中国、ナノテクノロジー利用しバイオ・サイバー・電子戦兵器を強化-米報告

(2023年8月31日)

8月19日土曜日、中国で軍事訓練に参加する中国兵。2023. 中国国防省は、台湾の副大統領が米国に立ち寄った数日後、台湾軍が「分離主義者と外国勢力」の共謀に対する「厳重警告」として、台湾周辺での訓練を開始したと発表した。(CCTV via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Saturday, August 26, 2023

 中国軍は、高度な生物兵器と、ナノテクノロジーを利用した小型の電子機器を製造しており、これらは、将来の秘密戦争に使用される可能性がある―。最新の研究報告がこう警告した。

 報告は、公開情報を集め、分析・調査する「オープン・ソース・インテリジェンス(オシント)」のアナリスト3人が作成したもので、「中国の目に見えない武器庫の中には、さまざまな最新兵器が隠されている。これらは、中国共産党が非対称戦争を行う際に使用されることを特に想定したものであることは明らかだ。その中には、標的となる人々に合わせた生物・生化学・神経生物学兵器もある」としている。

 報告のタイトルは「科学の陰で-中国の目に見えないナノ兵器を解明する」で、今月に入って発表された。人民解放軍(PLA)は、微小なナノ兵器を開発しており、生物兵器の効果を高める高度な微細材料が使用されていると指摘している。

 報告によると、中国のバイオテクノロジーの開発が進み、軍事転用への新たな懸念が生じている。追跡困難な生物兵器など、遺伝子操作された病原体の製造に応用される可能性がある。

 さらにナノデバイス用の小型の電子機器やセンサーなどのナノテクノロジー兵器も開発が進められ、検知されずにデータを窃取したり、重要インフラを破壊したりすることを目指している。

 報告は、ナノロボットを使ってインフラ攻撃が行われれば、「停電、通信障害、金融の混乱を招き、国家の安全保障と安定に深刻な脅威をもたらす可能性がある」と指摘。

 「さらに、(人工知能を)ナノデバイスに取り入れることで、中国の軍隊は、リアルタイムで意思決定を行い、比類のない洗練さと予測不可能性を備えたサイバー攻撃を実行できる、自律型AI駆動ナノ兵器を作り出すことができる」と強調している。

 中国は長い間、このような能力を獲得することを狙ってきた。報告は2021年の中国の研究論文を引用しており、論文では、「分子通信」を使って、高度なネットワークを標的にした精密なサイバー攻撃をどのように行うかが説明されている。

 分子通信とは、分子のような小さなデバイスを液体や気体の中に放出し、受信機に指示を与えるナノテクノロジーだ。

 この論文を発表した中国の研究機関の一つ、上海交通大学について米政府は、PLAによる対米サイバー攻撃との関連を指摘している。

 その他には、光や電磁波を操作するためのナノ材料の利用の可能性が指摘されている。このような技術は、高度なステルス戦闘機、戦艦、軍用車両に使用される。

 中国のナノテクノロジーは、スパイ活動や軍事指揮統制のための大量のナノロボットなど自律型兵器にも使用される。

 報告によれば、「このような小型で強力な装置は、偵察、潜入、殺人などの任務のために兵器化される可能性がある」という。

 ナノ・サイバー複合生物兵器についても懸念が指摘されている。専門家らは、中国のハイブリッド兵器に使用されれば、コンピューターへの感染、通信網の攪乱、生物製剤の遠隔操作なども可能になると警告している。

 中国でのその他の研究としては、「ナノ粒子強化エネルギー兵器」がある。これによってレーザーや電磁パルスなどの指向性エネルギー兵器の威力を高める。報告は、これらの兵器は「より正確で壊滅的な攻撃」を生み出すように設計されていると警告している。

戦争の新たな領域

 この研究が公表される数日前、米国防総省が初の「生物防衛態勢の見直し(BPR)」を発表した。これによると、中国は生物学を「戦争の新たな領域」とみなしており、遺伝子工学、精密医療、脳科学技術を軍事目的に活用しているという。

 デボラ・ローゼンブラム米国防次官補(核・化学・生物防衛計画担当)は先週、生物兵器に応用される先端技術の脅威を提起した。

 ローゼンブラム氏は、生物兵器に関する最も深刻な脅威は中国とロシアであり、生物兵器計画に既存の技術、新たな技術が使用されることは大きな懸念事項だと述べた。

 ワシントンに本部を置くシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)主催の会議でローゼンブラム氏は、「あらゆる複雑で潜在的な生物学的脅威に備える姿勢を維持しなければならない」と述べた。

 ローゼンブラム氏は、生物学的脅威に対する防衛・軍事対策の改善を任務とする国防総省の新しい「生物防衛会議」のリーダーを務める。

 国防総省は、BPRの主な目的は、「中華人民共和国によってもたらされる多領域にわたる脅威の増大」からの国土防衛を改善することだとしている。

 中国外務省は、BPRの発表を受けて、米国が秘密裏に生物兵器を開発していると非難した。

 同省の王文斌報道官は最近、記者団に「バイオセキュリティーの脅威に関して言えば、米国は最も積極的で、バイオ軍事活動を行っている疑いがある」と語った。

 この報告は、「中国共産党(CCP)生物脅威イニシアチブ」と呼ばれるグループが作成し、L.J.イーズ、ライアン・クラーク、シャオシュー・ショーン・リンの3氏が執筆した。3氏とも軍事、防衛、情報機関での経験があり、ナノテクノロジーで中国が進歩すれば、パンデミック(感染症などの大流行)など、将来の公衆衛生上の危機の発生源を突き止めることがいっそう困難になる可能性があると指摘している。

 「中国共産党がSARS-CoV-2/COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックでの武漢ウイルス研究所の役割を隠蔽しようとする試みは失敗に終わったが、ナノテクノロジー・デリバリー・システムは将来の調査や特定の原因究明をより困難なものにするだろう」と報告書は述べている。

 中国の生物兵器研究は民間の研究機関内で行われているため、情報機関は、その脅威に関する詳細な情報を収集することが難しくなっている。

 報告が特に危険としているのは、中国によるナノテクノロジー医療の利用だ。この技術は、医学の進歩をもたらす一方で、生物兵器に悪用される可能性がある。

 「ナノスケールの薬物送達システムは、特定の個人または集団を標的として毒性のある薬剤を送達するように調整される可能性があり、そうなれば攻撃の発生源を突き止めることが困難になる」

 深セン先端技術研究所、国立ナノ科学技術センター、高エネルギー物理学研究所、昆明動物学研究所の研究者らからなる中国の研究チームは、新型コロナウイルスを捕捉することで感染の拡大を食い止めることができるとするナノ材料を開発した。

 報告によると、このナノ材料は特定のウイルスのスパイクタンパク質と結合し、感染プロセスを短縮する。詳細は「ネイチャー・ナノテクノロジー」誌に掲載された。

 しかし、このウイルス感染を阻止する技術は、中国軍でも使用可能だ。

 「ナノ材料は適応性が高く、検出もしにくいため、有害な薬剤を正確に、発見されることなく送達できるようになる可能性がある。世界のバイオセキュリティーに重大なリスクをもたらし、国際的な規制と協力の強化が必要だ」と報告書は述べている。

 神経剤を検出するために設計された別の中国のナノテクノロジーは、中国軍がより効率的で洗練された化学兵器を開発するために使用される可能性もある、と報告書は述べている。

 この検出技術を使えば、中国軍は化学的活性を阻害する化学剤を設計することができ、「標的とされた個人または集団の神経系に神経剤のような深刻な影響を与える」と報告書は述べている。

 「さらに、毒物にさらされた特定の個人や集団を特定し、追跡するためにこの検出システムが使われる可能性もあり、標的を絞った暗殺が容易になるかもしれない」

新たな戦争兵器?

 この技術は、防衛、民生どちらにも使用することができるが、攻撃的な軍事利用も否定はできない。

 中国軍は、遺伝子操作され、特定の毒性や薬剤耐性を持つ病原体を開発し、敵の軍や住民に対して的を絞った生物学的攻撃が可能になっているとみられていると報告書は述べている。

 米政府関係者は2020年5月にワシントン・タイムズ紙に、米情報機関は、中国が特定の民族を攻撃するための生物兵器の開発に取り組んでいるという情報を入手していると語っていた。

 国務省は、外国の武器合意順守に関する最新の年次報告書で、中国軍の医療施設での作業を基に、中国が細菌兵器に関する義務を履行していない可能性があると指摘した。

 さらに国務省は、中国の生物学的研究には細菌兵器に応用される可能性のある活動が含まれていると警告、中国は「リシンやボツリヌス毒素、また炭疽、コレラ、ペスト、野兎病の原因物質を兵器化したと報告されている」としている。

 他の米政府機関も、中国の生物兵器開発計画を阻止するための措置を講じている。

 ケンドラー商務次官補(輸出管理担当)の最近の議会証言によると、商務省は最近、中国が毒素兵器を製造しているのではないかという懸念から、合成生物学とゲノム編集技術に対する規制を強化した。

 ケンドラー氏は、国家情報長官室が今年初め、合成生物学とゲノム編集の進歩により、「検出、発生源の特定、治療をできなくする新型生物兵器の開発ができるようになる可能性がある」と報告した。

 中国はこの技術を利用して、特定の軍事的・地政学的目的を達成しようとする可能性がある。中国は「ナノテクノロジー主導の戦争を、米国とその同盟国に対する非対称戦争戦略の中核的要素と見なしている」と報告書は述べている。

 これらの研究プログラムは、「いちかばちかの」漠然としたものではなく、核心的な戦略的重点分野であり、近い将来、台湾のような現在の戦略的状況の中で利用されるように計画されている。

 台湾紛争のシナリオでは、敵の抵抗力を排除するために、ナノテクノロジーの運搬ツールを使って特定の兵器用細菌株が放出される地域に、PLAの部隊が予防接種を受けて配備される可能性がある、と報告書は述べている。

 中国侵略軍に対するその他の抵抗も、神経生物学的兵器によって無力化される可能性があり、さらにこれらの兵器によって、強い恐怖やその他の認知的な混乱が発生し、脅威に対応できなくなる可能性もある。

 その結果、PLAは台湾のような地域を完全に支配できるようになり、同時に米国の軍事介入を鈍らせることができる。

 報告は「このシナリオは、中国共産党の既存の研究プログラムとその明確な戦略目標に基づいて作られた」としている。

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