核兵器の維持要請 米欧州軍司令官 バイデン政権に-上院委
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, March 30, 2022
米バイデン政権が、核戦力の縮小を進めるのではないかという懸念が高まっている。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、欧州での核抑止力の増強が求められており、米欧州軍のウォルターズ司令官は、核搭載巡航ミサイルと大型核爆弾の維持の必要性を訴えた。
ランボーン上院議員(共和)は上院軍事委員会の公聴会で3月30日、バイデン政権が公表した予算要求で、核搭載巡航ミサイルの予算を停止することを求めていると指摘、その上で1980年代に配備された大型核爆弾B83の廃棄を計画しているのではないかとの見方を明らかにした。
チャールズ・リチャード戦略軍司令官は公聴会で、「米国が核兵器の配備を限定すれば、米国、同盟国、パートナー国に優位に立てるという間違った自信」を核武装した敵国に与えることになると指摘し、核搭載海上発射巡航ミサイル(SLCM-N)の配備の必要性を強調した。
B83について米政権は、オバマ政権時の核兵器近代化計画の中で、廃棄を計画しているが、その後継となる兵器は配備されていない。ウォルターズ氏は、B83は「(攻撃の選択肢が多くなり)敵の攻撃を困難にさせるために有効であり、今のところ、代わりとなるものはない」と指摘、欧州の抑止力強化のためB83の維持の必要性を訴えた。
B83は、1メガトン(TNT火薬換算、広島型の約60倍)の威力を持ち、搭載できるのは戦略爆撃機B52だけ。オバマ政権時の14年に、廃棄し、新たに開発する戦術核爆弾B61-12に転換することを決めたが、核の脅威が高まる中、トランプ前政権が18年まで維持することを軍に命じていた。バイデン政権も昨年初め、B83の延命予算を承認している。
だが、ランボーン氏は公聴会後のインタビューで、ロシアのウクライナ侵攻によって核増強の必要性は高まったと指摘した上で、核兵器の増強に消極的なバイデン政権が「オバマ政権時の政策に戻る可能性がある」と懸念を表明した。
さらにバイデン政権が、20年に初めて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「トライデント」に搭載された新型の低出力核弾頭W76-2を廃棄する可能性も指摘されている。
ランボーン氏は3月初め、SLCM-N、B83、W76-2の三つの核兵器の維持には「超党派での強い支持」があると述べている。
軍事専門家らは、ロシア、中国が核戦力を増強、北朝鮮が長距離核ミサイルの開発を進める一方で、イランが数年内に核保有国となる可能性があり、核抑止力の維持がますます困難になっていると指摘している。
また、バイデン政権によってB83が廃棄され、SLCM-Nの予算も停止される可能性を指摘した。
ウォルターズ氏はこれを支持し、SLCM-Nの維持を求めた。