バイデン政権に天然ガス増産圧力
By Ramsey Touchberry – The Washington Times – Thursday, March 24, 2022
バイデン大統領は24日、ブリュッセルでロシア・ウクライナ戦争について協議するため北大西洋条約機構(NATO)と欧州の指導者らと緊急首脳会談を行った後、欧州のエネルギー安全保障に対する米国の関与を強調した。
バイデン氏と欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、エネルギー協力に関する合同タスクフォースの創設を発表した。共同声明では、「欧州連合(EU)の当面のエネルギー安全保障上の必要性に対処し、クリーンエネルギーへの移行を加速させる」ことを約束した。
声明によるとEUは、この地域が依存しているロシアの石油と天然ガスを、10年以内に段階的に削減することを計画している。
「われわれは、クリーンエネルギーへの迅速な移行が、ロシアの化石燃料からのEUの独立を進めるために不可欠であることを理解しており、パリ協定の目標、2050年までに排出量を実質ゼロとし、気温上昇を1.5度に抑えるという目標を達成できるよう取り組んでいる」
ロシアがエネルギー市場の支配を欧州への影響力として利用する脅威は以前から懸念されていたが、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ戦争によって、この問題は米欧関係の最重要課題として浮上した。
欧州の指導者らは、米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすことで、ロシアのエネルギーへの依存度を大幅に減らすことを期待している。フォンデアライエン氏は今週初め、バイデン氏に対し、「今後2回の冬の間、追加供給の約束」を果たすために「LNGの供給を優先する」よう求めたという。
フォンデアライエン氏は、エネルギー価格が米国よりはるかに高い27カ国からなるEUが結束して、来年の冬に備えて天然ガス貯蔵施設の容量の少なくとも80%を満たせるよう、米国の役割に期待している。
EUは天然ガス全体の約90%を輸入し、40%をロシアから輸入しているため、ロシアのエネルギーを完全に捨てることは困難だ。米国は、EUへの新たな輸出のおかげで、この3カ月で世界最大のLNG輸出国となり、米国のLNG産業にとって大きな勝利となった。
これは、ドナルド・トランプ前大統領の勝利でもある。在任中、彼は欧州で米国産LNGをロシア産エネルギーの代替品とすることを提唱したが、安価なロシア産天然ガスがこの計画を非現実的なものにしていた。ロシア・ウクライナ戦争とエネルギー価格の高騰がそれを変えた。
それでも、LNG輸出の急増という要請を短期間で満たすことは、バイデン政権にとって困難だ。
アナリストによれば、すでにフル稼働している民間のLNG産業に対して、政府ができることは限られている。また、新規の掘削や輸出許可を急増させても、結果が出るには何年もかかる。
ロビー団体である米国石油協会の天然ガス市場担当副会長、ダスティン・マイヤー氏は「短期間で何ができるかを現実的に考えることが重要だ。今後数年で拡張することは可能だが、新しい大規模な設備が稼働するには2、3年かかるだろう」と語った。
欧州は、2027年までに公約したロシアのエネルギーから完全に脱却するために、やるべきことがたくさんある。そのためには、エネルギーを得る方法を根本的に見直す必要がある。
また、バイデン氏は、ガス業界が望んでいる米国のLNG産業の増産に協力することを約束しなければならないだろう。
しかし、それはバイデン氏が掲げる気候変動政策と相反する。増産を約束すれば、今の投資拡大が将来的に報われるという企業側の自信は高まる。
LNG輸出のための「明確で一貫性のある」認可プロセスも不可欠であり、これは最近まで欠けていたとマイヤー氏は指摘する。
エネルギー省は先週、待望のLNG輸出許可を2件承認した。石油・天然ガス企業に助言する米探査生産評議会(AXPC)によると、4つの追加許可がまだ出ておらず、これが承認されれば、LNG輸出が20%増加する可能性があるという。
共和党は長年、欧州へのLNG輸出を拡大しようとしており、ロシアとウクライナの戦争の中で再び推進することになった。トランプ氏も、ロシアの影響力を削ぐために輸出を増やそうとした。エネルギー情報局によると、トランプ政権時代にLNG輸出はおよそ6倍に増加した。
上院エネルギー委員会のジョン・バラッソ共和党筆頭委員(ワイオミング州)は、「政権が先頭に立って引っ張っていく必要がある。欧州の同盟国は、エネルギーを敵に依存することがいかに恐ろしい間違いであったかを理解しており、エネルギー安全保障が気候変動への熱狂よりもはるかに重要であることを理解している」と述べた。
バイデン氏、議会民主党、EUの指導者らは、LNGによる気候への影響に警戒を続けている。ロイター通信が今月報じたところによると、ホワイトハウスは、環境問題への懸念から、米国が欧州に送る量を増やす方法について検討する可能性を棚上げした。
民主党は、天然ガスに関連する温室効果ガス排出に関する同様の懸念を表明しており、さらに、生産を拡大する責任を連邦政府ではなく、民間のエネルギー企業に求めている。
上院エネルギー委員会のマジー・ヒロノ委員(ハワイ州)は「率直に言って、われわれは石油や化石燃料から脱却すべきであり、これはそのための新たな教訓やメッセージだ。化石燃料生産者が石油を掘り続け、化石燃料に依存し続けることを許すようなことにならないか心配だ」と述べた。