中国、対米戦に備え数百基の衛星を配備 宇宙軍が警告

(2024年9月25日)

新華社通信が公開した写真で、2024年8月6日火曜日、中国北部の山西省にある太原衛星発射センターから、新しい衛星群を搭載した改良型長征6号キャリアロケットが飛び立った。中国は、宇宙での存在感を主張する努力の一環として、18基の衛星を搭載したロケットを火曜日に打ち上げたと発表した。(Zheng Bin/Xinhua via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, September 17, 2024

 米宇宙軍の報告によると、中国軍は最近、970基以上の人工衛星を配備するなど、宇宙戦力を急速に増強しており、有事にはこれらの衛星が米空母、遠征軍、航空団への攻撃を支援する。

 報告書はまた、ロシアが米国や他の衛星を破壊する大規模な爆発を引き起こすことができる宇宙核兵器を開発していることを明らかにしている。

 宇宙脅威ファクトシートによれば、中国軍は3月から6月までに20基の衛星を打ち上げた。これらの衛星は、「米軍や同盟軍に対する長距離精密攻撃」を可能にするように設計されているという。

 中国人民解放軍(PLA)は、衛星攻撃ミサイル、電子ジャマー(通信妨害装置)、衛星を捕捉可能なロボット衛星、軌道上の宇宙航空機を使用して、米軍などの宇宙配備の情報システムを攻撃し、混乱させることができる。

 「情報からは、PLAが対宇宙作戦を、地域紛争への米国の軍事介入を抑止し、対抗する手段と見なしている可能性が高いことが分かる」と報告書は述べている。

 このところ、中国の戦争準備に対する懸念が高まっている。

 フランク・ケンドール空軍長官は16日、中国との衝突の可能性が高まっていると警告した。

 ケンドール氏は航空宇宙軍協会主催の会議で「太平洋で戦争が差し迫っていると言っているわけでも、避けられないと言っているわけでもない。そうではない。しかし、その可能性は高まっており、今後もその傾向が続くだろう」と述べた。

 また、中国は、対空能力とともに 「宇宙戦闘秩序」を強化していると主張した。

 宇宙軍の情報部門が作成したこの報告書は7月17日付になっている。

 報告書によれば、PLAは偵察衛星や通信衛星を破壊し、妨害し、「敵の目をくらまし、耳を聞こえなくする 」準備を進めているという。

 「中国はペーシングチャレンジ(重大なリスク)であり、米軍を追跡し標的にするための宇宙での能力を急速に向上させている」

 衛星破壊兵器(ASAT)は現在、低軌道、中軌道、静止軌道上にある米国と同盟国の衛星を攻撃することができる。米国の戦略的ミサイル警戒衛星や通信衛星の多くは、静止軌道に配備されている。

 この報告書を最初に公表した海軍戦争大学のアンドリュー・エリクソン教授(戦略)は、「この重要で権威のある報告書は、中国がいかに劇的かつ組織的に宇宙兵器と対宇宙兵器を構築してきたか、そしてロシアがいかに積極的に宇宙兵器を開発し、態勢を整えてきたかを示している」と指摘した。

 「気になるのは、中国が現在軌道上に保有している衛星の数であり、特に(情報・監視・偵察)衛星は、包括的で効果的な偵察・攻撃能力を組み合わせ、システムとして構築するための計画の一環だ」

 中国は2015年以来、何百もの衛星を打ち上げている。これは宇宙空間にある中国の衛星が560%増加したことを意味し、現在では970基と推定されている。そのうち490基は軍事情報・監視・偵察に使用されており、センサーには電気光学、マルチスペクトルレーダー、レーダー周波数技術が含まれている。

 3月に発表された宇宙脅威報告書では、中国の人工衛星の総数は950基で、そのうち470基が情報衛星であり、直近の20基が軍事衛星と指摘されている。

 昨年12月、PLAは地球から約3万6000キロ上空の静止軌道に「遥感41」を打ち上げた。リモートセンシングシステムを搭載し、「この地域の米軍と同盟軍を継続的に監視している」という。

 中国はまた、極秘で開発された米国の宇宙往還機XB37に似た能力を持つ3機の再利用可能な宇宙船を保有している。

 最初の2機は地球に帰還し、3機目は軌道上にある。「3機とも未確認物体を放出した」と報告書は述べている。

 中国は2007年に行った地上発射型衛星破壊ミサイルの実験で、低軌道上の気象衛星を爆破した。これによって、軌道上に2700個以上のデブリ(宇宙ごみ)が発生した。

 この実験で使用されたミサイルは、低軌道衛星を攻撃するための地上発射型ミサイルとして配備されており、報告書は「(PLAは)現在、このシステムの訓練を積極的に行っている」としている。

 「情報によると、中国はまた、3万6000キロまでの人工衛星を破壊できる(衛星破壊)兵器の開発を目指しているようだ」

 11年前に中国が打ち上げた弾道ミサイルは3万2000キロに達し、中国が高軌道での衛星破壊のための基本的能力を持っていることを示唆している。

 中国はまた、点検・修理衛星を武器として使用できることも示している。報告書はこれについて、2022年に廃棄された航法衛星「北斗」を衛星の墓場である高軌道に移動させた「石剣21号」を挙げている。宇宙軍は、このシステムは他の衛星を「捕捉」する能力がある可能性があると警告している。

 宇宙軍は、静止軌道上で、異常で大規模で急速な動きをする中国の衛星を複数、観測しており、これはさまざまな軍事的応用が可能な戦術を持っていることを示していると報告書は指摘している。

 中国軍はまた、衛星センサーを混乱させたり、損傷させたりできる地上配備型レーザー兵器も運用している。報告書によれば、2020年代半ばから後半にかけて、PLAは衛星の構造にダメージを与えることができる、より高出力のレーザーを配備する可能性があるという。

 PLAの対衛星ジャマーの訓練も演習で定期的に実施されている。

 「情報からは、PLAが、米軍の保護された超高周波システムを含む、さまざまな周波数(の衛星通信)を標的とするジャマーを開発している可能性があることが分かる」と報告書は指摘している。

 エリクソン氏は、米国とその同盟国は、中国の宇宙からの脅威に対する対抗策を持っているとしながらも、「中国が、世界で最も数多く使われている通常型の弾道ミサイルや巡航ミサイルを含む長距離精密攻撃システムを標的とするために不可欠な基本概念を欠いている可能性があるという主張は、もはや信用できない」と指摘した。

 報告書はロシアの宇宙兵器について、2021年のテストで軌道上の衛星を爆破し、1500個のデブリを発生させたミサイル「ヌードリ」など、いくつかのASATを特定している。

 「ロシアはまた、核兵器を搭載するように設計された新しい衛星を使った、強く懸念すべき(衛星破壊)能力を開発している」と報告書は指摘している。

 報告書によると、核兵器を搭載した衛星は、世界中の国や企業が運用するすべての衛星を脅かす可能性があり、その中には重要な宇宙通信、科学、気象、農業、商業、国家安全保障のための業務も含まれる。

 現在、軌道上にあるロシアの衛星破壊システムが、米国のシステムを脅かしている。その中には、5月に打ち上げられた、米国の衛星と同じ軌道上にある衛星破壊システムも含まれていると報告書は指摘している。

 報告書によると、ASATの試作機が2019年に別の米国の衛星を追尾した。

 ロシア軍は、戦闘機ミグ31から発射可能な空中発射型衛星破壊ミサイルも保有している。

 ロシアのレーザー兵器「ペレスベート」は、2018年から5つの戦略ミサイル師団に配備されている。衛星のセンサーの目をくらませることで、ロシアのミサイル配備を覆い隠すために使用される。報告書は、さらに強力なレーザーが2030年までに配備される可能性を指摘している。

 「ロシアは宇宙軍備管理交渉を支持しているものの、米国の宇宙への軍事的依存の脆弱性を利用するために、対宇宙システムを研究、開発、試験、配備している」と報告書は指摘している。

 エリクソン氏は、ロシアは「極めて攻撃的な」宇宙兵器の開発を行っており、宇宙軍備管理合意締結を真剣に考えているかどうかは疑わしいと述べた。

 また、宇宙核兵器の使用は「無差別なダモクレスの剣」であり、「世界中の基本的な社会的機能を依存しているすべての国や機関の衛星を危険にさらす」と訴えた。

 「ロシアのプーチン大統領が、このような方法で世界の重要な利益を危険にさらすことを決して許してはならない」

 宇宙軍は、この報告書に関するコメントの要請に応じなかった。

米新型砕氷船の建造計画に大幅な遅れ 北極圏で安全保障上のリスクに

(2024年12月20日)

バイデン大統領、退任控え米中技術協定を延長 議会は破棄を要求

(2024年12月19日)

アジアの米空軍基地は中国のミサイル攻撃に極めて脆弱-調査

(2024年12月16日)

中国ロケット軍、極超音速技術でミサイル戦力増強

(2024年12月15日)

習主席、バイデン氏に四つ「レッドライン」を通告

(2024年11月22日)

中国国営メディア、米民主主義を批判 マルクス主義推進の一環か

(2024年11月11日)

中国、最新鋭ステルス戦闘機公開へ 盗み出した米技術を利用

(2024年11月10日)

トランプ陣営が次期政権の人選開始 国防長官候補にポンペオ氏の名も

(2024年11月09日)

中国、新型陸上攻撃ミサイル潜水艦を配備へ

(2024年11月05日)

中国、認知戦に音響兵器 超低周波で敵の思考に影響も-米報告書

(2024年10月20日)
→その他のニュース