性転換は人間の尊厳の侵害 バチカンが新文書

(2024年4月11日)

記者会見をする教理省長官のビクトル・マヌエル・フェルナンデス枢機卿

By Mark A. Kellner – The Washington Times – Monday, April 8, 2024

  ローマ教皇庁(バチカン)は8日、性転換手術と代理出産は人間の尊厳に対する重大な侵害であり、中絶や安楽死と同様、人間の生命に対する神の計画を否定する行為だと表明した。

 「ディグニタス・インフィニタ(Dignitas Infinita、無限の尊厳)」と題された20ページに及ぶ文書で教理省はさらに、安楽死と自殺幇助をも否定し、「人間の尊厳を侵害する特殊なケース」と呼んだ。

 同文書によれば、「貧困、移民の状況、女性に対する暴力、人身売買、戦争」も人間の尊厳を侵害するものであり、代理出産、ジェンダー理論、中絶、安楽死も同様に否定している。

 また、「どのような性的指向を持っていようと、すべての人が配慮をもって扱われるべきだ」とする一方で、人間の命は神からの不変の贈り物として扱われるべきであり、「ジェンダー理論が規定するように個人による自己決定を望むことは…自分自身を神にしようとする古くからの誘惑に譲歩することに等しい」としている。

 さらに「性転換はいかなるものであれ、原則として、受胎の瞬間に受けたその人固有の尊厳を脅かす危険がある」と文書は述べている。

 バチカン通信によると、教理省長官のビクトル・マヌエル・フェルナンデス枢機卿は記者会見で、教会は同性愛行為の非犯罪化を支持するとした上で、公教要理によれば、同性愛行為は「本質的に不道徳」であると述べた。また、バチカンはこの言葉を「もっと明確な形で表現することもできる」との考えを示した。

 文書は、安楽死は「急速に広まりつつあるが、苦しみで病人の尊厳が失われるわけではない。尊厳というものはそれ自体、本来備わっているものであり、不可分なものだ」と指摘、死にゆく人々への「適切な緩和ケア」は支持するが、自殺幇助は「それを求める人の尊厳への客観的な侵害行為」として反対するとしている。

 フランシスコ教皇は今年初め、バチカンに派遣されている外国外交官を前に代理出産への反対を表明しており、この文書で改めてその方針を明確にした。

 「代理出産は子供の尊厳を侵害する」。なぜなら、その子供には、「人為的に誘発された」ものではない、「完全な人としての」出自を持つ権利があるからだ。また、女性の尊厳も侵害する。なぜなら、女性が「他者の恣意的な利益や欲望に従属する単なる手段にされる」からだ。

 文書はまた、「非人道的な生活環境、恣意的な投獄、国外追放、奴隷制度、売春、女性と子供の売買、個人が自由で責任ある人間としてではなく、単なる利益の道具として扱われる劣悪な労働条件など、人間の尊厳に反するあらゆる犯罪」を非難している。

 貧困は「現代世界における最大の不正義の一つ」であり、戦争は常に「人間性の敗北」であると断じた。バチカンはまた、「移民の苦難」を非難、「家庭を築き、働き、自給する手段を持たないという理由で、その命が危険にさらされている」と訴えた。

 新文書は、教皇によって承認され、教理省が発表した。同性カップルやその他の「不規則な状況」にある人々への祝福に関する指針を表明し、物議を醸した12月の声明に続くものだ。

 祝福に関するこの教理省のこの声明は、世界の保守的な司教や司祭から反発を招いた。その数日後、フェルナンデス枢機卿は、司教は各教区でこの新しい慣行を排除できることを明らかにした。

 バチカンによると、新文書は、昨年末に行われた国連の世界人権宣言75周年に関連した文書を作成するための5年間の作業を経て作成されたという。

 文書は「人間の尊厳は、創造主の愛に由来するものであり、創造主はすべての人に、その姿に消えることのない特徴を刻み込まれた」としている。

 「すべての個人は、その存在の初めから、変更できない賜物として、他者に譲ることのできない固有の尊厳を持っている。しかし、その尊厳を表現し、完全に顕現させるか、あるいは曖昧にするかの選択は、それぞれの自由で責任ある決断にかかっている」

 文書は、「貧困、移民の状況、女性に対する暴力、人身売買、戦争」は人間の尊厳の問題と関連しており、代理出産、「ジェンダー理論」、中絶や安楽死の問題も同様としている。

 これまでのところ、文書に対する米国の主要カトリック信者の反応は鈍い。

 カリーヌ・ジャンピエール大統領報道官は、バチカンがLGBTQは「暴力や投獄から守られている」と述べたことに、政府は「喜んでいる」と述べた。しかし、文書がジェンダー理論を非難していることに対するバイデン大統領の反応について尋ねられると、「教会の内部方針について議論するのは大統領の仕事ではない」と回答を避けた。

 教皇の腹心であり、LGBTQのカトリック信者への支援活動を率いるカトリック司祭修道会「イエズス会」のジェームズ・マーティン司祭はX(旧ツイッター)で、教会がすべての人の人間としての尊厳を肯定したことを歓迎すると述べた。

 米カトリック司教協議会広報事務局のチエコ・ノグチ事務局長は、カトリック教会の米国の指導者らは新文書を歓迎すると述べた。

 ノグチ氏は電子メールで、「私たちは人間の尊厳に関するこの宣言を受け取ったことに感謝しており、米国の司教らは教会全体で、この宣言を研究し、考察することになる。この文書は、あらゆる状況において人間の尊厳を常に認識し、尊重し、保護することを重要視してきた教会の長い伝統と、それがどのように理解され、祝われ、私たちが今日直面しているさまざまな状況や課題に適用される必要があるかを強調している」

 一方、反対派グループ「選択のためのカトリック(Catholics for Choice)」のジェイミー・マンソン代表は、新文書は「私たちが経験してきたこと完全に無視している」と反発、LGBTQのカトリック信者は、教会の指導者がその信仰に対して「深い愛」を示さないことに「動揺している」と語った。

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