AIブームとトランプ関税で就職難にあえぐ新卒

ワシントン・タイムズ映像より
By Sean Salai – The Washington Times – Tuesday, August 19, 2025
人工知能(AI)の浸透やトランプ大統領の関税の影響に対する不透明感から、大学新卒者が初級レベルの仕事を見つけるのが難しくなっている。
ニュージャージー州を拠点とするキャリア育成企業ネクスト・グレート・ステップの創業者兼社長ベス・ヘンドラーグラント氏は、「企業は関税と景気に対して様子見の姿勢だ。その結果、雇用をためらい、多くの初級レベルの仕事を自動化するためにAIに注目している」と述べた。
同氏は、雇用主が2024年末に7.3%増と予測していた採用予定を0.6%増に縮小していると指摘した。
ワシントン・タイムズがインタビューした雇用と求職の専門家は、ファイリング、データ分析、顧客サービスなどのホワイトカラーの仕事に就くのにかかる時間は、過去数年の2~3カ月から、2025年では4~6カ月へと大幅に延びたと推定している。
シアトルに拠点を置くAI就職支援プラットフォームHuntrのパートナーシップ・運営責任者サム・ライト氏は、「今は新卒の求職者にとって1980年代後半以来、最も厳しい時期だ。雇用主は面接のペースを調整し、入社を(今年の最後の3カ月に)延期している」と述べた。
労働統計局は7月、「新規参入者」が失業者に占める割合が1988年以来最も高いことを明らかにした。
複数の報告書によると、この夏、新しく学位を取得した人たちは、職探しにストレスを感じているようだ。
ニューヨーク連銀は8月1日、大卒者の失業率が5.3%に上昇したと発表した。また、新卒者の41%が「不完全雇用」、つまり学位を必要としない分野で働いているとしている。
ロサンゼルスのオプションズ・フォー・ユース・チャーター・スクールでキャリア準備相談員を務めるシャニ・チェン氏は、「この夏、卒業生の多くが数十件の求人に応募したが、返事がまったく来なかった。会社側は応募者があまりに多く、応募者をゴースト(無視)してしまっている」と語った。
ニューヨークを拠点とする求人検索エンジン「メタイントロ」によると、初級レベルの労働者と大学新卒者を対象とした求人情報は、2023年から40%減少しているという。
メタイントロの最高経営責任者(CEO)で創設者のレイシー・ケイラニ氏は、大卒の要件を取り下げ、2~3年の実務経験を求める雇用主が増えていることを挙げた。
「例えば、学生の時にインターンやアルバイトをして、履歴書に実社会での経験を書けない新卒者にとっては、抜き差しならない困難な状況が生まれている」とケイラニ氏は言う。
キャリア相談サイト「ジッピア」によると、「初級レベル」と表示された求人のおよそ3分の1が、少なくとも3年の経験を要求しており、ほとんどの大卒者はその仕事に就くことが難しくなっている。
一方、連邦準備制度理事会(FRB)はトランプ氏が1月に大統領に復帰して以来、金利をほぼ据え置き、輸入品への関税がインフレに与える影響を懸念し、監視を強めている。
ホワイトハウスの報道官はワシントン・タイムズに電子メールで送った声明の中で、政権の「急速な規制緩和、減税、貿易合意という野心的な経済政策」は米国の経済に数十億ドルをもたらすと述べた。
クシュ・デサイ大統領副報道官は、「トランプ大統領の『米国第一』政策は、1期目に歴史的な雇用、賃金、投資の伸びをもたらした。これと同じポリシーミックスがさらに大きな規模で、第2次トランプ政権で再び実施される」と述べた。
不透明な経済
これまでのところ、トランプ政権は雇用の改善を約束しているが、米国のテクノロジー企業やメディア企業の雇用が拡大するには至っていない。
エコノミストは、多くの経営者は、FRBが金利を引き下げるまで、空いたポジションを埋めることはないと予測している。そのため、2025年の新卒者の中には、12月か来年の1月までフルタイムの仕事に就けない者も出てくる可能性がある。
私立テュレーン大学経営学部のパオロ・ゴーズ学部長は「経済が不安定な時期には、採用活動を控えるのが自然な反応だ」と言う。
専門家によれば、ホワイトカラーの雇用市場の縮小には、急速に進化するAI技術が関税以上に大きな役割を果たしている。企業はAIプログラムを使って若手社員を削減し、自動的に応募をフィルタリングし、訓練を受けていない新人よりもベテラン社員を優先するため、初心者の採用を凍結する傾向が強まっている。
ウィチタ州立大学のウーシャ・ヘイリー教授(経営学)は、「AIはより大きな混乱を招き、特に新卒レベルでは、今年1万人以上の米国での雇用減に直接結びついている」と語った。
最新の数字では、全米でおよそ720万人が失業し、780万人が職を探している。
NBCニュースの分析によると、雇用が活発な数少ない業界では、女性よりも男性の方が仕事を見つけるのに苦労している。今月の23歳から30歳の大卒男性の失業率が6%に達したのに対し、女性は3.5%だったという。
ダラスを拠点とする人材派遣・紹介会社ユニティの採用専門家デービッド・キャシー氏は、「医療関連分野の学位取得率は、依然として女性の方が男性よりも高い。男性の卒業生が集まりやすい(科学技術)分野の多くは雇用が不安定だ」と述べた。
さらに悪化へ
若者が求職活動を一時停止し、市場が緩むのを待っているとする報告もある。
キャリア相談サイト「トップレジュメ」は6月、2025年卒の大卒者1000人を対象にした調査で、新入社員の募集が15%減少する中、24%が就職活動を延期したと報告した。
保険業界の人材紹介会社スペンサー・ジェームス・グループの採用責任者スティーブ・フォークナー氏は、求人数が減少しているにもかかわらず、大学教育を必要とする職種への応募は倍増していると述べた。
フォークナー氏は、「秋に向け、採用は厳しい状況が続くとみている。各業界や経済全体への規制改革の影響を見極めなければならないため、現在多くの業界では全般的に不透明感が漂っている」と述べた。
一方、履歴書作成サイト「ライブキャリア」が8月4日に発表した報告によると、採用担当者の65%が、AIの採用プロセスのせいで、面接を辞退する応募者が増えていると考えている。
同社のキャリア専門家ジャスミン・エスカレラ氏は、自動化された電子メールの返信から新卒者は、「人間が履歴書を見る前に」電子的に応募書類がフィルタリングされていることが分かると述べた。
「デジタル採用のマイナス面が出ている。求職者は、人間ではなく機械と話をしているように感じると、相談することもなく辞退する可能性が高くなる」
専門家によれば、卒業生や業界イベントを通じた個人的なつながりは、採用する側と求職者がつながるための効果的な方法であることが分かっている。
ニューヨーク大学のマーケティングの講師アンジェリカ・ジャンチャンダニ氏は、「多くの職務は公募されていないため、意図的に関係を築き、知名度を上げることが大切となる。迅速に適応し、自身を成長させ、共感を得られる新卒者は、他の人には見えないところにチャンスを見いだす」と述べた。
オハイオ州を拠点とするBest-Trade-Schools.netの創設者ダグ・クロフォード氏は、肉体労働にシフトすることが、4年制大学の卒業生の一部の助けとなる可能性があると述べた。
熟練した配管工、建設作業員、機械技師が全国的に不足しており、近年、専門学校への入学希望者が急増している。
クロフォード氏は「熟練工、医療サポート、技術サービスなどの業界では、仕事で学ぶ意欲さえあれば、応募者の経歴はそれほど問われなくなってきている。雇用する側は、経験の長い人よりも、柔軟性があり、学ぶ意欲のある人を雇いたいと思っている」と述べた。
一部の関係者は、今後数カ月の経済状況の変化に伴い、新卒者の就職市場はさらに厳しくなるとみている。
トップレジュメの調査によると、2025年卒の52%が自分の学位が1年以内の就職につながると考えておらず、56%が準備が整っていないと感じている。
ニューヨークのブルックリンを拠点とするAIキャリア開発会社キャリアスパンの共同設立者兼CEO、ブリジェン・アタワー氏は、「事態は好転するより、より悪化すると予想している。夏の季節雇用が終了し、例年、採用が低調な月に入るため、新卒者にとって市場はさらに冷たく感じられるようになる」と述べた。