日本に信教の自由強化を呼び掛け 東京で国際会議

(2024年8月26日)

2024年7月30日(火)、台湾の台北で開催された、台湾を訪問した最大の外国議員代表団の集まりで写真撮影に応じる台湾の頼清徳総統(中央)。列国議会同盟(Inter-Parliamentary Alliance on China、IPAC)による代表団は、民主主義国家が北京にどのように接近するかを懸念する35カ国の数百人の議員からなるグループである。頼総統は出席者に対し、北京がこの会議に出席しないよう議員たちに圧力をかけたとしても、彼らの参加は民主主義の団結の重要性を示していると語った。(AP=写真/デイク・カン)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Wednesday, August 21, 2024

 【東京】信教の自由という人権は「忘れ去られ」、欧米の民主主義諸国では、ジェンダー、表現の自由、集会の自由といった人権ばかりが激しく議論されている。

 これは、東京で7月に開催された「国際宗教自由(IRF)サミット・アジア」での中心的なメッセージだ。

 台湾の頼清徳総統はサミットへのビデオメッセージで、「今、民主主義はこれまで以上に後退し、浸食されている。人々は信仰を理由に迫害されている。われわれは自由と尊厳への責任を再確認しなければならない」と強調した。

 米国では政治的分断が進んでいるが、信教の自由は一致をもたらす。

 マイク・ポンペオ前国務長官は、「二つの異なる政党と思想がありながら、それぞれが国際的な信教の自由の重要性を強く支持していることがこれを物語っている。信仰は人間の尊厳にとって欠くことのできないものだ」と述べた。

 サミットの共同議長、カトリーナ・ラントス・スウェット氏は、「私たちは、『私は何者なのか』『なぜここにいるのか』『人生の目的は何なのか』といった深い問いを抱くように作られた唯一の生き物だ。膨大な量の研究結果から、宗教、良心、信条の自由を保護している国は、他の面でも正しく、民主主義であり、多元主義であることが分かっている。社会的緊張は発生しにくく、女性の社会的、経済的地位は高い」と指摘した。

 共同議長であり、国際宗教自由大使を務めたサム・ブラウンバック元上院議員は「(礼拝の自由は)一つの人権であり、権威主義体制はこれを尊重しない。一般的に信仰を持つ人々は忍耐力が強いため、権威主義体制はそれを嫌う」と述べた。

 「信教の自由は人権の根幹をなすものであり、これが守られていれば、集会や言論の自由は強化され、もっと多くの人々と力を合わせられるようになる」

 ブラウンバック氏は、政治的な違いを越えて実践される宗教が、信教の自由という旗印のもとに団結すれば、「文明の衝突」を回避し、大きな影響力を行使することができると訴えた。

 「世界の人々の80%は、何らかの信仰を持っていることを表明している。支持してくれる人々はたくさんいて、『応援している』と言っている」

 サミットには、仏教、キリスト教、イスラム教、神道などさまざまな宗教を信仰する人々が集まった。人権団体も数多く参加した。

 インド太平洋地域では、宗教的少数派に対する国家による攻撃が広がっている。イスラム教徒のロヒンギャ、チベットの仏教徒、北朝鮮の地下キリスト教徒、ウイグルのイスラム教徒などだ。

 スウェット氏は聴衆に、サミットの開催国である日本は、信教の自由を保障する上で「重要な役割を果たすことができる」と語った。

 経済大国である日本は、第2次世界大戦後、平和主義を貫いてきた。過去10年間、域内で脅威が高まるなか、日本は軍備を着実に強化し、オーストラリア、フィリピン、韓国など近隣の民主主義国家と緊密な関係を築いてきた。

 元国務省特命全権大使兼テロ対策調整官で、現在は大西洋評議会の非常勤上級研究員のネイサン・セールス氏は、「日本は非常に重要なパートナーだ。東アジア最大の民主主義国家であり、豊かな創造性を備えている。強い経済力を持ち、同じように道徳的な力を秘めている」と指摘した。

 「日本の政治家は、道徳的な力が最終的に日本にとって良いことだと理解するようになる。これを推進するには日本のビジョンとリーダーシップが必要だが、日本にとっても利益になる」

 ところが、東京都心のホテルで開催されたサミットに出席した日本の国会議員はわずか1人だった。日本のメディアもごくわずかだった。

 一部のアナリストは、日本が人権について積極的に発言するとは考えていない。

 参加者は日本で民主主義が確立されていることを称賛したが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する政界、メディアからの攻撃については重要な問題と知りながら、誰も口にしなかった。

宗教的スケープゴートか

 1950年代に韓国で設立された小さな教会から始まった家庭連合は、数十年かけて世界的な霊的運動へと発展し、ワシントン・タイムズ紙を含む何百もの企業からなる帝国を傘下に収めている。

 強力な反共であり、日本の信徒は保守的な与党・自民党の選挙運動を支援してきた。

 ところが、2022年、首相在職期間が戦後最長で、自民党の中心人物であった安倍晋三元首相が暗殺され、自民党と家庭連合の絆は引き裂かれた。

 暗殺犯は、安倍氏と家庭連合とのつながりに怒りを抱いていた。彼の母親が多額の寄付をしていたために破産に追い込まれたと主張している。あまり報道されていないが、彼の母親はまだ教会員であり、他の家族も教会の責任を問わないとする宣言文に署名し、寄付金の半分は母親に返還されている。

 いずれにしても、1978年から続く家庭連合の反共関連団体と自民党とのつながりが明らかになったことは、衝撃を与えた。

 日本の政治と宗教の結びつきは珍しいものではない。自民党の連立パートナーの公明党は仏教政党だ。岸田文雄首相は政権へのダメージを抑えようと、党員に家庭連合との関係を絶つよう要求した。

 左派勢力とメディアはこれに追い打ちをかけ、家庭連合と自民党との協力関係は消滅した。国会で声を上げている議員は浜田聡参議院議員1人だけだ。

 浜田氏は、「暗殺事件以来、(家庭連合は)強く批判されてきた。しかし、私が行った調査によれば、事件の主な原因は(家庭連合)ではなかった」としている。

 同氏は、家庭連合への攻撃は「不当」と指摘、「日本には700人の国会議員がいるが、この問題について発言しているのは私一人だけだ」と述べた。

 家庭連合は法律に違反していないが、解散命令請求を受け、司法手続きが進められている。つまり、解散になれば、法的地位と免税措置が取り消され、資金であれ何であれ、すべての財産と資産が没収されることになる。

 家庭連合は、このような制裁を受ける3例目となる可能性があるとみられている。最初の2例は、1995年に地下鉄で神経ガスをまいて数十人を殺害したオウム真理教と、悪魔祓いでカネをだまし取った明覚寺だ。

 日本の家庭連合は、約10万人の定期的な礼拝参加者と60万人の信徒を持つ。サミット後の会合で信徒らは、自分たちが背負っている十字架について語った。

 ヘイトスピーチ(憎悪発言)で名誉を汚され、信徒の車や家が被害を受けた。身体的脅迫を受けた信徒もいる。

 信徒の子供たちは学校でいじめられ、それによって一部の子供は宗教に反感を持つようになった。職場では同僚から疎まれるということも起きている。

 発展途上のアフリカ全土に学校を建設している教会関連の非政府組織、世界平和女性連盟も弾圧を受けている。日本の外務省からの賞は取り消され、女性連合が建設に協力した学校からそのロゴが取り除かれた。

 迫害は以前から続いてきた。ある教会は暴徒に襲撃され、2022年に国連人権委員会に提出された訴えによると、1980年代から4300人の教会員が信仰を捨てさせるために誘拐され、個人の意思に反して拘束された。

 警察はこれに対して、家庭内の問題として介入を拒否してきた。

 数百件の訴訟のうち、勝訴したのは2件だけだ。2015年に起こされた裁判では、日本の最高裁が、12年5カ月にわたって監禁したディプログラマーを訴えた後藤徹氏の主張を認める判決を下した。この判決後、信仰を奪うディプログラミングは行われなくなった。

 同様の事件は米国で1997年に違法とされ、ディプログラマーは誘拐罪で収監された。

 サミットの講演者は、家庭連合が政治家によってスケープゴートにされ、メディアによって迫害されてきたことを知っている。

 神道国際学会理事長の三宅善信氏は、「民主的権力の源泉である国会で、議員らが、特定の教団と結びつくことを恐れて、特定の新興宗教の社会的抹殺にさえも目をつぶってきたことは嘆かわしい。マスメディアは裁判官の役割を果たした」と述べた。

 ポンペオ氏は日本政府に、家庭連合が解散になれば、教会は閉鎖され、説教をすることもできなくなると撤回を求めた。

 「誰かが違法行為をしたというのであれば分かるが、…いかなる教会、信仰集団も解散させることは間違いであり、その国にとって有害だ。私の判断では、これは不適切だ。…指導者らが見直してくれることを祈る」

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