公立学校での性自認教育に多くが不快感-ピュー・リサーチ

(2024年2月29日)

2023年6月20日(火)、カリフォルニア州グレンデールのグレンデール統一学区本部の前で、学校でLGBTQ+の問題を子どもたちに触れさせることに反対する抗議者たちが集会。(AP Photo/Damian Dovarganes)

By Sean Salai – The Washington Times – Thursday, February 22, 2024

 トランスジェンダーや人種差別に関する公立学校の授業が近年、対立の火種となっているが、非営利調査会社ピュー・リサーチ・センターの調査によると、教師、生徒、成人のほとんどが、男の子が女の子になれるかどうかよりも、人種差別の方がより適切な授業のテーマだという意見で一致していることが明らかになった。

 ピューは22日、秋学期に数千人の成人、生徒、公立の幼稚園から高校までの教師を対象に実施した三つの全米調査を発表した。その結果、三つのグループすべてで、ほとんどの回答者が人種的不平等について学ぶことの重要性を強調したが、授業で性自認について議論することに難色を示した。

 調査対象となった教師のうち64%が「奴隷制の遺産が今日でも米国社会の黒人に影響を与えている」ことを学ぶべきだと答え、60%が人種差別や人種的不平等について生徒に学ばせないことに反対した。

 小学校教師の62%を含む半数の教師が、「人の性別は、出生時に割り当てられた性別とは異なりうる、または出生時に割り当てられた性別によって決定されうる」ことを授業で学ぶべきではないと答え、48%がLGBTQの授業を保護者が選択しないようにできることに賛成した。

 13~17歳の生徒のうち、授業でこのテーマに遭遇した生徒のうち、38%が学校で人種問題について学ぶことに抵抗がないと答え、29%がLGBTQ問題について学ぶことに抵抗がないと答えた。

 性自認については、約48%の生徒が学校では学びたくないと答え、生物学的性別が変わる可能性があるかどうかについて学びたいと答えたのはわずか4分の1だった。

 ピューの調査によると、米国の成人の54%が、親はLGBTQの授業を子供に受けさせるべきでないと答え、人種問題の授業については34%が子供に受けさせるべきでないと答えた。

 ピューのリサーチ部門アソシエイト・ディレクター、ジュリアナ・ホロウィッツ氏は、今回の調査によって、公立学校がどのようなテーマに取り組むべきかという国民的な議論に、「教師と10代の若者の声」が加わったと述べた。

 ホロウィッツ氏はワシントン・タイムズ紙に「人種差別とLGBTQの問題は、幼稚園から高校までの教育でのいわゆる文化戦争についての議論で、よくひとくくりにされるが、教師、10代の若者、一般の人々は、これらのテーマについて異なる見方をしている」と語った。

 同氏は、なぜ生徒、成人、教師が性的な問題よりも人種問題に寛容なのか、その理由を説明することはできなかった。調査ではこの点について「深く掘り下げていない」からだ。

 回答した教師のうち56%が、2022-2023年度の授業で、人種差別や人種的不平等の話題が「少なくとも時々」出たと答え、68%が性的指向や性自認の話題は「ほとんど出なかったか、全く出なかった」と答えた。

 一部の教育専門家は、この調査結果は、LGBTQの権利に関する論争よりも、人種差別や奴隷制の悪についての方が、親、子供、教師の間で道徳的に広く意見が一致していることを裏付けるものだと述べた。

 ペンシルベニア大学のジョナサン・ジマーマン教授(教育史)は、「ナチズムの敗北に始まり、公民権運動の時代まで、米国の文化では露骨な人種差別は批判を受けてきた。同性愛者やトランスジェンダーに対する差別については状況が違う」と述べた。

 また、この調査結果は、リベラル、保守の言説に関係なく、ほとんどの米国民がこの問題に対して抱いている考え方を反映しているという主張もある。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の人種的不平等を専門とするタイロン・ハワード教授(教育学)は、「これらの調査結果から学び、信頼できるデータに基づかない政治的言説によって、学校が不公平で不適切な影響を受けないようにすることが重要だ」と語った。

 保守系団体「独立した女性フォーラム」教育自由センターのバージニア・ジェントゥルズ所長は、この調査から、幼稚園から高校までの性自認教育に対する州の監督を強化すべきであることが分かると述べた。同氏は、ピューが調査した教師の3分の1が、保護者がそのような授業を拒否できるようにすることに反対していると指摘した。

 「教員になるための別の道を開くべきであり、そうすることで、教育大学や教員養成課程にいる進歩的な活動家の価値観ではなく、より広い社会を反映した教員を確保できるようにすべきだ」

 近年、各州の政治家らは、人種やジェンダーに関するリベラルな授業を禁止したり、義務付けたりする動きを見せている。

 テキサス州やフロリダ州のような保守的な州は、人種や性的問題は「議論が分かれるテーマ」として、授業を制限している。一方、カリフォルニア州のようなリベラルな州の教育当局は、全学年での授業を義務づけ、保護者からの法的異議を退けている。

 8月には、リベラルなメリーランド州のモンゴメリー郡公立学校で、LGBTQの本を取り上げた性的問題に関する授業を子供が受けなくていいようにすることを求めてイスラム教徒の親が提訴したが、連邦判事はこの訴えを退けた。

 ピューが調査した教師のうち41%がこのような議論は教師の仕事に「悪影響がある」と答え、71%が「教科を十分にコントロールできない」と答え、58%が「州政府の影響力が強すぎる」と答えた。

 連邦政府、地元の教育委員会、親の影響が強すぎると答えた人はさらに多かった。

 米教職員連盟のランディ・ワインガーテン会長は、ワシントン・タイムズに電子メールで寄せた声明の中で、州法で人種や性的問題の授業が制限されている保守的な州について、「過激派」と非難した。連盟はこのような法律に反対している。

 「これはひねくれたやり方であり、公立学校を混乱させ、不安定にし、公立学校の教師を攻撃することで、多元主義、多様性、寛容、生徒の学ぶ自由を損なわせようとしている」

 歴史的に黒人の多いテキサス州の公立大、プレーリービューA&M大学のベキータ・V・ペグラム教授(黒人史)は、学校は人種差別とLGBTQの性自認をパッケージで教える必要があると述べた。

 「授業で人種とジェンダーを関連付けて教えることは、帰属意識が存在する学習環境を作るために重要だ」

 一部の保守的な保護者団体は、この調査結果は学校のリベラルなカリキュラムへの反発を反映していると述べた。

 「教育に関与する米国の親たち」のシェリー・フュー会長は、「教師は子供に読み、書き、計算を教えることに集中すべきだ」と言う。

 「米国のための母たち」の創設者兼会長であるキンバリー・フレッチャー氏は、この調査結果は公立学校での「ジェンダーイデオロギーの影響に対する懸念の高まり」を反映していると述べた。

 ピューは、ランド・アメリカン・エデュケーター・パネルを通じて、10月17日~11月14日に幼稚園から高校までの教師2531人、9月26日~10月23日に13~17歳までの子供1453人、11月9日~16日に成人5029人を対象に調査を行った。

 調査結果を要約すると、共和党を支持する成人は民主党を支持する成人に比べ、親が学校で人種やジェンダーについての授業を受けなくていいようにすべきだと回答する傾向が「はるかに高い」とピューは指摘している。

 民主党支持の教師の85%が、奴隷制の遺産がいまだに米国の黒人の社会的地位に影響を及ぼしていることを学ぶべきだと答えた。共和党支持者では35%だった。

 また、民主党支持の教師の53%が、生徒は性自認が生物学的性別と異なる可能性があることを学ぶべきだと答え、共和党支持の教師ではわずか5%だった。

 この調査では、黒人の10代の若者の33%、白人の10代の若者の19%、ヒスパニック系の10代の若者の17%が、授業中に人種差別の話が出たときに「不快に感じた」と答えている。

 性自認については、10代の民主党支持者の38%、共和党支持者の22%が、授業でLGBTQ問題について議論することに違和感を感じないと答えた。

 教育研究者によると、このような分裂によって、公立学校の教師の確保と維持が難しくなり、ホームスクーリングや私立学校を検討する親が増加したという。

 バージニア大学のブレンダン・バータネン教授(教育学)は、「同レベルの教育を必要とする他の職業に比べて、教師の報酬や社会的地位が低いことを考えると、このような議論によって、教師になろうという人はさらに減少するのではないかと思う。多くの人は、もともと教師になりたかった、または、人の役に立ちたいという思いから教職を志すので、教師が仕事を楽しめなくなれば、教師という職業の魅力がさらに損なわれる可能性がある」と述べた。

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