難民150万人がウクライナから避難、人道回廊は砲撃で困難に

(2022年3月12日)

2022年3月6日(日)、ウクライナのシェヒニで、ポーランドとの国境に近づき、列を作るウクライナ戦争から逃れた難民たち。国を追われたウクライナ人は150万人に増え、クレムリンの暴言も増え、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナの国家存続が危うい」と警告している。(AP Photo/Daniel Cole)

By Guy Taylor – The Washington Times – Sunday, March 6, 2022

 国連は6日、ウクライナから近隣諸国に流出した難民が150万人を超えたと発表した。ロシアの軍事侵攻が11日目に入り、依然、激しい戦闘が続いている。包囲されたウクライナのいくつかの都市で人道的停戦の試みは失敗した。

 ウクライナ当局によると、南部の港湾都市マリウポリから市民を避難させる試みは、ロシアの砲撃が続いているためうまくいっていない。ロシアの進撃は、首都キエフ周辺を含むウクライナの他の地域でも続いている。

 ロシアとウクライナの代表団は先週行われた協議で、民間人の避難を容易にするため、「安全な」人道回廊に沿って暫定的な戦闘停止を行うことで合意した。

 ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問は6日、ロシア側がこの合意を守っていないと述べた。

 AP通信によると、ゲラシチェンコ氏はソーシャルメディア、テレグラムに、「『安全な回廊』はありえない。病んだロシア人が、いつ、誰に対して、銃撃を始めるか分からないからだ」と書き込んだ。

 AP通信は、マリウポリとボルノバハ近郊での暫定的な停戦は失敗したと報じた。ウクライナ南部、中部、東部の都市や他の都市の市民は、ロシア軍による絶え間ない砲撃と空爆で閉じ込められたままだが、100万人以上が安全な場所に避難している。

 フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、自身の公式ツイッターで「ウクライナからの難民は10日間で150万人を超えた。これほど急速に難民危機が拡大するのは、第2次世界大戦以来だ」と述べた。

 また、ロシア軍がウクライナの人口密集地を意図的に標的にしていると警告する声もある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの主張を否定している。

 英国防省は6日に最新情報を発表し、侵攻に対するウクライナの抵抗の規模と強さが「依然、驚くべき水準」と指摘、ロシアは「ハリコフ、チェルニヒフ、マリウポリなど複数の場所で人口密集地を標的にして反撃した」と述べた。

 英国防省は声明で、「これはウクライナの士気をくじくためと思われる ロシアは以前、1999年のチェチェンや2016年のシリアで同様の戦術を取り、空と地上の両方から攻撃した」と指摘するとともに、ウクライナ軍はロシアの進撃を遅らせる攻撃に成功していることを明らかにした。

 「ロシアの補給線は引き続き標的とされ、地上部隊の進撃速度を遅らせていると報じられている。ロシアは現在、損失を最小限に抑えるために、燃料トラックを通常の支援トラックとして偽装する可能性がある」

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は週末、国民にロシアの侵攻に対抗するよう呼びかけた。また、米国や他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、ロシア政府に侵攻を止めるよう圧力をかけ、ウクライナに軍事支援を提供するよう懇願した。

 ロシア軍がウクライナのいくつかの都市を包囲し、キエフ郊外に車列を維持する中、ゼレンスキー氏は5日夜、いつもの軍用の緑のTシャツを着てテレビに出演し、国民に抵抗を続けるよう呼びかけた。

 「敵が侵入したすべての都市で、ウクライナ人は攻勢に転じる。街頭に出よう。闘うべきだ。この悪を私たちの都市から、国から追い出すことが必要だ」

 ゼレンスキー氏は別の日に、支援国に同国上空を飛行禁止区域にするよう改めて要請した。プーチン氏は5日、第三国がウクライナ領空を閉鎖すれば、参戦したとみなすと警告した。

 ゼレンスキー氏は6日のビデオ演説で、「世界は領空を閉じるのに十分な強さを持っている」と述べた。

 ロシアとの直接的な軍事衝突を恐れる西側諸国は、ゼレンスキー氏の懇願をはねのけた。

 上院情報特別委員会の副委員長を務めるマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)は、飛行禁止区域を設けることによる情勢悪化の危険性について警告した。

 ルビオ氏はABCの「ディス・ウィーク」で、「飛行禁止区域の意味を理解する必要があると思う。…それは、ルールを設定すれば、守ってくれるというものではない。それは、ロシア連邦の航空機を撃墜するという意思を示すことであり、基本的に第三次世界大戦の始まりを意味する」と語った。

 バイデン大統領は6日、ゼレンスキー氏に電話をかけ、ロシアへの厳しい経済制裁とウクライナへの迅速な支援を含む米国の戦略について話し合った。

 ホワイトハウスは、この会話がロシアとウクライナの間の協議にも及んだと発表したが、詳細は明らかにしなかった。

 ロシアとウクライナの代表団による3回目の交渉は7日に予定されている。

 アントニー・ブリンケン国務長官は週末、過去11日間に100万人以上の難民を受け入れた東欧のNATO加盟国を訪問した。

 ブリンケン氏は5日、ポーランド国境を越えてウクライナ西部に短期間入国し、ウクライナとの連帯を示した。6日にはモルドバに行き、支援を約束した。旧ソ連構成共和国で、今は西側寄りのモルドバは、流入する難民を受け入れ、ウクライナでのロシアの動きを注視している。

 過去数年間、ウクライナと同様に、モルドバもロシアの分離独立地域に対処してきた。

 米国と同盟国は先週、ロシア企業やプーチン大統領周辺のオリガルヒ(新興財閥)に対する経済制裁の範囲を拡大した。ドイツ政府は、ロシアの天然ガスをドイツに運ぶために最近建設されたパイプライン、ノルドストリーム2の承認を停止した。

 欧米の制裁措置によってロシア経済はまひし、ルーブルは暴落した。マスターカード、ビザ、アメリカン・エキスプレスがロシアでの事業を停止すると発表したため、ロシアの金融システムは週末にさらに大きな打撃を受けた。

 ブリンケン氏は6日、モルドバでCBS「フェイス・ザ・ネーション」のインタビューに応じ、米国、欧州連合(EU)、主要先進7カ国が協力して「追加制裁を通じてロシアへの圧力を強めるために活発な議論をしており、今後数日で実施される」と語った。

 プーチン氏は5日、西側諸国の制裁はロシアへの「宣戦布告」だと訴えた。

 プーチン氏は引き続き、ロシアの侵攻の責任をウクライナの指導者に押し付け、抵抗を非難。「もし彼らが今していることを続けるなら、ウクライナの国家としての将来は疑問視されることになる。そうなるかどうかはすべて、彼らの良心にかかわることだ」と述べた。

 週末には、ロシアによる人口密集地への無差別砲撃で、女性や子供を含む民間人が死亡したと報じられた。

 世界保健機関(WHO)は6日、ウクライナで医療従事者が襲撃され、6人が死亡、11人が負傷したと非難した。WHOのテドロス・アダノム事務局長はツイッターで、「医療従事者を攻撃することは国際人道法違反だ」と述べた。

 下院外交委員会の共和党筆頭委員、マイケル・マッコール議員(テキサス州)は、他の下院議員とともにポーランドを訪問した際、人道的危機は今後さらに深刻化する可能性があると述べた。

 「非常に心を打たれた。母親や子供たちの現状を目の当たりにして、多くの議員が実際に涙を流していた。歴史的に見ると、ヒトラーがポーランドに侵攻したときのことを思い出してしまう。きのうも10万人、きょうも10万人、この1週間半で150万人の難民がウクライナから出てきており、状況は悪化の一途で、ウクライナの首に掛けられた縄はますます締まっている言っている」

 マッコール氏はポーランドから、CNNの「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で、ロシアの侵攻によって、近年勢いも一体感も失っていたNATOの同盟関係は強化されたと語った。

 マッコール氏は「プーチン氏がしたことで、生命維持装置につながれていたNATOは一つになり、プーチン氏に立ち向かった」と述べるとともに、プーチンは「ウクライナの首に縄をかけようとしているが、その縄は彼の首にかけられようとしているようだ。彼は世界が自分に敵対していることが分かっている。これが彼が最も恐れていることだ」と強調した。

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