中国、5年以内に核弾頭1500発 米露と同水準に 次期空軍参謀総長

2025年9月3日(水)、北京の天安門広場で行われた日本第二次世界大戦降伏80周年記念軍事パレードに、DF-5C液体燃料大陸間戦略核ミサイルが参加した。(AP通信/アンディ・ウォン撮影)
By Bill Gertz – The Washington Times – Friday, October 10, 2025
次期空軍参謀総長に指名されているケネス・ウィルズバック空軍大将は、中国の戦略的戦力増強が加速しており、国防総省は中国軍が5年以内に1500発の核弾頭を有すると推定していると述べた。
ウィルズバック氏は、指名公聴会で公開された上院軍事委員会の質問への回答の中で、中国の今後の核弾頭増強に関する新たな推定値を明らかにした。同氏は中国の核・ミサイル脅威が増大していると警告した。
中国の「核戦力の近代化と拡大によって、米本土を射程に収める長距離兵器によるわが国本土への攻撃能力は高まる。これが『ゴールデンドーム』への投資の主たる理由だ」と述べた。ゴールデンドームは、トランプ大統領が意欲的に進める戦略防衛計画だ。
インド太平洋地域の空軍司令官および空軍戦闘司令官を歴任したウィルズバック氏は、中国の急速な核兵器増強には、兵器数の増加と弾頭運搬用の多様な新型攻撃システムの開発の両方が含まれると述べた。
同氏は、中国の核戦力拡大が、速度と規模の両面で「驚異的」であるとした他の軍幹部らの主張に同意すると述べた。
ウィルズバック氏によると、中国は核兵器を2020年の約300発から現在の600発に増強し、「2030年までに1500発に達する見込みだ」。
それぞれ約1700発の配備弾頭を持つと推定される米国、ロシアと同等の規模となる。
同氏によると、中国の核弾頭は、サイロ配備型と移動式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射ミサイル(SLBM)、爆撃機という米本土を標的とすることが可能な3つのシステムに配備される。
中国の核弾頭1500発という新たな推定値は、米国防総省の最新評価から500発増加することを意味する。
昨年12月に公表された年次中国軍事力報告書は、中国が2024年半ば時点で600発以上の運用可能な核弾頭を保有しており、2030年までに1000発以上に達すると予測。その多くは従来より高次の即応態勢で配備されるとした。
中国は、4日に北京で行った軍事パレードで、新型戦略ミサイルなどの核戦力を世界に披露したばかりだ。
パレードでは、新型の多弾頭ICBM「東風61(DF61)」、ICBM「東風5(DF5)」、複数の極超音速ミサイルが初公開された。核、通常のどちらも搭載可能なミサイルだ。
ウィルズバック氏は「2035年までに1500発の核弾頭保有が予測される一方で中国は、核戦力の近代化、多様化、拡大を継続する意思を示している。今後10年間、中国は核戦力の急速な近代化、多様化、拡大を継続する可能性が高い」と述べた。
同氏は、中国は低出力精密攻撃ミサイルから数メガトン級ICBMまでを網羅する多様な核戦力を開発中であり、これにより中国共産党指導部は紛争激化のあらゆる段階にも対応できる選択肢を得られると説明した。
「中国人民解放軍ロケット軍による米空軍部隊・施設への脅威は、年々増加するミサイルの数、種類、射程と高度化により増大している」
弾頭は攻撃に対する核抑止力を維持する上で重要な要素だ。
中国西部には最近3つの大型ICBM基地が建設され、米当局者によれば、それぞれ300発以上の多弾頭ミサイルが配備されている。
ウィルズバック氏によると、空軍は中国のミサイル脅威への対応で一定の進展を遂げているものの、依然として多くの脆弱性が残っている。
「迅速な戦闘展開」と呼ばれる計画を通じて西太平洋に部隊を分散配置しており、これによって、中国は作戦を無力化することが困難になり、中国の戦争計画立案者が対処すべき目標の数が増えることになる。
ただし空軍は、偽装・隠蔽・囮の強化や対抗手段の拡充に向け、施設の耐攻撃性を高める必要があるとウィルズバック氏は指摘。
敵のミサイル能力に対抗するには航空・ミサイル防衛能力が不十分であり、分散配置された基地の保護に最適化されていないと述べた。
ウィルズバック氏はロシアの核戦力も脅威だと述べた。
ロシアは新型兵器の試験で複数回の失敗を経験したが、陸上・海上配備ミサイルや爆撃機の大半を近代化した大規模な戦略的近代化計画をほぼ完了させつつあるという。
ウィルズバック氏は「ロシアは米国との均衡の維持、米国のミサイル防衛システムへの対抗、ウクライナでの損失により悪化した通常戦力の弱点を補うという願望に駆られている」と語った。
「ICBM、SLBM、爆撃機に搭載された戦略核弾頭を含む核弾頭の備蓄を維持している」
中国は「紛争での核兵器先制不使用」の方針を表明しているが、ウィルズバック氏は「戦争時に先制不使用政策が守られるか、観測筋の多くは懐疑的だ」と指摘した。
同氏は、中国が将来の戦争で核兵器の使用を開始する可能性やその条件は不明確だと指摘。
ロシア、中国、北朝鮮などによる核の脅威は拡大しているが、現在の核抑止政策と戦力構造はこれらについて「十分に考慮に入れて」構築されていると語った。
しかし、ロシアと中国の核戦力拡大により、米国の現在の戦略戦力では将来的に不十分となる可能性があるという。
ウィルズバック氏は、トライアッド(核の3本柱)のうち空軍が担う2つの近代化が今後も国防総省の最優先課題だとと述べた。
空軍は老朽化した400基のICBMミニットマン3の新型ICBMセンチネルへの換装を進めているが、これは遅れとコスト超過に直面している。
新型ステルス爆撃機B21は試験中で、少なくとも100機が製造される予定だ。
ウィルズバック氏は公聴会で、司令官としてセンティネルとB21の配備と、新たな核指揮統制システムの導入に引き続き尽力すると証言した。
「わが国は、制空権の確保、核・通常兵器による世界規模の攻撃能力、迅速な機動性、指揮統制、情報収集・監視・偵察(ISR)を空軍に依存している。これらは失敗が許されない任務だ。特に危険が増す世界情勢において、国家安全保障にとって極めて重要だ」