米中会談、バイデン氏は関与を求め、習氏は拒否

(2022年11月17日)

2022年11月14日(月)、インドネシア・バリ島のヌサドゥアで開催されたG20首脳会議の傍ら、会談前に中国の習近平国家主席と握手するジョー・バイデン米大統領(右)。(AP写真/アレックス・ブランドン)

By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, November 14, 2022

 バイデン大統領と中国の習近平国家主席は、14日の3時間に及ぶ非公開の会談で、米中関係の将来について、大きく異なる考えを持っていることが明らかになった。バイデン氏は2国間の関与拡大を求める一方、習氏は米国に手を引くよう求め、台湾やその他の問題に関して「レッドライン」を超えないよう露骨に警告した。

 ホワイトハウスの公式発表によれば、バイデン氏は、ますます攻撃的になっていると指摘されている中国との衝突を避けることを強調した。つまり、米政府はアジアでの「新たな冷戦」を望んでおらず、緊張緩和を目的とした会談や関与を通じて、両国間の緊張を静めたいということだ。

 習氏は、世界は歴史的な転換点に直面していると述べ、米国が、中国の共産主義体制と、国を再生させるための取り組みを受け入れるよう要求した。

 中国政府は声明で、習氏は米国に対し、台湾に関する意見の相違が、潜在的な紛争の火種として残っているとはっきりと警告したと明らかにした。

 会談後の双方の声明によると、会談では、習氏が不快に思うような問題も含め、いくつかの注目すべき問題が取り上げられなかった。米中の声明はいずれも、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応における中国の役割や、新型コロナの起源を突き止めるための国際調査を中国政府が何年にもわたって妨げてきたことに関する問題を取り上げたかどうかについて言及していない。

 中国の大規模な軍備増強、特に核ミサイルの急速な拡大についても、インドネシアのバリ島で開催された経済サミットの傍らで行われた約3時間の会談では取り上げられなかった。

 2国間関係以外の世界の出来事も会談に暗い影を落とした。米戦略軍のチャールズ・リチャード司令官は今月、ロシア・ウクライナ戦争が台湾をめぐる中国との大きな紛争の前触れとなる可能性があると指摘した。

 ホワイトハウスによると、習氏とバイデン氏は、核は使用してはならず、核戦争に勝者はいないとの認識で一致した。また、ロシアによるウクライナで核兵器を使用するという脅しに反対を表明した。

 ホワイトハウスは公式声明で、「バイデン大統領は、米国は自国の強化に注力し、世界中の同盟国やパートナー国と連携するなどして、中国と精力的に競争し続けると説明した」と表明した。バイデン氏は習氏に対し、米中間の競争は「対立に傾いてはならない」し、開かれたコミュニケーションを通じて管理・議論されるべきであると述べたという。

 会談後の記者会見でバイデン氏は、緊張が新たな冷戦につながるようなことがあってはならないと述べた。

 また「あらゆる面で互いに率直で明確だった。中国による台湾侵略の試みはすぐには起きないと思う」との見方を表明、米国の対台湾政策は「全く変わっていない」と強調した。

 バイデン氏はこれまで4度にわたり、米国は中国の攻撃から台湾を守ると発言したが、このような方針は、1979年の台湾関係法でも示唆されている。

 「私は、両岸の問題が平和的に解決されることを望んでいることをはっきりと伝えた。私の言っていることは正確に理解されていると確信している。私は彼が言っていることを理解している」

 ホワイトハウスによると、アントニー・ブリンケン国務長官は今後、中国との協力に関する協議のために中国を訪問する予定だという。また、習氏とバイデン氏は、台湾をめぐる緊張の高まりを受けて、中国が中断していたさまざまなワーキンググループを通じたハイレベルの定期的な対話の再開を認めると述べた。

急激な変化

 米中関係は、トランプ政権下で大きく変化した。トランプ政権は、経済的・政治的に中国に関与してきたこの数十年間の政策を転換し、中国によるサイバー攻撃、南シナ海の軍事化、台湾、日本への軍事的圧力、北朝鮮などのならず者国家への支援などを放置した。

 バイデン氏は選挙前の一部の期待とは裏腹に、トランプ政権の対中強硬政策の多くを維持し、さらには拡大させた。しかし、バイデン氏とその側近は、気候変動など相互の利益が絡む問題については、中国政府との協力拡大に前向きに取り組むと常に主張してきた。

 中国は、8月にナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問した後、2国間の気候変動協議を打ち切った。また、中国軍が台湾周辺で過去数十年で最大規模の戦争演習を行い、近海に10発以上の弾道ミサイルを撃ち込むなどした。

 バイデン政権は、数千億ドル規模の中国からの輸入品に対するトランプ政権時代の関税の見直しを行っていたが、9月、これを継続することを発表した。

 習氏は、中国は被害者だと主張し、台湾、貿易、経済のデカップリング(分断)などの問題に関する米国の動きが緊張を高める主な原因だと主張することがある。習氏はバイデン氏に対し、現在の関係は「両国と両国民の基本的利益に合致」していないと指摘した。

 また、米国は「新しい時代を迎え、両国が仲良くするための正しい道を探る」必要があると警告した。これは、中国の世界的覇権と影響力が増大していることに言及したものだ。

 習氏は、2国間の関係を「健全で安定した発展の軌道に戻す」必要があると述べた。

 習氏は台湾を「中国の核心的利益」と表現し、この問題は米中関係での「第一の越えてはならないレッドライン」と述べた。バイデン氏に対し、「台湾問題の解決は中国人民の問題であり、中国の内政だ。台湾を中国から分割しようとする者は、中国の国家的正義に反するものであり、中国国民は決して同意しない」と訴えた。

 習氏は、中国は幅100マイル(約160キロ)の台湾海峡の平和と安定を維持することを望んでいるが、台湾の正式な独立は平和と安定と相容れないと警告したと述べている。

 シンクタンク、ディフェンス・プライオリティーズのアジア担当ディレクター、ライル・ゴールドスタイン氏は、会談の声明は台湾とウクライナに対する政策の劇的な相違を示したと指摘する。

 ゴールドスタイン氏によると、米国はウクライナについて「核兵器を使うべきではない」という点で一致したと強調したが、中国の声明は核兵器に触れず、「勝者はいない」とだけ述べている。

 また「台湾についてバイデン氏は、中国の台湾に対する『ますます攻撃的な行動』に異議を唱えた。これに対し習氏は、台湾問題は中国の内政であり『核心的利益』だと反論、『レッドライン』という言葉を明確に使って、中国が台湾をめぐって紛争を起こす可能性もあることを示唆した」と述べた。

 習氏はさらに、中国共産党の体制を擁護し、中国の「民主主義」は14億人の人々に支持されており、米国がそれを変えようとすべきではないと主張した。

 「これらの相違はきょう始まったわけではなく、明日以降も続くだろう。中米関係で最も重要なことの一つは、この違いを認識し、尊重することだ」

 習氏は、二つの体制の違いを受け入れることが、2国間関係の最も重要な側面の一つであり、「同じになるよう強要したり、互いの体制を変えようとしたり、転覆させようとしたりする」べきでないと述べた。

議会の支持

 バイデン氏の控えめな発言と協力拡大の呼びかけが、議会でどのように作用するかは不明だ。台湾への支援と中国への強硬路線は、議会で超党派の強い支持を得ている。

 共和党のトム・コットン上院議員(アーカンソー州)は、「バイデン氏はまたしても中国の米国に対する冷戦に対処せず、その存在すら認めなかった。彼の融和政策への回帰の考えは甘く、米国を傷つけ、台湾を危険にさらし、習近平をさらに大胆にすることになる」と述べた。

 また、共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)は、「米国と中国共産党の間に『新しい冷戦は必要ない』というバイデン大統領の主張は、米国とその同盟国との衝突を公然と推し進める中国共産党を、この政権が危険なほど誤解していることを証明している}と述べた。

 バイデン氏とブリンケン氏、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)ら政府高官は、中国側とはすでに何度か会談しており、米国は中国の共産主義体制の転覆を目指さないと発言している。

 米側の会談の記録によると、バイデン氏は中国の台湾に対する軍事的威圧を批判した。

 バイデン氏は「台湾に対する(中国の)強圧的で攻撃的な行動に対し、米国は異議を唱えた。これは台湾海峡とより広い地域の平和と安定を損ない、世界の繁栄を危うくするものだ」と述べたと声明は指摘している。

 バイデン氏はまた、新疆ウイグル自治区、チベット、香港における中国の人権侵害を提起した。

 米国務省は、中国が新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族などに対する大量虐殺を行っており、100万人以上が強制収容所に収容されていると宣言している。

 中国はこの主張を否定し、最近では国連の支持も得て、収容所はウイグル族を再教育するためのものだと主張している。

 会談での習氏の発言は、北朝鮮のプロパガンダのようだった。

 中国側の声明によると、習氏は「中国式の近代化で中華民族の偉大な復興を全面的に推進し、人民のより良い生活への願いの実現を引き続き原点とし、改革開放を揺るぎなく実行し、開放型世界経済の構築を促進する」という先の中国共産党大会の結果を発表した。 習氏は、中国の外交政策は平和的であり、紛争の平和的解決を提唱していると述べた。

 「中国は平和的発展、開放的発展、ウィンウィンの発展を堅持し、世界の発展の参加者、推進者となり、他国と協力して共通の発展を実現する」

 トランプ政権時代に東アジア・太平洋担当国務次官補を務めたデービッド・スティルウェル氏は、バイデン氏が習氏と個人的に会うことを重視していることが重要な誤解を生んでいると指摘する。

 「対話で中国の行動が変わることはない。彼らは自分たちでもそう言っている」

 「彼らの目標は、自由民主主義を打ち負かすことだ。彼らの権威主義的イデオロギーを直接脅かすものだからだ。中国と協力する余地はない。気候変動への協力や軍同士の対話を求め続けることは、恐れと弱さのメッセージを送ることになる」

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