裁かれる韓国の大統領経験者ら 正義か復讐か政治的見せ物か

2025年7月9日水曜日、韓国のソウルで、特別検察が請求した逮捕状を審査する審問に出席するため裁判所に到着した韓国の尹錫烈前大統領(中央)。(金洪基/プール写真 via AP)
By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, August 8, 2025
【ソウル(韓国)】ほとんどの国で、大統領経験者が下着姿で拘置所の床に横たわり、取り調べのための移送を拒否する行為が見られるのは極めて異例だが、韓国ではこのようなことがほぼ常態化している。
北朝鮮では、指導者が権力を死ぬまで手放さず、その後、霊廟、肖像画、彫像で記念されるため、このような行為は考えられない。
韓国では逆の現象が起きている。大統領経験者らは、自身と家族に対して高圧的な捜査を受け、人権を侵害され、刑務所収容や自殺など悲劇的な結果を招く。
北朝鮮の制度は独裁政権の中では珍しいものではないが、韓国のような制度は民主主義国家の中では唯一無二かもしれない。
韓国のこういった慣行が、究極の政治的復讐か、最高度の責任追及システムかを巡る議論はあるが、専門家は国外の専門家に対し、これらは儀式的な政治的パフォーマンスであり、正義の名の下で行われる残虐行為と誤解しないよう警告する。
尹前大統領への集中攻撃
弾劾された尹錫悦前大統領は、12月の「非常戒厳」宣言の失敗に伴う反乱罪を含む複数の容疑で拘束されている。
尹被告は先週、取り調べのために連行されるのを避けるため、拘置所の床に下着姿で横たわっていた。検察は、64歳の被告を身体的に傷つけることを恐れ、最終的に移送を諦めた。検察は新たな令状を取得した。元検事総長の尹被告は、検察の取り調べを警戒すべき理由を知っている。
韓国当局は、1987年に独裁政権が終了するまで電気ショックや水責めを実行していたが、現在ではしていない。しかし、司法制度は検察官を被告よりも優遇している。
憲法裁判所の元調査官判事、ファン・ジュミョン氏は2017年の記事で「検察庁での10時間を超える長時間の取り調べで得られた自白は、有罪判決を下すための主要な証拠となっている」と指摘した。ファン氏によると、これらの手法が2013年から2017年までの有罪率99.3%につながった。
警察、軍事警察、検察官、特別捜査官の捜査は広範囲に及び、裁きを受けるのは尹被告だけではない。前政権の関係者、妻、側近、軍幹部も対象となっている。
妻の金建希氏は、株価操作と汚職の容疑で取り調べを受けている。7日、金氏の逮捕状が請求された。ソウル地裁は今週中にこの令状について判断を下す。
教会も影響を受けている。汝矣島純福音教会と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、前政権の関係者との共謀を巡って家宅捜索を受けた。
家庭連合の幹部の一人は、8日に金氏への贈賄の疑いで検察官から聴取を受けた。
家庭連合はワシントン・タイムズのオーナーだ。
海外からの訪問者は、家庭連合への捜索の規模に驚いていたようだった。
しかし、韓国ではデモの監視や検察支援のため、大量の警察官を動員することは一般的で、前大統領に対する大量の警察官動員も同様だ。
正義、復讐、それとも儀式か
韓国は1948年に国家として成立した。以来、大統領経験者のうち法的なトラブルを免れたのは1人だけだ。
李承晩元大統領は追放された。朴正煕元大統領は側近に暗殺された。全斗煥氏と盧泰愚氏はそれぞれ死刑と終身刑を宣告された(後に減刑された)。
金泳三元大統領、金大中元大統領の家族は収監された。盧武鉉元大統領は家族に関する捜査の真っ最中に自殺した。李明博元大統領は収監され、弾劾された朴槿恵元大統領も収監され、その自宅と資産は当局によって差し押さえられた。
唯一無傷なのは、尹被告の前任者である文在寅元大統領だけだ。
一部の観測筋はこのような責任追及を称賛している。
「北朝鮮では、指導者は絶対的な権力を持ち、その存在は憲法や法律を超える。しかし、この自由な民主主義の世界では、大統領は選出され、一定期間、国に仕え、任期終了後は法律を守るべき一般市民となる。そこが違う」-ある北朝鮮の脱北者が、雇用主からメディアへの発言許可を得ていないとして匿名を条件に語った。
他方、深刻な懸念を示す声もある。尹被告が反乱罪で有罪となった場合、最高刑を宣告される可能性がある。
米国の保守派ゴードン・チャン氏はSNSに「自由を守れ! 尹大統領を守れ!」と投稿した。この投稿には、尹被告の死への懸念、神の守りを求める声もあった。
尹被告の運命は不透明だが、死刑執行の可能性は極めて低いとみられている。死刑制度は法的に存続しているが、1998年から執行は完全に停止されている。
ある韓国の政治評論家は、政治的・司法的なパフォーマンスは国内ではよく理解され、頻繁に繰り返されてきた儀式であり、外部から見ると深刻に映るかもしれないが、実際にはそうではないと指摘した。
ソウル在住の「ザ・ニュー・コリアンズ」の著者マイク・ブリーン氏は有罪判決が下された場合、「検察は死刑を求刑するだろうが、それは認められず、尹被告は5年で釈放されるだろう。これは政治的なパフォーマンスだ」と述べた。
30年を超える刑期を科された者もいたが、韓国の大統領経験者で刑期を全うした者は1人もいない。世論が沈静化した後に恩赦が与えられてきた。
ブリーン氏は、「この制度は形式に過ぎず、全くの茶番だが、誰も指摘しない」と強調した。
減刑や恩赦といった救済措置が組み込まれているが、1980年代からこの国に暮らしているブリーン氏は、これらの措置は見せ物にされていると痛烈に批判した。
「被疑者全員が公にさらされる必要はない。それは不要であり、検察が証拠を強化するために、人々を有罪に見せかけるために行われている」
これは、被告が囚人服を着て法廷で公にさらされること、かつて権力者だった者たちの尊厳を欠いた姿にメディアが注目する現象を指す。
尹被告を連行しようとする場面でも、人々の異様な関心や見せ物的な扱いが見られ、弁護団から批判を受けた。
ブリーン氏は、李在明大統領が退任し政治のバランスが変化した後、このサイクルが再び繰り返される可能性が高いと述べた。
李大統領は5年間の任期中、大統領免責権を有しているが、選挙中の虚偽発言から北朝鮮への違法な送金まで、複数の容疑で起訴されている。