米国の農地買い漁る中国、食料安全保障への脅威に 議会や州で規制の動き進む
By Bill Gertz – The Washington Times – Sunday, April 2, 2023
中国政府は、組織的に米国の農地を買収している。増える中国国内の需要を満たし、減少する農地と水質汚染によって縮小する農業部門を補完し、自国の食料安全保障を強化するための戦略の一環だ。一方で米国でも、中国などによる農地買収への警戒感が強まっている。
外国の土地取引の監視を担当していたマーシャル・ビングスリー元財務省次官補によると、中国政府は20年以上前から、米国の国家安全保障に関わる施設近くの土地、不動産の購入に取り組んできた。中国はまた、法執行機関に近いニューヨークのオフィスビルも購入しているという。
ビングスリー氏は「中国は今も米国の農地を買い、米国の農業生産の首根っこを押さえようとしている。直ちに、中国の機関や企業による米国の土地購入を禁止する法律を定めるべきだ」と警鐘を鳴らす。
連邦政府は、外国人が保有できる米国内の民間の農地の面積について法的な制限を課していない。
一方、連邦議会と複数の州では、米国の安全保障を損ねる可能性があるとして、中国が米国の農地を購入したり、投資をしたりすることを禁止または制限することへの取り組みが進んでいる。
テキサス州、フロリダ州、アーカンソー州などで、中国の国籍保有者が不動産を購入することを禁止する法案が提出された。
また、インディアナ、アイオワ、カンザス、ケンタッキー、ミズーリなど14州が、民間の農地を外国人が保有することを禁止または制限している。そのうち9州は、外国人の土地購入に関する制限をさらに強化することを検討している。
ミズーリ州では、農地の外国人による保有の制限を現在の1%から0・5%に引き下げ、中国、イラン、北朝鮮、ロシア、ベネズエラによる追加投資が8月下旬から禁止される。
米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の報告によると、中国で耕作地が減少、水質汚染が拡大し、家畜が減少していることから、中国政府は自国の食料確保のため、米国の農地、畜産業、さらに農業に関する知的財産を狙っているという。「米国はこれらの分野で世界的リーダーであり、農業部門、食料安全保障を強化したい中国がそこに目を付け、時には違法な手段を取ることもある」と警告している。
また報告は、中国による米国の土地購入は、10年に55平方キロだったが、20年には1400平方キロに増加しているが、その多くが豚肉生産の米最大手スミスフィールド・フーズによるものだと指摘。スミスフィールドはオバマ政権時の13年に中国に買収されており、買収計画は中国政府も支援していた。
また、報告は遺伝子操作された穀物は、生産量の増加に役立つ一方で、生物兵器として「軍事転用可能」と指摘。「コンピューターのハッキングのように、中国は遺伝子操作された種のDNA情報を盗み出し、病気を発生させることで米国の穀物生産を壊滅させることも可能だ」と訴えている。
議会でも中国による農地買収を巡って動きが出ている。
共和党のステファニク下院議員は、「農業予防・安全保障促進法案(PASS)」を提唱した。中国、ロシア、イラン、北朝鮮が米国の農業企業を買収するのを禁止し、農業と関連するバイオ技術を重要インフラに指定し保護するための法案だ。
また今年に入って共和党のニューハウス下院議員が中国国籍保有者が米国の土地購入を禁止する法案を提出。テッド・クルーズ氏ら4人の共和党上院議員も、中国などの敵国による軍事基地付近の土地買収を禁止する法案を提出している。
ハワイ州のシンクタンク「グローバル・リスク緩和財団」のデービッド・デイ会長は、「新型コロナウイルス感染拡大時に防護具や薬品の供給で苦労し、学んだように、『食料安全保障』を『国家安全保障』の一部として考えるべきだ」と指摘、食料供給と農地の保護の必要性を訴えている。