トランプ氏にノーベル平和賞を授与すべきか

(2025年7月17日)

2025年7月9日水曜日、ワシントンのホワイトハウスのステート・ダイニングルームで、アフリカの指導者たちとの昼食会でスピーチするドナルド・トランプ大統領。(AP Photo/Evan Vucci)

By Mallory Wilson and Jeff Mordock – The Washington Times – Saturday,July 12, 2025

 イスラエルのベンベンヤミン・ネタニヤフ首相を含む少なくとも4人が今年に入り、トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦した。

 トランプ氏は自分がその賞に値すると考えており、そのことを公言することをためらわない。しかし、自身はこの国際的な栄誉を受けることはないとも思っている。

 トランプ氏は先月、SNSに「私が何をやってもノーベル平和賞はもらえない」と投稿した。

 1月の就任演説でトランプ氏は、平和の使者、団結の象徴となることを約束した。ロシア・ウクライナ戦争の終結、イランとの核合意の成立、イスラエル・ハマスの衝突の解決を誓っている。

 2020年、イスラエルとペルシャ湾岸諸国との関係を正常化する「アブラハム合意」を締結させた。トランプ氏は、これらの成果のどれか一つでも平和賞に値すると主張している。

 「私は4回か5回は受賞すべきだった」とトランプ氏は述べている。

 トランプ氏は長年、受賞を望む一方で、他の受賞者の受賞理由を疑問視してきた。特に身近な受賞者は、バラク・オバマ元大統領だ。

 トランプ氏は昨年10月、再選キャンペーン中に「もし私が『オバマ』という名前だったら、10秒でノーベル賞を授与されていただろう。彼はノーベル賞を受賞した。彼は、なぜその賞を授与されたのかさえ知らなかった。いいか。彼は選挙に勝った。私も勝った。彼は選挙に勝って、ノーベル賞授与が発表された」と不満をぶつけた。

 ノーベル委員会は、オバマ氏が就任から9カ月もたたない2009年10月9日、「国際外交と国民間の協力強化に向けた並外れた努力」を理由に、オバマ氏にノーベル賞を授与した。委員会は、気候変動対策と核拡散防止にオバマ氏が取り組んでいることも指摘した。

 在任中にノーベル平和賞を受賞した米大統領は、オバマ氏以外では2人だけだ。セオドア・ルーズベルト大統領は、日本とロシア帝国の戦争集結への取り組みが評価され、1906年に受賞。ウィルソン大統領は、第1次世界大戦の終結後に、国連の前身である国際連盟の設立を支援した功績が認められ、1919年に受賞した。

 カーター大統領は、退任後20年以上たった2002年に、数十年にわたる民主主義と人権の促進、紛争の調停の功績が認められ、受賞した。

 大統領史研究家のクレイグ・シャーリー氏は、トランプ氏の業績はウィルソン氏やオバマ氏が受賞したときを上回っていると述べている。

 同氏は、国際連盟はそれほど強力な組織ではなかったし、米国は、国家主権に関する懸念から上院が拒否したため、加盟しなかったと述べている。また、オバマ氏は大統領就任後間もなく、具体的な業績がほとんどないままこの賞を受賞したと指摘している。

 シャーリー氏は「オバマ氏は、オバマ氏であることで受賞した」と述べた。

 保守派もリベラル派も、オバマ氏の受賞を批判した。ニューヨーク・タイムズ紙のリベラル派コラムニスト、ニコラス・クリストフ氏でさえ、この受賞を「時期尚早」と評した。

 オバマ氏が受賞した当時、ノーベル委員会の事務局長を務めていたゲイル・ルンデスタッド氏は、後にオバマ氏への授与を後悔していると述べた。彼は、オバマ氏自身も受賞に驚いていたと述べ、論争があるため式典を欠席するかどうかを議論したことを明かした。

 ルンデスタッド氏は2015年にAP通信に、「オバマ氏の支持者の多くも、この賞は間違いだったと思っていた。その意味では、委員会は期待していた成果を挙げられなかった」と述べていた。

 シャーリー氏は、ルーズベルト氏の日露戦争を終結させるための交渉がノーベル平和賞に値するものであったことは認めている。

 賭けサイト「オッズチェッカー」では、トランプ氏がアレクセイ・ナワリヌイ氏の未亡人であるユリア・ナワリナヤ氏に次ぐ第2位の候補となっている。ナワリヌイ氏は数十年にわたりロシアのプーチン大統領を批判してきた人物で、2024年2月に獄中で死亡した。

 同サイトでは、トランプ氏の受賞の見込みは約32%、ナワリナヤ氏がほぼ35%となっている。トランプ氏に続く候補には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、国連のアントニオ・グテレス事務総長、気候変動活動家のグレタ・トゥンベリ氏などが含まれる。

 シャーリー氏は、トランプ氏がノーベル平和賞を受賞しないのは、選考委員会の保守派へのバイアスのためだと指摘した。同氏は、委員会が適任者を回避した歴史上最大の事例として、第2次世界大戦後の日本の占領と再建を指揮したダグラス・マッカーサー元帥と冷戦を終結させたレーガン大統領を挙げ、彼らの保守的な立場がその原因だったとしている。ノーベル平和賞を受賞した4人の米大統領のうち、3人は民主党だった。

 「ダグラス・マッカーサーほど平和賞に値する人物はいないのに、保守派だったため無視された。トランプ氏の功績により、イスラエルに5つの米大使館が設置された。アブラハム合意を交わし、インドとパキスタンの戦争を阻止した」

 多数の推薦にもかかわらず、一部の専門家はトランプ氏がこの賞に値しないと主張している。彼らは、トランプ氏がイスラエルとハマスの紛争やロシアとウクライナの戦争を解決するための合意を成立させられなかった点を指摘している。また、パレスチナ自治区ガザの人道危機を無視し、イランの核施設への空爆で命を奪ったと批判している。

 5人の研究者が非営利ニュースサイト「ザ・カンバセーション」に投稿した記事で、トランプ氏にこの栄誉を授与すべきでないと主張した。

 オーストラリアのRMIT大学教授エマ・ショートイス氏は、「(トランプ氏は)米市民に対して軍を動員し…伝統的な同盟国を貿易戦争や併合で脅かしている」ため、受賞に値しないと指摘した。また、トランプ氏の国際開発局(USAID)の予算削減が、2030年までに1400万人(そのうち450万人は子供)の死亡を招くと主張した。

 「トランプ氏の恥ずべき名誉欲を甘やかすことは、一時的に彼をなだめるかもしれない。しかし、それはノーベル平和賞の信頼性を完全に失わせると同時に、トランプ氏の国際法秩序の破壊を支持することになる」

 ノーベル平和賞は1901年に初めて授与された。アルフレッド・ノーベルの遺志によると、この賞は「国家間の友好促進、常備軍の廃止または削減、平和会議の開催と促進に最も貢献した人物」に授与される。

 以来、111個人と31団体が受賞し、そのうち一部は複数回受賞している。

 2025年の候補者推薦期間は1月に締め切られ、ノーベル賞のウェブサイトによると、受賞者の候補者リストを作成中という。委員会は338の候補者を受け付けた。うち個人は244人、団体は94団体。

 10月10日にノルウェーのノーベル研究所で発表される予定だ。

 ネタニヤフ氏は先週、トランプ氏を賞の候補者として推薦したと発表した。

 ネタニヤフ氏はノーベル委員会への書簡で「彼は現在、国と地域で次々と平和を築いている」と強調、その内容をオンラインで共有した。

 パキスタンは6月、トランプ氏の「最近のインド・パキスタン危機における決定的な外交的介入と重要なリーダーシップ」をたたえるため同賞に推薦したと発表した。しかしパキスタンはその翌日、米国がイランの核施設を空爆したことを非難した。

 パキスタンは、高関税を回避するためにトランプ政権との貿易協定交渉に参加している多くの国の一つでもある。

 バディ・カーター下院議員(共和党、ジョージア州)は、トランプ氏を「イスラエルとイランの停戦仲介における歴史的な役割」と「イランの核兵器取得阻止」を理由に推薦した。

 ダレル・アイサ下院議員(カリフォルニア州)とクラウディア・テニー下院議員(ニューヨーク州)もトランプ氏を推薦した。

 これらの推薦のほとんどは期限後に提出されたが、イスラエル出身で、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の法学教授アナト・アロンベック氏は、期限前に推薦したという。

 同氏は、推薦理由として、トランプ氏のガザの人質解放への取り組みに加え、「反ユダヤ主義に断固として反対し、世界でも最も不安定な地域に安定をもたらす歴史的な合意を促進した」点を挙げている。

 ウクライナの政治家オレクサンドル・メレシュコ氏は、トランプ氏の「世界平和への多大な貢献」を理由に昨年11月に推薦したことを明らかにした。しかし、今年6月に推薦を撤回した。その理由として、トランプ氏がロシアとウクライナの間で平和を確立できるとは思えなくなったことを挙げた。

 トランプ氏は最初の任期中、フィンランドの欧州議会議員、オーストラリアの教授グループ、ノルウェーの議員、日本の安倍晋三元首相から推薦を受けていた。

 トランプ氏に平和賞を授与するよう求めるかどうかは、政権への姿勢をあぶりだす試金石のようになっている。外国の指導者や国内の支持者は、これがトランプ氏の注意を引き付ける確実な方法であることを知っている。

 ネタニヤフ氏はワシントン訪問中に、ノーベル賞委員会に送った手紙をトランプ氏に見せた。

 アフリカ5カ国の指導者は9日のホワイトハウスでの会合で、トランプ氏推薦への支持を表明した。

 ガボンのブリス・オリギ・ヌゲマ大統領は、「彼は今、これまで平和が実現しなかった地域に平和を取り戻そうとしている。だから、ノーベル平和賞に値すると思う」と述べました。

 ヌゲマ氏は、トランプ氏がコンゴ(旧ザイール)とルワンダの間の和平合意を仲介したことで、中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)の安定化に貢献したと述べた。

 セネガルのバシロウ・ディオメイ・フェイ大統領は、トランプ氏は受賞に値する人物だと述べた。

 トランプ氏の政敵は、茶番だと反発している。

 オバマ元大統領の上級顧問を務めたデービッド・アクセルロッド氏はSNSに「ネタニヤフ氏、プーチン氏、スルタンや王子たちは全員、地球上で最も簡単なパズルを解いただけだ。トランプ氏の場合、機嫌を取り、持ち上げれば、何でも手に入れられる」と投稿した。

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