韓国でキリスト教指導者の拘束相次ぐ 「粛清」批判も

(2025年10月24日)

写真:グレアム・カーマイケル:故・文鮮明牧師と共同でワシントン・タイムズ紙を創設した文鮮明博士が、ソウル・ワールドカップ競技場で開催された「朝鮮半島統一のための世界集会」で基調講演を行った。(写真提供:HSA-UWC)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Wednesday, October 22, 2025

 【ソウル(韓国)】世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の韓鶴子総裁(82)は、ソウル拘置所の約6平方メートルの独房に30日以上も拘束されている。弁護団によれば、同氏は10~12時間に及ぶ取り調べを複数回受けたという。

 視力が落ち、心臓疾患を患う韓総裁は、1日5人、合計10分間のみ面会が許可されている。請託禁止法違反の罪などで起訴され、裁判は28日に開始予定だが延期される可能性もある。その場合、最大6カ月間拘束される恐れがある。検察が証拠改ざんの恐れを理由に自宅拘禁を認めなかったため、釈放される可能性は低い。

 そこから約320キロ離れた釜山拘置所では、釜山世界路教会の創設者、孫賢宝・主任牧師(62)が約50日間拘束されている。

 元特殊部隊兵士である孫牧師の健康状態は悪くはないが、独房のカビに悩まされていると息子のチャンセ氏が語った。

 チャンセ氏は「父は弱さを表に出さない人です。『大丈夫か』と尋ねると、必ず『なぜ聞く。神が守ってくださる』と答えます」と述べた。

 この2人の宗教指導者の拘束以外にも、韓国国内で保守派牧師らの政治的事件を巡る捜索、取り調べが相次いだことを受け、宗教的自由擁護団体や国際機関は、李在明大統領率いる左派政権が司法制度を武器化し、政治的敵対者を攻撃しているのではないかと警告している。

 韓総裁の取り調べを担当した検察官らによって取り調べが行われた地方公務員が死亡し、自殺とみられていることから、こうした懸念はさらに強まっている。

 マイク・ポンペオ前米国務長官は先月X(旧ツイッター)で「韓国で宗教指導者、韓鶴子博士に向けられているローフェア(法律を武器とした戦い)は深刻な懸念材料だ。宗教の自由への攻撃が激化しており、これは韓国が掲げているはずの民主主義の原則への裏切りだ」と訴えた。

「これは粛清だ」

 政治的分断が深まる韓国では、保守派の尹錫悦前大統領からリベラル派の李大統領への政権の移行は混乱を極め、大規模な法廷闘争が展開されている。李氏は、昨年12月に戒厳令を宣言した尹前大統領の弾劾を受けて6月に実施された大統領選で勝利した。

 特別検察官らは、韓総裁が尹前大統領の金建希夫人への賄賂を指示し、家庭連合に保守系の権性東議員(現在拘束中)を支援させたと主張している。

 捜査官によれば、韓総裁はカンボジア開発プロジェクトへの公的支援や韓国ケーブルテレビ局の買収などで政治的便宜を得ようとしたが、いずれも実現しなかったという。

 家庭連合は、韓総裁は賄賂に関与していないと主張、解雇された幹部「ユン」を非難している。「ユン」も拘束中だ。

 韓総裁は賄賂、違法な政治献金、証拠隠滅の容疑で拘束、起訴された。家庭連合はワシントン・タイムズを含む複数の企業を所有している。

 非政府組織「欧州信教の自由フォーラム」のヤン・フィゲル会長は、李政権が政敵の支持者へ政治的報復を行っていると非難した。

 「これは腐敗撲滅ではない。粛清だ」とフィゲル氏は訴えている。

 孫牧師は公職選挙法違反の罪で起訴された。保守派として意欲的に発言し、集会や説教では尹前大統領を支持し李氏を批判してきた。逮捕直前の集会で孫牧師は李氏を「ヒトラーやナチスと同じ」と呼び、「韓国が生きるためには李在明は死なねばならない」と叫んだ。

 李氏を巡っては2024年1月に釜山の建設現場視察中に首を刺されるという殺人未遂事件が起きている。孫牧師の扇動的な発言は、一部保守団体がスローガンとしてよく使用しているもので、文字通りの暗殺への働きかけではない。とはいえ、韓国での政治的暴力の近年の歴史を踏まえると扇動的であり、逮捕は物議を醸した。

 保守政党「国民の力」の新代表に選出された張東赫氏は、検察による教会への強制捜査を厳しく批判し、李政権を「親中独裁政権」と呼んだ。

 トランプ米大統領は、8月のホワイトハウスでの首脳会談で教会への捜索を擁護した李氏に対し、政治的「粛清」ではないのかと疑問を呈した。李氏はこの質問を軽くかわし、検察は独立して行動していると米政府高官に伝えた。

 金夫人、尹前大統領の取り調べを行っている特別検察チームは、10月10日に57歳の地方公務員が自殺したとみられる事件を受け、圧力を受けている。この公務員は不動産取引で金夫人の家族に便宜を図った疑いで取り調べを受けていた。

 反対勢力は監視カメラによる取り調べ映像の公開を要求している。要求は受け入れられていないが、捜査関係者は地元メディアに対し、「(特別検察官が)進行中の全事件の捜査状況と手法を徹底的に検証し…関係者の人権保護に怠りがないことを確認する」と述べた。

 しかし通常の検察官とは異なり、特別検察官には人権監視部門がない。この点について匿名の検察官らから、保守系メディアに批判が寄せられている。

 金氏の弁護人チェ・ジウ氏は特別検察官の手法について記者団に「韓国の司法制度は機能不全に陥り、狂気にとらわれている」と語った。

 しかし強い恥の文化が根付く韓国では、捜査対象者の自殺は珍しいことではない。

 2023年には、アカデミー賞受賞作「パラサイト」で知られる俳優イ・ソンギュン氏が、薬物容疑で取り調べを受けた後(19時間に及ぶこともあった)自殺した。

 2009年には、盧武鉉元大統領が、家族による汚職疑惑の捜査中に自殺している。

標的となった宗教指導者

 孫牧師と韓総裁のような司法を巡る苦難はこれまでにも起きている。他の牧師らも政治問題をめぐる家宅捜索、捜査、取り調べを受けてきた。

 最も注目すべきはプロテスタントの全光焄牧師だ。強硬保守として知られ、説教に野卑な言葉を交えることもある。信者らはリベラル派の文在寅元大統領や現職の李氏に反対して街頭で抗議行動を展開した。

 関係者の話では、自宅は検察によって「荒らされた」という。また、裁判所への侵入を扇動した容疑で出国が禁止されている。

 ソウルに拠点を置く法律事務所、HHC雇用・労働法の米国人弁護士ブレンドン・カー氏は次のように述べた。「韓国の検察は、起訴前や裁判前でも拘束できる非常に強い権限を持っている。これはコモンロー(判例法)の人身保護の概念が異なるためだ。(韓国検察は)起訴なしに最大20日間被疑者を拘束でき、起訴後はほぼ無期限となる。ただし被拘束者は迅速な裁判を受ける権利がある」

 韓国の有罪率99%超は、孫牧師と韓総裁にとって不吉な兆しだ。

 韓国法に28年かかわってきたカー氏は「韓国では起訴されれば勝負は決まる。有罪判決が下される。問題は刑の重さだ。韓国には司法取引制度が存在しない」と述べた。

 チャンセ氏は、父親の判決が懲役ではなく罰金となることを望んでいると語った。

 これらの宗教指導者らは、韓国でこれまでもよく起きてきた現象に巻き込まれた。

 1987年の民主化以降、政権交代時に前政権を捜査することが慣例化してきた。

 盧氏の自殺に加え、5人の元・前大統領と複数の政治的盟友・家族が投獄されている。

 法務相と検事総長が大統領任命職であるため、検察は青瓦台(大統領府)にとって効果的な武器となる。

 カー氏は「韓国の検察は極端に政治化されており、米国のような判例法の国々では民事とされる行為も、韓国の法では刑事犯罪とみなされる。そのため、あらゆる問題で検察が主役級の役割を果たす」と述べた。

 前大統領夫人については捜査を受けたことで、「世論という法廷」の目もさらに厳しくなっている。美容整形を受けた金夫人は、汚職疑惑、高級品への執着、高慢な態度から極めて不人気だった。

 法の網ははるかに下層にまで張り巡らされている。ワシントン・タイムズが入手した情報によれば、元高官の報道官でさえ取り調べを受けたという。

 このサイクルは繰り返されるだろう。

 「ニュー・コリアンズ(新しい韓国人)」の著者マイケル・ブリーン氏は「検察は政権の圧力からでも、自らの熱意からでも、選択的に起訴する権限を持つ。その文脈では全てが政治であり、5年後には李大統領にも同じことが起きると断言できる」と述べた。

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