ネバダ州のリチウム鉱山開発

(2022年6月17日)

2021年7月14日、ネバダ州北部のサッカー峠にそびえるモンタナ山脈。(Jason Bean/The Reno Gazette-Journal via AP, File)

By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, June 13, 2022

大統領のグリーン政策と環境保護勢力のせめぎ合いに

 電気自動車用電池に必要なリチウムの産出地として、米国で確認された最大のネバダ州北部の鉱山では、急進的な環境保護団体と、それを支持する一部のアメリカインディアンたちの抵抗に直面している。

 この鉱山はオレゴン州との州境から南に約25マイル、2つの山脈にはさまれたネバダ州の農村部で土地管理局が主管している。この紛争は、民主党内でリベラル派と極左派の間で展開されている政争を反映しており、同党の政策志向にも大きな影響を及ぼすものだ。

 リチウムは電気自動車に電力供給をするカギの要素だ。バイデン政権は化石燃料に代わって再生可能エネルギーを促進し、重要な鉱物資源の国内供給政策を進めているが、その中核のひとつだ。中国はリチウム製造に長年投資し、それは米国の実績をはるかに上回っている。

 18,000エーカーのリチウム鉱山を開発しているリチウム・ネバダ社は、粘土層から露天掘りでリチウムを採掘し、リノから北東約200マイルのオロバダ町の近くで処理を行うことについて、内務省土地管理局(BLM)の許可を受けた。この許可は、鉱山建設までの10年におよぶ認可手続きの最後のものだ。同社は法的な壁をすべてクリアできれば、年内にも鉱山建設の着手する計画だ。

 しかし許可証が発給された直後から、同プロジェクトの遅延・停止を求める訴訟が、連邦裁判所に次々と提出された。中には該当する土地が、アメリカインディアンの聖地だとか、同プロジェクトは地域環境を破壊すると主張するものもある。

 これらの訴訟は、「ディープ・グリーン・レジスタンス(DGR)」と称して、「地球崩壊を阻止する急進的な環境運動」のグループの戦略の一環だ。迫りくる生態学的な災難から地球を救うため、米国の工業インフラを取り除くことを誓い、鉱山やネバダ州周辺に居住するアメリカインディアンに、鉱山反対運動を組織している。

 ワシントンタイムズの調査によると、DGRの2人の活動家、マックス・ウィルバート氏とウィル・フォーク氏は、「タッカー峠を守れ!」とする鉱山反対の訴訟や、「ピーヒー・ムハの戦士」、「レッドマウンテンの人々」などアメリカインディアンによる抗議グループ二つの立ち上げに関与していた。「レッドマウンテン」の活動家たちは、問題の鉱山の北にあるフォート・マクダーミット居留地の出身だ。

 これら団体や部族メンバーのFacebookやTwitterへの投稿を調べてみると、反鉱山団体の多くが、ウィルバート氏やフォーク氏と連携しているようだ。

 フォーク氏は2021年1月にFacebookで、環境破壊を食い止めるには、「破壊の張本人たちと真っ向から、物理的な対決が必要だ」と書いている。

 「ジョー・バイデン(大統領)と同政権は、経済成長に重大な影響を及ぼすあらゆる行動、例えばリチウム鉱山の封鎖、パイプラインの解体、石油精製所の破壊、ダムの解体などをさせるはずがない」、フォーク氏は断言する、「ジョー・バイデンは自然界の友でなく、我々の友でもない!」ウィルバート・フォーク両氏は2021年1月から、徹夜抗議のために鉱山現場で数週間キャンプをしたこともある。

 DGRのウェブサイトでは、「工業インフラの一斉解体」によって「工業文明のない世界」を標榜している。同団体は自らを「誇りあるラッダイト(注。新規の生産技術などに反対する運動、19世紀の英国で興った)の継承者」と表現し、人間には電気が不要だ、と主張している。

 DGRの思想は無政府主義とマルクス・レーニン主義で構成され、反米かつ反資本主義だ。メンバーたちはフィデル・カストロ、チェ・ゲバラ、カール・マルクス、ブラックパンサーに賛同する投稿をしている。

 一方でDGRは自らを「過激なフェミニスト」と表現し、性同一主義者から反発を食らった。そのウェブサイトによると、男性は女性との戦争を演じている」として、多様なジェンダーを認めることは、男性の父権主義により女性の抑圧を助長する、として、ジェンダーの廃止」を主張している。

 DGRがトランスジェンダー主義を支持しないことについて、LGBTQの擁護者たちからは、DGRがジェンダー不快感を一般化して、男女の性を超えた複数のジェンダーを促進する「トランスフォビア」だと告発されたこともある。

 「我々は生態学的に度を越していて、生態学の崩壊状態にある」、ウィルバート氏は鉱山現場で撮影し、5月14日にオンライン投稿したビデオの中でそう語っている。

 「未来は悲惨なものかもしれないが、このような虚構、すなわち明るい緑の虚構を受け入れれば事態は悪くなり、よりディストピア的になるだけだ。もっと多様な種の絶滅や、所得格差の増加、分裂と戦争の拡散、土地の荒廃をもたらすのみだ。それは我々が望む未来への道ではない」、ウィルバート氏はこう主張している。

 弁護士でもあるフォーク氏は、問題の地域が部族の神聖な土地であり、1865年に米騎兵隊がインディアンを虐殺した場所だと論述した事案を含めて、鉱山開発阻止を求めるいくつかの訴訟に関与した。

 米国地区裁判所のミランダ・M・デュ判事は11月、フォーク氏の論述を却下し、鉱山現場が虐殺の舞台だったというのは「推測に過ぎない」と断じた。さらに同判事は、タッカー峠での発掘作業の進行を是認する判決を下した。

 木曜日にドゥ判事は、フォーク氏の申し立てを聴いた。それによれば、裁判官がリノ・スパークス・インディアン居住地の告発を支持した他の文書を見直すことなく、タッカー峠での業務を許可する判決を下したと主張した。金曜日に裁判官は、フォーク氏の申し立てを却下し、BLM文書の作成手順は不十分とは言えないと判断した。

 タッカー峠周辺に5万エーカーの土地を所有する牧場主エドワード・バーテル氏は、鉱山承認を求めたBLMに対抗した初めての訴訟を起こした。

 「硫黄を利用して廃棄される巨大な堆積物を見れば、これをグリーンプロジェクトと称するのは噴飯ものだ!」、バーテル氏は「インサイド・クライメート・ニュース」に語っている。

 BLM(米国・内務省土地管理局)およびリチウム・ネバダ社との契約関係にある考古学者のクレイグ・ヤング氏はインタビューで、問題の虐殺行為は、現在私有地になっている鉱山現場から数マイル離れた場所で行われたと判断した。ヤング氏は、過激な環境保護主義者や反鉱山活動家たちがオンラインサイト上で、ヤング氏が鉱山現場でアメリカインディアンの骨を発見・収集した、との虚偽の主張で同氏を非難したと述べた。鉱山現場を調査した考古学者たちは、そのような骨を発見しなかった、と言明した。

リチウム需要が急増

 バイデン政権がガソリン乗用車・トラックに代わるものとして、電気自動車(EV)を推進するにつれ、リチウムイオン電池に使用される銀白色の金属リチウムの世界的な需要が急増している。

 バイデン大統領は先月、ガス価格の急騰は化石燃料から離れようとする「途方もない移行現象だ」と認めた。「現状はここまできている!」、大統領は5月23日に東京で語っている。「ガス価格に関して、神の思し召しがあれば、状況が一段落した時に我々は強くなり、世界ももっと強力になっていて、化石燃料への依存度が少なくなる途方もない移行を経験しているだろう。」

 テスラ社のイーロン・マスクCEOは最近のツイートで、「リチウムの価格は非常識の域に入った」と指摘し、EV市場を牽引する同社は電気自動車用電池に必要なリチウムの採掘・精製に乗り出す可能性を示唆した。

 テスラ社はリノ近郊に巨大な工場を運営し、パナソニック社と共同で電気自動車用電池を製造している。テスラの広報担当は、同社がタッカー峠の鉱山を支援しているのか否か、電子メールでのコメント要請に応じてくれなかった。

 業界推定では、リチウム1トンの価格が2020年の6,800ドルから、今年は78,032ドルにまで急上昇した。このせいで、現在の最低価格が約57,000ドルである電気自動車の製造コストが押し上げるはずだ。

 米国エネルギー省の2021年報告書によれば、米国は2030年までにリチウム電池の材料および技術の安全なサプライチェーンを構築する、と述べている。

 エネルギー省のジェニファー・M・グランホルム長官は同報告書で次のように述べている、「リチウムを使った電池の国内サプライチェーンを確立するには、画期的な新素材の科学的課題を解決し、成長する電気自動車(EV)と固定グリッド市場の要求を満たす製造拠点を開発するという二正面で、国家的コミットメントが必要だ」。

地域の懸念を和らげる企業努力

 リチウム・ネバダ社の関係者は、向こう46年間のプロジェクトを想定し、露天採掘の現場建設着手を切望していると語った。同社は過去数年、環境保護主義者や地元住民、パイユート・ショシャイン族の懸念を和らげる活動を、地元コミュニティや周辺のアメリカインディアン居留地で積極的に取り組んできた。

 リチウム・ネバダ社の親会社であるリチウム・アメリカ社の社長兼最高経営責任者ジョン・エヴァンス氏は、DGRが同プロジェクトに反対する背後の原動力のようだと述べた。

 そうした抗議にもかかわらず、同社はリチウム開発を重要段階とみなしている。鉱山計画や、地域社会との関与・交流をオープンにして、反対運動に対処しようとしている。

 「我々がタッカー峠で取り組んでいること、そして我々の業務一般が、気候変動、エネルギーと経済の安全保障、そして国家の安全保障の3つの柱で、米国の未来を確保するのに本当に重要だ」、同氏は語った。「それらすべてが、相互に織り交ぜられている」。

 リチウム・ネバダ社は、鉱山の環境を保護し、水の使用を制限し、採掘後の露天を蘇生させ、地元のネバダ州民や先住民の文化遺産を尊重するため、時間と資金を投入してきた、とエヴァンス氏は強調した。

 リチウムを採掘した露天鉱床では、ネバダ州の州花ヤマヨモギが埋め尽くし、自然に還される。鉱山の端と言う端はドライスタックが配置される。

 「これら全てが最先端の手法で、これら鉱山を整備する最も持続可能な手法だ」、とエヴァンス氏は語った。この鉱山プロジェクトを支持する一部の環境保護主義者に言わせれば、同鉱山は「彼らが今まで目撃した中で、最も良性の鉱山」になるだろうと指摘した。

リチウム採掘に政府からの支援

 連邦政府、州政府、地方自治体は、タッカー峠での鉱山開発に支持を表明している、とエヴァンス氏は述べた。

 3月にバイデン大統領は、EV電池製造に必要なリチウム、ニッケル、その他の鉱物の供給を増やすため、1950年の防衛生産関連法を発動した。その際に大統領は、この措置がグリーンエネルギー資源で、中国その他の国々への依存を終わらせるために重要だ、と強調した。

 バイデン政権は先月、エネルギー省が電池製造を支援するために31億7000万ドルを費やすと発表した。「電気自動車を稼働させるには、リチウムイオン電池の生産増加が必要であり、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトなどリチウムイオン電池の製造に使われる主要原料を、責任と持続可能な国内調達が不可欠だ」、バイデン大統領の上級顧問ミッチ・ランドリュー氏は5月2日、記者団に語っている。

「タッカー峠」は上院選挙の争点にも

 ネバダ州民主党のキャサリン・コルテス・マスト上院議員は、再選の厳しい戦いに直面しているが、州内でのグリーン代替エネルギーを支持すると述べ、タッカー峠プロジェクト支持をやめた。コルテス・マスト議員の選対本部は、コメントを求めた電子メールに回答をくれていない。

 ネバダ州のアダム・ラクサルト元司法長官は、コルテス・マスト議員に対する共和党挑戦者だが、ネバダ州の鉱業と同州の利益になることに賛成だ、と明言した。「リチウム採掘は新エネルギー資源を確保し、米国のエネルギー独立性を確保する素晴らしい機会だ」、ラクサルト氏は語った。

 鉱山があるフンボルト郡の管理官デイブ・メンディオラ氏は、鉱山に反対している郡コミッショナーを除いて、「リチウム・プロジェクトに否定的な発言を聴いたことがない」と証言した。

 メンディオラ氏は反対抗議が、広範な地域感情を反映しているとは思えない、鉱山に抗議する連中は、「要するに何でも反対する人々だ」と語った。

 「彼らは化石燃料も嫌い、再生可能エネルギーも嫌い。馬と四輪馬車に戻りたいだけだ」、メンディオラ氏は語る、「彼らがそうしたければ、それをする土地は五万とある。」このプロジェクトはマクダーミット族に「大きな恩恵をもたらすはずだ」と、同氏は強調した。

 鉱山プロジェクトに反対しているフンボルト郡のトム・ホス長官は、リチウム・プロジェクトが貴重な水資源を排出し、究極的には中国を利するだけだ、と述べた。

 鉱山現場では二本の井戸が掘削され、リチウムの処理に水が使用される。「ポンプの電源を入れてしまえば、約2年で当該地域が乾燥するはずだ」、ホス長官は指摘した。

 リチウム・ネバダ側の見方は違う。同社は鉱山で使用する水利権を購入した。会社のファクトシートによれば、鉱山はフンボルト郡の井戸から毎年汲み上げられる約35万エーカー・フィートの水の1%未満を消費することになる、と主張している。

分裂したアメリカインディアンたち

 鉱山プロジェクトが契機となり、地元のアメリカインディアンからも様々な意見が寄せられた。ある部族当局者は、やがて鉱山になる周辺は不毛な土地で、ショショーン族とパイユート族の文化遺産としても大きな役割はない、と述べた。

 「私の意見では、このプロジェクトが地域社会にプラスで、雇用を創出するだろう」、フォート・マクダーミット・パイユート・ショーション族の長老の一人、アリス・クラッチャー氏は、ある訴訟に提出した宣誓供述書で述べている、「私の考えでは、タッカー峠プロジェクトによって、パイユート・シャホーンの遺産や伝統に不都合なことは何もない。」

 マクダーミット族の別のメンバーは、鉱山計画とバイデン大統領のリチウム生産促進に反対を表明した。タッカー峠プロジェクトに反対している団体「レッドマウンテンの人々」を手伝ったデイ・ヒンキー氏は、「これこそ環境破壊の再来になるだろう」と主張した。ヒンキー女史はAP通信に対し、化石燃料は第一次の環境危機を引き起こし、リチウム採掘は第二次の危機をもたらすだろう、と語った。

 「この鉱山は、フォート・マクダーミット・パイユート・ショーン族と、我々の伝統的な土地、大切な文化地域、水、空気、そして大型ライチョウや、ラホンタン・カットスロート・マス、プロングホーン・カモシカ、そして神聖な黄金のワシなど野生生物に危害をもたらすだろう」、同団体は声明の中でこう述べた。

 フォート・マクダーミット・パイユート・ショーン族の議長マクシン・レッドスター女史は、この問題が彼女のコミュニティを分断したことを懸念する。

 「我々は自分たちのものを保とうと努めているだけの、ささやかな存在に過ぎない」、彼女はネバダ・インディペンデント紙に語った。「私は部族の年長者の声を尊重するが、ガイダンスを必要とする若者たちは今後、長い期間、ここに住むつもりだ。」

 レッドスター女史は最近、部族に供与される恩典に関して、部族がリチウム・ネバダ社と関係を戻すべきか否か、尋ねる調査書を送っている。

リチウムの国内供給源

 リチウム・ネバダ社の当局者は、この鉱山が国内生産を増やすことで、中国、南米、オーストラリア産のリチウム依存度を減らすと述べている。同鉱山はまた、コロナ感染で経済的打撃を受けた地域に、千人以上の建設雇用と三百人の恒久的な雇用を提供するだろう。

 同社はまた、フォート・マクダーミット・パイユート・ショーン族に「福利厚生契約」を提案している。その契約では、居住地域にコミュニティセンターと保育園を建設し、雇用、職業訓練、文化活動への関与を提供すると記している。

 企業・現地コミュニティ双方からなる「作業部会」は、鉱山の近くで定期的に集まり、地域の懸念に対処しようとしている。鉱山現場の近くに住み、コロナ感染期間に大半の牛を売る羽目になった第4世代の牧場主ジュディ・ピホフ氏は、水の問題に懸念があったが、鉱山は牧場主や農家の飲料水源に害を及ぼさないと確信している、と述べた。ピホフ女史はその後、コミュニティ・コンサルタントとしてリチウム・ネバダに入社した。

 「進歩を止めることはできない」、彼女はインタビューで語った、「前向きな変化を促す力と、将来何が起きるかの知識を持つことで、リチウム鉱山が我々コミュニティに与える影響を察知できる。」

 「中国からの輸入品を買わず、我が国アメリカの力を確保しよう、また石油産業の教訓からも学ぼう」、「我々はもっと上手にやれるはずだ」、そうピホフ女史は断言した。

地下活動

 DGRの活動家フォーク氏はメールの中で、米国の法律はアメリカインディアンの文化・精神的な必要より、鉱業の要請に応えようとしていると書いた。その結果、米国の産業界に「大規模かつ組織的な」変化が起きるまでは、「タッカー峠のようなプロジェクトを阻止できない」。

 「我々は鉱山企業がネバダ・オレゴン両州を、電気自動車用電池の犠牲になるのを防ぐため、懸命に闘っている」、フォーク氏は主張した。

 一方のウィルバート氏は、反鉱山キャンペーンの成否は分からない、と認めている。「タッカー峠では、草の根の環境保護主義者と、伝統的な先住民が、大企業や政府の圧倒的な力に直面している」、同氏はFacebookのメモに記した。「これは広範に見られるパターンだ。全ての環境運動は数十年間、退却戦を強いられてきた。」

 ウィルバート氏はDGRが、鉱山への「抗議行動を本格的に始めた団体」だと主張するが、他にもいくつかの団体が関与してきた。「リノ・スパークス・インディアン居住地」、バーンズ・パイユート族の8つの部族・部族連合が発言してきた。リノ・スパークス居住地はそのFacebookページに、タッカー峠抗議に関するウィルバート氏の投稿を共有している。

 それによれば、他に4つの環境団体と、地元の牧場主一人が、プロジェクト中止を訴えており、現地の数千人の人々が抗議行動を支援している。

 DGRのウェブサイトは支持者たちに注意を促し、連邦政府の関係者と会話しないこと、DGRは合法的で公然たる環境団体であると表明するよう指示している。しかし言動の安全に関する部分には、DGRの目標を達成するための非公然活動について示唆している。

 このグループはインフラストラクチャへの予測不能な攻撃によって、システムの連鎖障害を引き起こすような、「決定的な生態学的戦争状態」を呼びかけている。

 またウェブサイトには、DGRと「地下活動」の間に一種のファイア・ウォールが敷かれている、と書かれていて、グループの主な活動は合法的であり、「非公然かつ違法行為を行う地下組織とは一線を敷いている、と注意をしている。

 「非公然活動と連携することで、地球を救う最良の機会をもたらすと考え、そうした行動を提唱している」、ウェブサイトはそう表現している。

 DGR自体は地下活動を企画・実行しないが、ウェブサイト上には様々な直接行動を列挙した「地下活動カレンダー」というページへのリンクが置かれている。その活動の中には、四月にフランスでインターネットサービスを混乱させた光ファイバーケーブル切断事件が含まれていた。

 この組織は、広告、教育、潜入、拡大という、四方面からの戦略を志向している。「地上のすべての生命体の持続可能性のため、反帝国主義運動が定着し、平等主義のグローバル社会が発展するために、支配層エリートに対して同時的かつ多方面で団結し、闘わなければならない」、ウェブサイトにはそう書かれている。

 「残忍な工業経済は惨めにも失敗した。その固有の矛盾は、支配エリートの手に大きな富を集中させ、大気汚染し、戦争を引き起こし、飢饉を招き、労働者を搾取・拷問・投獄し、人種や性別・宗教によって我々を分裂させた。」

 DGR活動家のウェブサイトやブログでは、マルクス・レーニン主義のブラックパンサー党や、共産主義ゲリラのチェ・ゲバラを模範として賞賛している。

 このグループはまた、ブラックパンサー党が適用した社会や共同体へのアプローチ手法で、「白人過激主義者たち」に入り込む計画を有している。「白人過激主義者は人種・ジェンダーに根差す政治を嫌っているが、白人労働者や田舎出身のアメリカ人を覚醒させなければならない」、「極右やナチスの勢力が団結することに対して闘わねばならないが、彼らのコミュニティに入り込み、その子弟たちに強い影響を与えて、彼らの既成観念を混乱させ、不安と憎しみに導くことが決定的に重要だ」、ウェブサイトにはこうした言葉が躍っている。

リチウムの採掘方法

 リチウム・ネバダ社は今年後半に、露天掘り鉱山の建設を開始する予定だ。

 ちなみに同鉱山は、1630万年前に形成されたイエローストーン火山のホットスポットの一部で、マクダーミット・カルデラと呼ばれる死火山の南端に位置している。火山の大噴火から数十万年後にリチウム堆積物が形成されて、水が周辺の岩石に浸透し、リチウムをカルデラ盆地に浸出させたものだ。

 2024年までに全面稼働できれば、同鉱山は向こう46年間、年間6万トンの電池品質の炭酸リチウムを生産できると見込まれている。

 リチウム・ネバダ社のアメリカインディアン居住地渉外担当のマリア・アンダーソン氏によると、同社は鉱山の分析と、環境法規を遵守し、それらを上回る規準で鉱山設計をするのに10年を費やした。女史は語る、「我々は隣人たちの意見に耳を傾け尊重してプロジェクトを作り上げ、持続可能な未来を確保しようとしている。」

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