全米で先住民のチーム名・ロゴ復活の動き

(2024年5月29日)

2009年8月28日、マサチューセッツ州ランドーバーで行われたNFLフットボール・プレシーズン、ニューイングランド・ペイトリオッツ戦の試合開始前、フィールドに掲げられたワシントン・レッドスキンズのロゴ。ワシントンのNFLフランチャイズは月曜日、「レッドスキンズ 」の名称とインディアン・ヘッドのロゴを直ちに廃止すると発表した。(AP Photo/Nick Wass)

By Liam Griffin – The Washington Times – Tuesday, May 14, 2024

 ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のワシントン・コマンダースのヘッドコーチ、ダン・クイン氏が、2枚の羽根のイラストが描かれたTシャツを着て練習を行ったことが、ソーシャルメディアで憶測を呼んだ。旧チーム名「レッドスキンズ」復活をほのめかしているのではないかということだ。

 チームは2020年、近年の多くの大学や高校と同様、活動家やパートナー企業からの圧力を受けて、チーム名のレッドスキンズとアメリカ先住民に関連するあらゆる図像を廃止した。

 それ以来、チームは一貫して、古いチーム名の復活を示唆する発言を一蹴してきた。

 しかし全米では、多くのコミュニティーでキャンセルカルチャー(特定の団体や人物を糾弾し排除する運動)への反発が強まり、ポリティカルコレクトネス(政治的正当性)の名の下に廃止されたロゴやチーム名を取り戻そうという動きが出始めている。

 ペンシルベニア州のサザンヨーク郡教育委員会は1月、サスケハノック高校ウォリアーズのアメリカ先住民のロゴを復活させた。2020年に学校当局から廃止を命じられていた。

 ミシガン州サンダスキーでは昨年、地元高校のスポーツチーム「レッドスキンズ」の名称を変更した3人の教育委員がリコールされた。

 また、ミシガン州のカムデン・フロンティア教育委員会の2人の委員についても、リコール運動が進行中だ。ジェシー・クロウ、エミリー・モリソン両氏は、この学区のマスコット「レッドスキンズ」の廃止に投票したことで、住民の反発に遭っている。

 ユタ州のアイアン郡教育委員会は、2019年にシダー高校のチーム名「レッドメン」を廃止した。教育委員会は、11月に予定されている住民投票でこの名称を復活させるかどうかの是非を地域住民に問うことを決定した。

 アメリカ先住民系の団体ですら、これらのリベラルな主張に反発し、チーム名を変更させたり、斧や矢、頭飾りをモチーフにした画像を削除させたりするのは行き過ぎだと訴えている。

 ネイティブ・アメリカン・ガーディアン協会(NAGA)は、アメリカ先住民の画像とチーム名は残すべきであり、ロゴを廃止することは歴史を消し去ることだと主張している。

 「排除ではなく、教育しよう」がNAGAのスローガンだ。

 NAGAの代表者は1月にサザンヨーク郡でスライドショーを使って、教育委員会の委員らを説得して、「ウォリアーズ」のロゴの廃止をやめさせた。

 NAGAのエグゼクティブ・ディレクター、トニー・ヘンソン氏はワシントン・タイムズ紙に「変化が起き始めている。リベラルな主流メディアによって一方的な主張が押し付けられてきた。一般的に、先住民の90%は名称と画像を支持しているか、何の問題もないと考えている」と述べた。

 ヘンソン氏は広く支持されているとみているが、一部の学術研究やアメリカ先住民団体は、これらのロゴやマスコットは危険だと訴えている。

 全米アメリカ・インディアン会議は声明で、「各個人には自身の意見を表明する権利があるが、全体として見れば、先住民コミュニティーの意思ははっきりしている。先住民を『テーマにした』マスコットや、それらが招く非人間的なステレオタイプは消し去るべきだ。この問題に関して先住民コミュニティーがどのような立場にあるかを評価する際には、一部の個人の声ではなく、部族指導者たちの声に耳を傾けてほしい」と強調した。

 ミネソタ州は昨年、先住民のロゴを違法としたが、例外として州内の先住民部族が反対しなければ維持できるとした。12月15日が反対表明の期限だったが、ウォーロード高校の「ウォリアーズ」のニックネームへの反対はなかった。

 全米のコミュニティーやスポーツ界は、アメリカ先住民の表現について新たな議論に直面しているが、ワシントン・コマンダーズやワシントン地域の他の団体は、今のところ現状維持で一致している。

 バージニア州ウッドブリッジにあるガーフィールド高校は、チーム名について同様の懸念に直面。2021年、生徒や地域住民との協議の結果、「インディアンズ」から「レッド・ウルブズ」に変更した。同校の広報担当者によると、これ以上変更することはないという。

 ヘンソン氏は、学校やスポーツチームからの抵抗はあるが、NAGAはスポーツチームのロゴにアメリカ先住民の画像を入れるよう主張し続けると言う。

 「私たちは決してあきらめない。反対派は何十年もクリーブランド・インディアンズやワシントン・レッドスキンズを攻撃してきた。チーム名と画像を取り戻したい。彼らと協力したいし、スポーツという強力な基盤を使って先住民について教育することを支持してくれる地元の部族とも協力したい」

 この問題は最近、スティーブ・デインズ上院議員(共和、モンタナ州)によって、思いがけず議会で再浮上した。

 デインズ氏は、ワシントン・コマンダースがチームの歴史の一部である先住民をイメージさせるような名称や画像の主要部分を使用できないのなら、ワシントンにフットボール・スタジアムを新設することを可能にする法案を阻止すると述べた。

 デインズ氏は、チームのかつての酋長のロゴは、モンタナ州に実在した先住民、ジョン・ツー・ガンズ・ホワイト・カーフを題材にしたものであり、チームがその歴史を理解した上でいい成績を上げることを望んでいると述べた。

 「間違いなく、このロゴは先住民への敬意を題材とし、構想されたものだ。風刺画ではない。誇りと強さを描いたものだ。勇気と名誉を表現したものだ」

 ワシントン・コマンダースの広報担当者によると、チームは13日に、1970年代に旧ロゴをデザインしたモンタナ州ブラックフィート族のブラッキー・ウェッツェル氏の家族と面会し、チームへの貢献を称える方法について話し合ったという。

 ワシントン・コマンダースの新オーナー、ジョシュ・ハリス氏は、チームの旧名称を使いながら、子供のころこのチームを応援していたと語っている。

 それでもハリス氏は、レッドスキンズの名称を廃止させる時期が来たという事実がノスタルジーによって変わることはないと言う。

 ハリス氏は昨年9月にワシントン・ポスト紙に「ファンが以前の名前を愛する理由は理解できる。でも、ファンの中には旧名称に不快感を持っていた人もいた。スポーツは人々を一つにするもので、動揺をもたらすものではない。動揺は望まない」

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