大学で人種別卒業式廃止「分断深める」 トランプ政権の多様性排除受け

2024年1月2日火曜日、マサチューセッツ州ケンブリッジで、ハーバード大学キャンパスの門をくぐる通行人。ハーバード大学のクローディン・ゲイ学長は、盗作疑惑や議会公聴会での証言に対する批判の中、学内でユダヤ人虐殺を呼びかけることは学内の行動指針に反すると明確に言えなかったとして辞任した。(AP Photo/Steven Senne)
By Sean Salai – The Washington Times – Tuesday, May 20, 2025
連邦・州政府が「多様性、公平性、包括性(DEI)」への取り組みを禁止する中、一部の大学が公式な卒業式とは別に人種、性別、収入ごとに行っている「アフィニティー卒業式」を中止した。
アリゾナ州のマリコパ・コミュニティー・カレッジやハーバードなどの大学は、2025年の卒業生を対象に、数十年来のアフィニティー卒業式を廃止した。ハーバード大学は先月、トランプ大統領のDEIプログラム禁止令に違反したとして教育省が助成金を取り消すと警告したことを受けて、多様性オフィスの名称を変更し、アフィニティー卒業式への予算を停止した。
1970年代に黒人学生から始まり、非正規移民や「ピリピンクス」(リベラル派に好まれているフィリピン人の性別にとらわれない呼称)を含むまでに成長したこの式典を中止するのは、今年の卒業式シーズンが初めてとなる。
アフィニティー卒業式を批判してきたコーネル大学のウィリアム・ジェイコブソン法学教授は「学校主催の人種別卒業式は、法的・財政的コストがかさむにつれて衰退していくと思う。人種で生徒を分けることは、まさに隔離そのものだ」と述べた。
ジェイコブソン氏は、学校主催のアフィニティー卒業式は、理論的には全員が出席できるものの、宣伝や実施の過程で参加者を選別しており、公民権法に違反する可能性があると述べた。
アフィニティー卒業式は公式の卒業式に代わるものではないが、講演者、ローブなど、通常の卒業式と同様の形式で行われる。
バイデン政権がこの卒業式を承認したことで、高等教育でのアフィニティー卒業式は倍増した。2023年6月に最高裁が大学入学での人種に基づく差別是正措置を違憲とした後、最初の卒業式シーズンとなった昨年、アフィニティー卒業式を採用する大学が増加した。
トランプ氏はその逆のことをした。アフィニティー卒業式の手配をするDEIオフィスを閉鎖する大統領令を出した。
ホワイトハウスの報道官はワシントン・タイムズに「トランプ大統領は、連邦政府のDEIを廃止し、機会均等を守り、学校の差別的な入学指針を廃止させると約束し、それを実行した。すべての男女は、勤勉さ、個人の自発性、能力でどこまでも行ける機会を持つべきだ。米国では、能力、根性、決断力こそが強みとなる」と語った。
共和党が支配的な州では、大統領令を立法化しようという動きが出ている。先月、ユタ州とケンタッキー州の議会がDEI支出禁止を可決し、公立大学はアフィニティーイベントの中止を余儀なくされた。
権利擁護団体「プロジェクト・レインボー・ユタ」は、ソルトレーク・コミュニティー・カレッジ、ユタ大学、ウェーバー州立大学のLGBTQの学生が学外で「ラベンダー卒業式」を開催するのを支援した。
ケンタッキー州では、公立のルイビル大学と私立のベラミン大学の学生が、地元のカレッジと合同で教会で黒人卒業祝賀会を開催した。公立モアヘッド州立大学の学生も同様に、大学からの支援なしでLGBTQの祝賀会を開催した。
サンディエゴ大学の法学教授で、米公民権委員会の独立委員でもあるゲイル・ヘリオット氏は、「大学が特定の人種や民族グループのためにプログラムを開催し、他のグループのために開催しないのは問題だ。その一方で、大学の資源を利用せず、学生が独自のイベントを開催することを妨げる法律はない」と述べた。
政治的圧力に抵抗している大学は他にもある。
ワシントンのジョージタウン大学は、アフィニティー卒業式を推進している。アメリカン大学は、アフィニティー卒業式のウェブページの名称を「コミュニティー卒業式」に変更し、一般向けのウェブサイトからアフィニティー卒業式に関する情報を削除した。
擁護者らは、アフィニティー卒業式は「社会から疎外されたアイデンティティー」が自分たちの文化を自由に表現することを可能にする場だと言う。彼らは、この集まりは任意であり、誰にでも開かれていると主張している。
ワシントンを拠点とするDEIコンサルタントであり、アマゾン・プライム・ビデオのトーク番組「トゥルーシング」の司会者でもあるランディ・ブライアント氏は、「黒人向けの式典は、大規模な全体式典に加えて、より親密で、包容的で、文化を肯定する場を提供している」と語った。
黒人であるブライアント氏は、学校の支援がなくても「式典がなくなることはないだろう」と予測した。
「黒人は常に、息をし、安心でき、人種差別社会での生活から解放される空間を自分たちで作り出してきた」
一部の保守派は同じ意見を持ち、トランプ氏が彼らを完全に止めることはできないと指摘した。
保守系の全国学識者協会の会長で、私立ボストン大学の元副学長であるピーター・ウッド氏は「大学は禁止することはできないかもしれないが、思いとどまらせることはできるし、そうすべきだ。このような隔離された祭典は人種間の分断を強調するものであり、米国の高等教育で分裂的な役割を果たしている」