無人艇で潜水艦戦能力向上を 水中防衛能力高める中露-シンクタンク
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, June 8, 2023
米シンクタンク、ハドソン研究所が戦略潜水艦に関する報告書を公表、中国とロシアが水中での戦闘・防衛能力を向上させているため、台湾海峡での紛争の抑止、敵国の潜水艦の追跡という米国の核搭載潜水艦が担う主要任務の遂行が困難になると指摘した。
米軍は長年、潜水艦によって敵国に対し戦略的優位を保ってきた。一方、中露軍は近年、南シナ海、東シナ海、北極海での水中防衛能力の強化に取り組んできた。
これらの軍事拠点には、潜水艦を発見、追跡するための固定式・移動式センサーのネットワークが張り巡らされている。さらにこれらのセンサーは航空機と艦艇によって補強され、「通信を捉えたり、機雷を設置したりする」ことが可能になっているという。
中国は現在、南シナ海、台湾近海でさまざまな監視ネットワークを構築し、潜水艦を発見、監視している。そのため米海軍は、攻撃型潜水艦を有効に使い、優位性を維持するには、これらの水中防衛能力を抑止し、破壊するシステムで潜水艦を支援する必要がある。
報告は、そのためには水中で音を出さないことよりも、音を利用することを海軍に呼び掛けた。
「これによって、米国の潜水艦の活動の枠組みを『単独行動、(攻撃を受ける)恐れがない』から『連携』にシフトする。さらに、新世代の長距離アクティブソナーの出現で、米国の水中戦力は、妨害、欺瞞の能力を強め、敵のセンサーに対抗することが可能になる。これは水上ですでに行われていることだ」
最新技術を盛り込んだこの新システムは、5年で配備が可能で、水中での敵の防衛能力に対抗できるようになる。短距離、長距離の水中艇を使って、センサーの位置を把握し、脅威を特定し、妨害し、おとりとなり、システムを破壊する。
これが、攻撃型潜水艦にとって今後の作戦の鍵となる可能性がある。
報告の作成に参加したブライアン・クラーク上級研究員は、「ここで重要なのは、米国の潜水艦が敵国の海域で勝利するには、音が大きい、無人のシステムで構成するチームを使用する必要があるということだ」と指摘した。
海軍は現在、ロサンゼルス級高速攻撃型潜水艦29隻、シーウルフ級攻撃型潜水艦3隻、バージニア級攻撃型潜水艦19隻を運用している。いずれも原子力潜水艦で、探知や追跡が困難な非常に静かな推進システムで運用されている。
また、海軍はSSN(Ⅹ)と呼ばれる次世代攻撃型潜水艦の開発に取り組んでおり、報告で提唱された技術の多くが盛り込まれる予定だ。
報告では、敵国のセンサーに対抗するために、無人の航空機と水中艇を使用し、米国の攻撃型潜水艦を他の任務に当たることができるようにすることを求めている。
無人機・艇には、海軍の新しいハイテク機雷「ハンマーヘッド」や、空から投下し、航行する「クイックストライク」などが搭載される可能性がある。
報告はまた、より長距離の魚雷と海上攻撃用トマホークミサイルを配備することを提唱した。これによって、海底防衛線が密集している地域外で潜水艦が敵艦を攻撃することが可能になる。
報告は、「潜水艦はクラウンジュエル(重要資産)であり、中国やロシアのような敵対国に対する作戦で決定的な効果をもたらすことが期待されている。しかし、音や現場での連携を攻撃作戦に使い始めない限り、米潜水艦部隊は、将来の対立が最も起こりそうな海域で拒否されるか、単に無力化される可能性がある」としている。