中国、薬物対策で協力停止 過剰摂取の増加懸念

(2022年9月3日)

ユタ州連邦検事局が提供し、裁判の証拠として提出された未公開のファイル写真で、捜査中に集められたフェンタニル混入の偽オキシコドン錠剤が示されている。(U.S. Attorneys Office for Utah via AP, File)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, August 31, 2022

 中国が、米有力議員らの台湾訪問に抗議し、米国との薬物対策での協力を停止したことで、中国が供給しているフェンタニルの過剰摂取による死者が急増するのではないかという懸念が強まっている。

 2国間協議の停止は8月5日に発表され、米国の現・元高官らが、メキシコのカルテルによる米国への薬物密輸が増加すると警告を発している。カルテルは、中国の犯罪組織と協力し、薬物の原料となるフェンタニルなどの違法薬物を密輸している。

 税関・国境警備局(CBP)の集計によると、フェンタニルの押収量は、協議の停止前に既に急増していた。7月に2130ポンド(約966㌔)が押収された。これは、2019年1年間に押収された量に匹敵する。

 米国家薬物管理政策局(ONDCP)のラフル・グプタ局長は、薬物の密輸が増加すると警告、中国に協議の再開を呼び掛けた。グプタ氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙で、中国が対応を強化しなければ「中国で前駆物質から合成されたフェンタニルとメタンフェタミンが今後も、世界中に出回る」と述べた。

 グプタ氏は、中国の協議中止について「残念なこと」とした上で、中国政府が2019年5月にフェンタニル関連の輸出への取り締まりを行ったことを指摘した。これで米国に流入するフェンタニルの量は激減していた。

 「しかし、その後、北米は中国からの前駆物質であふれ返り、国際的な取り組みを困難にしている」

 グプタ氏は、不十分な国境管理と不法移民の流入が一因かどうかについては言及していない。

 薬物をめぐる協議停止は、ペロシ下院議長の訪台を受けて、中国が破棄または中止した八つの相互交流の中の一つ。中国政府は、米民主党代表団の訪台は、台湾の地位に関する「一つの中国」政策に反すると主張している。

 グプタ氏はツイッターで「過剰摂取の増加が続き、5分に1人が死亡している。中国による協力の停止は受け入れられない。協力によって、これらの違法薬物を売買し、世界的な犯罪に関与している個人を法によって裁くことができる」と指摘していた。

 国務省の元高官のデービッド・アッシャー氏は、中国の対応によって、メキシコのカルテル、シナロアとジャリスコへのフェンタニルの前駆物質の密輸が増加するのは間違いないと主張した。これらの犯罪組織は、中国でフェンタニルを製造している化学メーカーと協力している。

 現在、ハドソン研究所チャイナ・センターに所属するアッシャー氏は、「その行動から、共産中国は、米国と水面下でオピオイド戦争を行っていることが分かる。工作員らが米国とカナダでマネーロンダリングを行っている。それだけでも、(不正利得で)訴追する根拠になるはずだが、司法省とONDCPは、完全に『形骸化している』中国からの協力に依存している」と述べた。

 2018年に中国政府は、郵便や運び屋を使った米国への直接の密輸を取り締まった。習近平国家主席とトランプ大統領(当事)が会談し、中国がフェンタニルとそれに関連する輸出を削減する合意が交わされてから、密輸は減少していた。

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