習主席の隠し財産1500億円、汚職が「常態化」する中国―米情報機関

(2025年3月27日)

2025年3月5日(水)、中国・北京の人民大会堂で開かれた全国人民代表大会(NPC)開会式で拍手を送る中国の習近平国家主席。(AP Photo/Andy Wong)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, March 20, 2025

 中国の習近平国家主席が親族を通じて10億ドル以上の資産を築いていることが、20日に公表された米情報機関の報告書で明らかになった。

 報告書は、中国共産党の幹部500万人以上が10年以上にわたって腐敗防止に取り組んできたにもかかわらず、中国全政府高官の65%が賄賂や接待によって非公式な収入を得ていると指摘した。

 「腐敗は、中国共産党の手に権力が高度に集中した政治システム、中国共産党中心の法治概念、公務員に対する独立したチェック機能の欠如、限られた透明性によって発生したもので、中国に常に存在する特徴であり、中国にとっての課題である」

 報告書は、習氏の13年間にわたる国家主席としての汚職撲滅キャンペーンが失敗であったことを示唆している。汚職撲滅の取り組みは、蔓延する金融犯罪を根絶することよりもむしろ、政治的規律と厳格なイデオロギーを押し付けることに重点を置いており、党の統制を維持し、不正を隠すために利用されていると報告書は強調する。

 「中国における腐敗は、多くの場合、さまざまな種類の贈収賄や接待という形で金銭が絡んでおり、オープンソースの調査によって、一部の官僚やその家族が、その地位や人脈によって巨額の富を築いていることが明らかにされている」

 この報告書は、国家情報長官(DNI)による6ページの「中国共産党指導部の富と腐敗」で、2023年国防権限法に基づき議会が作成を要求した。この報告書は2023年12月に議会に提出される予定だったが、DNIが公開を延期していた。延期の理由は明らかにされていない。

 報告書は、国家情報中国局のデービッド・シャルマン局長が作成した。中国局は、分析グループ、DNI国家情報会議に属している。

 報告書の作成を義務付ける法案は、アンディ・オグルス下院議員(共和党、テネシー州)と、マルコ・ルビオ上院議員(当時、フロリダ州、現国務長官)が提出した。

 報告書は、「汚職が依然として蔓延していることを示唆している」にもかかわらず、中国の上級指導者の汚職の正確なレベルを特定することは困難としている。しかし、2012年に発表された調査では、温家宝首相(当時)と習近平次期国家主席(当時)の2人の上級指導者の家族が「かなりの富を築いている」ことが確認されていた。

 報告書によれば、習氏の兄弟、姪、甥は 「事業投資と不動産で10億ドル以上の資産を保有している」。

 温氏の一族は、母親、妻、息子、兄弟を通じて、2012年には少なくとも27億ドルを管理していた。

 習、温両氏による具体的な投資は、両氏に直接結びつくものではなかった。また、両氏による投資拡大への直接的な影響も確認されていない。

 「しかし、高い地位にあることで、特権的な情報へのアクセスが可能になり、政治的権力を持つ人物とのつながりにより、民間企業や国有企業の活動が一族の持ち株に有利に働いた可能性がある」と報告書は指摘している。

 大規模な党の腐敗が報道されたことを受けて中国は、外部の研究者が情報を入手できないよう、統制を強化した。報告書によると、習氏は2012年に政権を握った際、一族で財産を管理する者たちに持ち株の売却を促した可能性があるという。

 報告書は「しかし、業界の調査によると、2024年現在、習氏一族は数百万ドル規模の事業と金融資産を保有している」と指摘している。

 指導部の中核グループである共産党中央委員会の幹部の汚職には、さまざまな金融資産やプロジェクトを監督する幹部が関与しており、1800万ドル以上の賄賂を受け取った元科学技術担当党幹部の陳剛氏もその一人だ。

 4月には、 証券監視委員会(CRSC)技術監督局の元局長、姚前氏が、中国中央銀行のデジタル通貨プロジェクトに絡む汚職に関与していたことが明らかになった。人民解放軍の高位の将校の汚職も発覚した。「昇進に見合った報酬を支払う文化」の結果だ。

 習氏は2024年の演説で特に、軍隊内の腐敗や反対意見の問題に触れ、「銃は常に党に忠実で頼りになる者の手に握られていなければならない」と述べた。

 中国大使館の報道官にコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。また、米国の中国ウオッチャーの中には、報告書は中国での官僚の腐敗の全容を把握できていないと指摘する者もいる。

 中国専門家で元議会補佐官のポール・バーコウィッツ氏は、「2年半かけて作成したこの7ページの報告書は稚拙で、2022年12月に法律で作成を要求したルビオ国務長官、それを公表した(トゥルシー・)ギャバード国家情報長官、わが国を守るためにこの報告を必要としたトランプ大統領、資金を提供した国民に対する侮辱だ」と述べた。

 バーコウィッツ氏は、、情報機関には中国指導者の財産について徹底的な説明をする十分な時間が与えられていたにもかかわらず、それをしなかったと非難した。

 中国の指導者らは、違法薬物フェンタニルによって何百万人もの米国民を殺害してきた。

 中央軍事委員会の委員長でもある習氏は、軍に汚職が蔓延することで、人民解放軍の戦闘能力が低下することを恐れているという。2027年に台湾統一へ武力衝突が発生する可能性があり、そのために備えなければならないからだ。汚職で更迭された中国軍幹部には、2023年の李尚福国防相とその前任者、ロケット軍司令官、その他少なくとも9人の現・元ロケット軍幹部が含まれる。

 昨年は、中央軍事委員会政治工作部部長で中国軍内の政治的忠誠を担当する苗華海軍上将が汚職で解雇された。

 「党紀違反で告発された李、苗両氏は、習近平氏に近いとみられており、忠誠心と実効性に関する中国共産党の懸念の深刻さ(特に人民解放軍内)と、政権の腐敗の規模の大きさを示している」と報告書は指摘している。

 これは、中国指導部と中国共産党の腐敗というデリケートなテーマに関する、米国初の公式報告書だ。ある中国大使館関係者は、この報告書を破棄するよう議会に働きかけ、失敗に終わったとある議会スタッフは語った。

 報告はまた、習氏と新たな直接外交関係を築こうとするトランプ大統領の取り組みを揺るがしかねない。米中関係は、貿易、台湾、南シナ海の支配など多くの面で問題を抱えている。

 トランプ氏は先週、習氏と会談することを明らかにした。しかしルビオ氏は今週、会談の日程は決まっていないと述べた。

腐敗巡る報道

 ニューヨーク・タイムズとブルームバーグは、2010年代初頭に習氏と温氏の隠し財産について報道し、中国政府から記者らへの嫌がらせが起きた。2016年、「パナマ文書」として知られる1100万件以上の法律・財務記録の流出により、中国の腐敗に関する情報がさらに増えた。

 この文書によって、中国政府の主要な一族がオフショア企業を使って巨額の資金を隠している証拠が明らかになった。

 習氏の資産10億ドルとの関連は、彼の隠し財産に関するこれまでの推定より6億ドル以上多い。

 ワシントンタイムズ紙が6月に初めて公表した議会調査局(CRS)の報告書によると、習氏は少なくとも3億7600万ドルの株式を保有しており、これには3億1100万ドル以上に相当するレアアース鉱石会社の間接的な18%の株式と、ハイテク企業の株式2020万ドルが含まれている。

 「中国共産党は、政府高官に資産公開を義務付けていない。中国共産党と中国政府はメディアを統制しており、トップやその親族の富や汚職に関する民間での報道、議論は、(中国の)メディアには登場しないか、すぐに削除されるようになっている」とCRSの報告書は述べている。

 DNIの報告書に先立って作成されたこの報告書は、中国での腐敗を、アクセスマネー、スピードマネー(手続きを迅速にするなどのための賄賂)、重大窃盗、軽微窃盗の4つに分類している。

 アクセスマネーとは、資金調達、土地提供、独占権、調達契約、税制優遇措置などの特権を得るために、党の有力者に賄賂を送ることだ。報告書によると、中国では、企業家が党や政府の幹部に賄賂を送ることがよくある。

 CRSの調査によると、公表されている習氏の推定隠し財産は7億720万ドルで、妻の彭麗媛氏と娘の習明沢氏を含む親族に分散している。資産の大半は習氏の長姉、斉橋橋氏とその夫、鄧家貴氏、娘の張雁楠氏が所有している。

 ブルームバーグは2015年、不動産とエンターテインメントの帝国、大連万達グループを率い、政界にパイプを持つ中国の大物、王健林氏をターゲットにした汚職容疑について調査している。

 後にニューヨーク・タイムズは、斉氏と鄧氏は大連万達への初期の投資家であり、2009年に2890万ドルで取得した株式は、2015年までに2億4000万ドルに上昇したと報じた。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは2019年、習氏のいとこでオーストラリア国籍のミン・チャイ氏も汚職に関係していると報じた。チャイ氏の正体は、習氏の母親である斉心氏の弟、チー・ルイシン氏だという。チャイ氏は組織犯罪、マネーロンダリング、中国の影響工作との関連でオーストラリア警察の捜査を受けた。

 2019年の他の報道では、ドイツのドイツ銀行の幹部が、中国共産党幹部への高額な贈答品、党幹部の親族の雇用、党幹部の事業への投資を通じて、中国で利益を得ていたことが明らかになった。

 この汚職には、1989~2002年まで中国の国家主席を務めた江沢民元中国共産党総書記、2012~2017年まで7人からなる政治局常務委員を務めた王岐山氏、温氏が関与していた。

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