イスラエルがガザ攻撃 中国の台湾侵攻へ懸念高まる
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, October 11, 2023
米国の議会指導者と安全保障アナリストらによれば、アジア太平洋地域外で二つ目の紛争が発生したことで、この地域への西側の関心が弱まり、中国が台湾に対する軍事作戦を開始する可能性が高まるのではないかという懸念が高まっている。
台湾海峡の緊張は依然として高く、中国は台湾を数年以内に占領すると宣言している。
ウクライナへの米国の武器供与によって、中国による台湾攻撃を抑止するために必要な武器の備蓄が不足するようになるのではないかという懸念は、すでに複数の議員から出ていた。
二つ目の紛争が中東で勃発した。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザのハマスに対する地上攻撃を開始しようとしており、米国は主要同盟国であるイスラエルに兵器などの追加支援を行う必要が出てくる。
マイケル・マコール下院外交委員長(共和、テキサス州)は、米国の武器で台湾の防衛を強化することは、多面的な大国間競争において中国を抑止するための重要な要素だと述べた。
「(中国の習近平国家主席が)台湾侵攻の可能性に備えて軍備を整えている今、台湾の人々が必要とし-対価を支払った-武器を手に入れることは、平和と抑止力にとって極めて重要だ」とマコー氏は声明で述べた。
インド太平洋軍のスポークスマンであるカイル・レインズ海軍少佐は、今後も、抑止戦略とこの地域の自由と開放を維持する取り組みの一環として、この地域全体のリスクを評価していくと述べた。レインズ氏は電子メールで「われわれの評価は変わっておらず、同盟国やパートナーとともに警戒を続けている」と強調した。
議会はバイデン政権に対し、遅延している約200億㌦分の武器供与を含め、台湾への武器輸出を加速するよう求めている。
クリスティン・ウォーマス陸軍長官は9日、陸軍はイスラエルとウクライナの両国が必要としている軍需品の生産と武器の供与を支援するための追加予算を議会に求めると述べた。
下院中国共産党特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(ウィスコンシン州)は、ウクライナ危機の初期段階に米政府はロシアが侵攻しないと信じ、ソフトパワーだけでロシアを抑止しようとするなど「甘い考え」を持っていたと指摘。イランは現在、米国の関心を中東へと向けさせる新たな敵対国になっていると述べた。
ギャラガー氏は、これらのことから、中国の攻勢が強まる中、台湾への支援に関与していくことが必要だと主張した。
さらに同氏は、「日付変更線の西側でハードパワーを急増させなければ、インド太平洋に関して同じ過ちを繰り返す危険がある」と述べた。
より視野を広げれば、独裁国が連携して米国に対抗する枢軸の構図が見えてくる。中国がその中心で、ロシアのプーチン大統領がこれを支援し、イランがこの敵対的な連合への関与を強めている。
ギャラガー氏は、「その目的は単純で、米国の世界的リーダーとしての地位を破壊し、同盟国との協力関係を断ち切ることだ」と指摘した。
マコール氏は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮は、世界的な戦略的競争の中で、主権国家の境界線を引き直すために協調して行動していると述べた。
「ハマスや(レバノンのイスラム教シーア派組織)ヒズボラのようなイランが支援するテロリスト集団と連携して、自由と民主主義に対する地政学的な戦いで、各国を分断することはできない」
国防当局者は記者団に、国防総省はイスラエル軍への支援を急速に強化しており、防空ミサイル、弾薬などの軍事物資をイスラエルに送っていると語った。
米軍はイランが紛争に直接介入した場合に備えて、空母ジェラルド・フォード率いる打撃群を派遣、10日に地中海東部に到着した。打撃群には空母の攻撃・支援機8飛行隊、誘導ミサイル巡洋艦1隻、誘導ミサイル駆逐艦4隻が含まれる。
この当局者は、打撃群派遣は「イランに対する抑止力のシグナルだ」と述べた。
中国軍の前例
中国には、自国軍を使って混乱を引き起こし、世界中の関心を他の地域から逸らさせた前例がある。
1962年10月20日、中国軍はインド軍に対し、係争中の国境を越えて攻撃を開始し、インドとの衝突をエスカレートさせた。
この攻撃は、米ソ冷戦下で最も危険な核をめぐる対決の一つ、キューバ危機が始まった数日後のことだった。
安全保障専門家は、ウクライナとイスラエルの両方に対する米国の軍事支援は、将来の中国の台湾攻撃を抑止するための作戦を複雑にするとみている。
元太平洋艦隊情報部長で中国軍専門家のジム・ファネル元海軍大佐は、ハマスの攻撃後に武器の必要性が高まったこと、ウクライナ侵攻を受けてこの2年間、米国の軍備供給への要求がウクライナに集中したことを中国は注視していると述べた。
ファネル氏は「中国共産党はこれらのデータを使って、総合的な国力を分析する。米国が『民主主義陣営の武器庫』であり、これらの需要に十分に応えられていないことは、中国共産党のアナリストらが、台湾侵攻を成功へと導く一つの明確な要因と解釈する可能性が高い」と警告した。
国務省の元中国政策顧問マイルズ・ユー氏は、バイデン政権は中国による戦略的脅威から目を逸らすべきではないと述べた。
現在、ハドソン研究所中国センター所長のユー氏は、キューバ危機の前例を引き合いに出し、さらに、中国の国共内戦で毛沢東軍が権力を握りつつあった時、1948年から1949年にかけて行われた「ベルリン大空輸」によって、中国への米国の関心は薄れてしまったと指摘した。大空輸は「戦略的に関心を逸らすためのものであり、大きな効果があった」とユー氏は言う。
「台湾危機の今、中国共産党は最も重要なファクターだ。われわれは本当に重要な脅威に集中し、欧州や中東などの地域で起きている問題に気を取られないようにしなければならない」
元海兵隊大佐で、アジアでの豊富な経験を持つグラント・ニューシャム氏は、中国はイスラエル・ガザ紛争は自国に有利に働くと考えているはずだと語った。
同氏は、ウクライナへの支援によって、米国の軍事資源は消耗していると指摘。イスラエルとハマスとの間で戦闘が起き、これにはヒズボラとイランもかかわってくる可能性があり、兵器は枯渇し、関心も逸れることになると述べた。
「中国が攻めてくるとき」の著書があるニューシャム氏は「これらによって、米国のリソースと関心は失われる」と述べた。
同氏は、米軍幹部らはアジア太平洋地域の戦力強化を急ぐよう国防総省に求めているが、新たな中東での紛争によって、アジア太平洋地域での戦力強化の取り組みは複雑化すると言う。
ニューシャム氏は、バイデン政権はウクライナとイスラエルに政策を集中させているため、台湾攻撃の可能性に集中できなくなる可能性があると述べた。
また、米国民のイスラエルへの政治的支持は台湾への支持よりも強く、中国の指導者らは、台湾を攻撃しても、米国からそれほど強い支持を得られないと考えている可能性もある。