安全より「環境に優しい」航空管制目指すFAA

(2025年2月19日)

2017年3月16日、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の管制塔で働く管制官たち。(AP Photo/Seth Wenig, File)。

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Monday, February 17, 2025

 イーロン・マスク氏が米国の古くなった航空管制システムの更新に取り組むことを期待している航空専門家らは、バイデン政権が老朽化した地方空港の管制塔数十基を、より安価で安全なデジタル技術ではなく「環境に優しい」代替品で建て替えようとする動きに頭を痛めている。

 欧州では広く「リモートタワー」が使用されている。高い塔に赤外線カメラなどの先進機器が設置され、特に悪天候で視界が悪い場合に、より安全で安価で航空交通監視を提供することができる。

 連邦航空局(FAA)は、このリモートタワーの使用を禁止している。

 その代わり、有人の空港管制塔にこだわっている。バイデン大統領の下、FAAは全米に「環境に優しい」タワーを建設する大規模プロジェクトに数億ドルを割り当てた。

 2023年、FAAはマンハッタンにある「Practice for Architecture and Urbanism」社を選定し、全米各地の市営空港や小規模空港のうち、老朽化し建て替えが必要な場所に建設する最大31基の「持続可能な」タワーを設計させた。

 昨年着工が予定されていたプロジェクトの設計と早期建設のために5億ドルが用意された。

 ピート・ブティジェッジ運輸長官は2023年4月のプロジェクト発表時に「これらの新しい管制塔は、小規模な空港がより多くのフライトを、より持続的に、より手頃な価格で処理できるようになることを意味する。私は、このデザインが図面から全国の建設現場へと進み、わが国の空港がより多くの旅行者をサポートし、地域経済を活性化させ、低炭素航空の未来に備えるのを見るのを楽しみにしている」と述べた。

 受注した建築事務所は、「エコで、公平で、楽しいコミュニティーの構築に専念している」と表明。すべて電気で稼働する空港管制塔の設計計画を発表した。この構造物は、リサイクル鋼と「再生可能な大量の木材」を使用して建設され、地熱冷暖房、高度なエネルギー監視装置などのグリーンエネルギー機能を装備する予定だ。

 新しい管制塔が建設される空港は以下の通り:

– フロリダのキーウェスト国際空港(EYW)

– テキサス州のフォートワース国際空港(FTW)

– ノースイースト・フィラデルフィア空港(PNE)

– コネティカット州のハートフォード・ブレナード空港(KHFD)

– コロラド州のプエブロ・メモリアル空港(PUB)

– カリフォルニア州のモデスト市郡空港(MOD)

– デトロイトのコールマン・A・ヤング国際空港(DET)

 入札の課程でFAAは、「1世代に一度の機会」と指摘し、採用の条件として、1962年に16の象徴的な航空管制塔を設計した著名な建築家I.M.ペイのような手法に従うことを求めた。

 FAAの入札依頼書には、「既成概念にとらわれず、革新性と創造性を駆使して、エキサイティングなアイデアをわれわれの新しい現実に変えてほしい」と書かれていた。

 この動きに一部の航空専門家は困惑している。この近代的な管制塔のデザインは、より視覚的に刺激的で気候にも優しいかもしれないが、FAAが技術的アップグレードの実績が乏しい点は考慮に入れず、航空管制を近代化し、安全なものへと変えるチャンスを逃した指摘している。

 リーズン財団の交通政策ディレクター、ロバート・プール氏は、議会が承認しバイデン氏が署名した管制塔建設計画について、「政府関係者も議会委員会も誰も疑問に思わなかった。ただ計画を進めているだけだ。これらの場所はすべて、リモートタワーにとって理想的な場所だったはずだ。効果的で、安全で、安く建設できるはずだ」

 FAAはこの報道に対し、すぐにコメントを出さなかった。

 ショーン・ダフィー運輸長官は17日、トランプ大統領の政府効率化アドバイザーであるスペースX創業者のイーロン・マスク氏がバージニア州の航空交通管制システム指令センターを訪れ、「より近代的で安全な新しいシステムを作る方法を構想する」手助けをすると発表した。

マスク氏は、同僚の航空専門家スティーブン・D・バンビーク氏が2017年に執筆したリモートタワーに関する政策報告書の作成に関与したプール氏に相談すべきだろう。この論文では、リモートタワーを管制業務で使用した場合、赤外線やその他の高度な技術を使用することで、「夜間や雨、霧、雪の状況下でより良い監視」が可能になると報告している。経験豊富な管制官は、シミュレーションの際、従来の管制塔よりもリモートタワーを好んだ。

 報告書は「リモートタワーは、従来の管制塔に比べて安全性を向上させ、運用上の利点をもたらすことができる」と指摘。コストは、管制官が常駐する従来の管制塔を建設するよりも「かなり低い」としている。

 リモートタワーは、ノルウェー、ドイツ、ハンガリー、ベルギー、英国などの欧州各国とカナダの至る所で使用されている。

 2021年、ロンドン・シティ空港は、デジタルリモートタワーによって完全に制御される最初の主要国際空港となった。

 この技術を使用する航空管制官は、空港の外、時には何キロも離れた場所にある施設から、空港の高い塔に取り付けられた最新鋭のカメラやセンサー機器で航空交通を監視する。

 交通量が少ない小規模な空港の場合、管制官は、各空港にある高価な有人管制塔に代わって、いくつものデジタルタワーを使って、一つの建物から複数の空港を監視することができる。

 擁護派によれば、このシステムによって、米国の何十もの小規模空港や地方空港(その多くは地方にあり、有人管制塔がない場合もある)で、高度で安全な航空交通監視が可能になるという。

 バンビーク氏によれば、有人管制塔を補強するために米国の主要空港にデジタルタワーを設置し、混雑した滑走路や悪天候時の安全性をさらに高めることも可能だという。

 バンビーク氏は「問題は、FAA内部にこのコンセプトを受け入れさせる方法があるかどうかだ。理由はどうあれ、FAAの官僚機構内部は、このようなツールを受け入れることに消極的なようだ」と述べた。

 プール氏は、2023年2月にオースティン・バーグストローム国際空港で起きた衝突寸前の事故は、高度な機器を備えたデジタルタワーがあれば防げたかもしれないと語った。

 濃霧のため、管制塔にいた管制官は同じ滑走路に着陸するフェデックス機の進路上にいるサウスウェスト機を発見することができなかった。フェデックスのパイロットは最後の瞬間に飛行機を発見し、着陸を中止した。

 オースティンでのニアミスを受け、FAAはロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港を含む大規模空港に設置されている全地球測位システム(GPS)滑走路技術を地方空港に提供する計画を発表した。この装置は、滑走路上での衝突を防ぐために航空機の正確な位置を知らせることができる。

 小規模な空港では徐々に導入が進んでいる。

 FAAは、昨年オースティンと他の3つの中規模空港にこの技術を導入し、今年末までにさらに多くの空港に導入すると発表した。

 リモートタワーの建設や、有人管制塔の安全性を高めるためのデジタルタワーの設置については、米国のどの空港でも当面の計画はない。

 2022年と2023年、FAAはコロラド・ノーザン・リージョナル空港とバージニア州のリーズバーグ・エグゼクティブ空港でのリモートタワープロジェクトを停止した。

 FAAのウェブサイトによると、これらの管制塔は「現在、米国空域での使用が承認されていない」という。

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