア政府によると、バイデン氏は30日の電話会談で同様の考えを繰り返した。しかし、米国はウクライナ軍に数億ドルの援助を行い、ロシアの機甲部隊を減速させることができる対戦車ミサイル「ジャベリン」を数発納入するなど、支援を提供している。

 プーチン大統領の外交顧問であるユーリ・ウシャコフ氏は電話会談後、記者団に対し、バイデン氏が「米国はウクライナに攻撃的な兵器を配備するつもりはないことを明確にした」と述べた。

 ロシア政府はまた、トランプ前政権とバイデン政権の両方がロシアを抑止し罰するために繰り返し使ってきた経済制裁に対して警告を発した。

 ウシャコフ氏は、「(プーチン氏は)われわれの祖先なら、重大な過ちとみなすはずだ。過去30年間に多くの間違いがあったが、このような状況でさらに同じような間違いを繰り返すのは避けた方がいい」と述べた。

 ロシアの最近のウクライナに対する一連の挑発行為は、オバマ政権時代にまでさかのぼる。2014年、ロシア軍はウクライナのクリミア半島を武力で占領し、事実上併合した。それ以来、ロシアの支援を受けた分離主義者が、同国の係争地であるドンバス地方でウクライナ軍と戦ってきた。

 しかし、ここ数カ月で10万人近いロシア軍が国境に移動したことで、より血なまぐさい紛争が長期化する可能性が出てきている。ロシア軍は先週、最先端の極超音速ミサイルを試射したが、これは戦争に備えるという警告だとアナリストはみている。

 その戦争を回避するために、ロシアは今月初め、米国とNATO加盟国に要求リストを提出した。その中には、ウクライナとジョージアを決してNATOに入れないという保証が含まれている。ロシアはまた、米国やNATOの軍備を旧ソ連諸国に配備しないことを約束するよう要求したが、バイデン政権はこれを拒否している。

 米政府高官は30日遅く、「合意が不可能な分野」があるかもしれないと認めたが、1月10日のジュネーブでの会談で解決できるかもしれないという希望を持ち続けている。

 バイデン氏が危機打開と引き換えにプーチン氏に何を提供するのかは、まだ不明だ。

 米政府は、会談に先立ち、米国の同盟国やパートナー国との「非常に緊密な協議が継続される」ことを期待していると述べた。

 両首脳の会談は、12月7日の2時間以上に及ぶ緊迫したテレビ会談以来だった。

 ホワイトハウス当局者は、30日の会談を重要視しておらず、ジュネーブ会談の前哨戦と位置付けているようだ。

 ホワイトハウス関係者は、「この電話会談の主な目的は、今後行われる外交交渉のための一種の調子と傾向を設定することにあるようだ。ロシア側にとっても、プーチン大統領が行ってきた一連の年末年始の電話会談の一環だったのだろう」と話した。

 デューク大学サンフォード公共政策大学院のサイモン・マイルズ助教(ロシア研究)は、30日の電話会談は「欧州の安全保障における重要なポイント」となると述べた。

 「かなりの数のロシア軍がウクライナ国境におり、アナリストが攻撃的な軍事行動を懸念するような構成になっている。しかし、一つだけはっきりしているのは、これはロシア政府が作り出した危機ということだ」

 情報機関や軍関係者の間では、ロシアが2022年に多方面から攻め入る準備をしている可能性があると懸念されている。実際、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は今月初め、モスクワが1月末の大規模な軍事侵攻の準備をしている可能性があると発言している。

 一方、ロシア政府関係者は、侵攻の計画はなく、軍隊は軍事演習をしているだけだと主張している。

 ホワイトハウスによると、プーチン氏は、ウクライナ侵攻を宣言しておらず、示唆もしていないという。

 ある当局者は30日、「いずれにせよ、私たちの焦点は、現時点では言葉ではなく、行動と実際に見えているものにある。ウクライナ国境でのロシア軍の動きと増強を注意深く監視し続け、最終的にロシア大統領がどのような決断を下そうとも、それに備えるつもりだ」と述べた。

 マイルズ氏は、プーチン氏の首脳会談での最終目的はまだ不明だが、「ロシア国境の繁栄した民主的なウクライナ」を容認しないことがますます明白になってきていると述べた。

 また、プーチン氏はこの国際的対立を利用しようとしているという。

 「プーチン氏は、軍を動かし、緊張が高まり、米国が反応するというサイクルから恩恵を受けている。緊張を緩和するために首脳会談を行い、注目を浴びられる」

 「2021年6月のジュネーブでの会談、2021年12月のオンライン会談、そして2022年1月の大統領級会談(とその後の下級レベルの会合)、いずれもホワイトハウスは、ロシア政府のてのひらに乗り、プーチン氏に対して威信と高い地位を与えていることを懸念すべきだ」

 ホワイトハウスによると、バイデン氏は、ロシアの軍事力増強に対する「共通の対応策」のため、欧州の同盟国と引き続き調整する。

 さらに、東欧のブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキアが参加する「ブカレスト9」とも協議しているという。

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