ウクライナ東部最前線、補給の生命線守る兵士たち

(2025年9月14日)

2025年8月24日日曜日、ウクライナのドネツク地方でロシア軍との激しい戦闘が行われたコスティアンティニフカの町で、ロシアのFPVドローンに向けて射撃準備をするウクライナの兵士。(APフォト/Yevhen Titov)

By Guillaume Ptak – Special to The Washington Times – Wednesday,September 10, 2025

 【コスティアンティニフカ(ウクライナ)】ウクライナ東部ドンバスの中心地で、ロシアの進軍の前に一つの町が立ちはだかっている。

 ウクライナ第28旅団のドローン操作員ゴルブは5日、市内の建物の地下室で「コスティアンティニフカはほぼ包囲状態だ。敵は3方向からわれわれを攻撃している」と語った。

 ここ数週間、この荒廃した工業都市はこの戦争の中でも特に重要な場所となった。ロシア占領下のバフムトと、要塞化された双子の拠点スラビャンスク・クラマトルスクを結ぶ重要な軸線上に位置するこの町は、ウクライナ防衛の兵站上の生命線となっている。

 この町が陥落すれば、ロシア軍がドネツク州深部へ進撃しウクライナ軍の陣地を包囲する道が開かれる。ウクライナの司令官らは、このシナリオが戦線全体に連鎖的な影響を及ぼすと警告している。

 ロシア軍は3方向から圧力をかけ、攻撃ドローンの群れと砲撃で補給路を攻撃している。

 「敵のドローンはわれわれの兵站を激しく攻撃し、全てを混乱させている。それでもわれわれは持ちこたえている」とゴルブは語った。

 ロシアにとって、この町の占領は象徴的な勝利をもたらし、ウクライナは広範に及ぶドンバス都市圏を防衛するのが困難になる。

 ウクライナにとって、コスティアンティニフカ防衛は、廃虚の中で交代で任務に就く兵士たち、今も市内に取り残されている推定6000人の民間人の忍耐力にかかっている。砲撃とロシア軍ドローンの不気味なブーンという音は、彼らの日常生活の一部となっている。

 この市街戦は、戦争全体が激化する中で展開されている。10日、ポーランドは領空侵犯を受けた後、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として初めてロシアのドローンを撃墜。これによりNATO条約第4条に基づく緊急協議が招集され、同盟国の防空強化を求める声が高まった。

 そのわずか数日前、ロシアは一晩で800機以上のドローンとミサイルで、侵攻開始以来最大規模の空爆を実施した。この攻撃はウクライナ軍によってほぼ撃退されたものの、新たな停電を引き起こし、西側諸国の首都を震撼させた。

 外交面では、ウクライナのパートナー国も長期計画の強化に乗り出している。欧州と英連邦の31カ国からなる「有志連合」は現在、将来の停戦を確保するための緊急措置を策定中であり、この紛争がウクライナの運命とNATOの地域における姿勢をいかに形作っているかを浮き彫りにしている。

 前線では、仮想現実(VR)ゴーグルで操縦する小型の(4つの回転翼を持つ)クアッドコプター無人攻撃機(FPV=一人称視点=ドローン)が特に厄介な存在となっている。多くは使い捨てで、爆発物を搭載し、車両、建物、人員へ突入させるため、低コストで精密攻撃が可能だ。

 ウクライナは、現在月約20万機のFPVドローンを生産し、2025年までに450万機に拡大することを計画している。それでもロシア軍のドローン能力の方がはるかに大きいとみられている。ウクライナ側の推計では、ロシアは最大6倍のドローンを保有している。

 ロシアはFPVドローンの使用を増やし、ドネツク地方を縦横に走る道路を攻撃し、補給線を断ち切り輸送部隊を妨害している。コスティアンティニフカでは、大通りに放置された焼け焦げた民間車の残骸がこの戦術の痛ましい証拠となっている。

 ゴルブは「ロシアは資源が豊富だからドローンを大量に保有している。われわれは車もアンテナも弾薬も全て隠さねばならない」と語る。ウクライナ第28機械化旅団の広報担当イェフヘニーは「特に危険なのは午前11時以降だ。外出禁止令が解除され、人々が買い物や散歩に出かける時間帯。ロシア軍は通常この時間帯に活動を始める」と説明した。

 爆撃で破壊された住宅街と裏庭の迷路を抜け、操作員のシェルターへ向かう途中、イェフヘニーは空を警戒しながら敵ドローン対策の最終手段である半自動散弾銃を握りしめていた。

 ゴルブと仲間たちは数日間、タバコとエナジードリンクで耐えながら、市内のロシア軍の陣地、車両、人員を計画的に攻撃し続けていた。

 ゴルブは「出撃回数は、敵の攻勢の強さによって決まる。敵が攻撃してきているときは、1日当たり25~30回の飛行になる。事前に計画された目標に対する出撃では、1日あたり15~20回。1カ月前には、敵がほぼ毎日攻撃してきていたので、出撃は最大で1日38回に達していた」と述べた。

 コスティアンティニフカでは、ウクライナ軍がロシア第4独立親衛機械化歩兵旅団と対峙している。この戦闘経験豊かな部隊は、かつては「ルハンスク人民共和国」民兵の一部だった。

 イェフヘニーは「指揮官の大半は元ワグネルだ。非常に優れた戦闘員で、多くのロシア正規部隊よりも優れていると言っていい」と言う。ワグネルは、ロシアの民間軍事会社であり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の私兵部隊とされる。ロシア政府から資金提供を受け、世界各地で活動している。

 ゴルブは、ロシア軍の現在の標的は樹木帯を移動する歩兵部隊であり、偵察部隊によって位置を特定された後に攻撃されると説明した。

 ロシア軍は戦車や重装備を投入することもあるが、オートバイや四輪バギーなどの軽車両を使用することが多くなっている。

 ロシアの偵察部隊がすでに市街地内で活動しているかとの問いに、彼は簡潔に答えた。「そうだ、そう思う」

 しかしこの日、ドローン操縦者たちに課せられた任務は、敵パイロットが使用するアンテナの破壊だった。

 1機のドローンが目標を発見できずにバッテリー切れになった後、ムラハ(ウクライナ語で「蟻」の意)は別の機体を準備し、破片弾を慎重に取り付けた。「主に歩兵対策だ」と説明してくれた。「だが車両破壊装備も整っている」と、戦車や装甲兵員輸送車、歩兵戦闘車などの装甲車両用成形炸薬弾を取り出して見せてくれた。

 一方、ゴルブとアリエスは大隊司令部とコンピューター経由で連携し、次の標的を探していた。

 イェフヘニーは「空軍と全く同じだ。全ドローン部隊の映像を監視する指揮官が配置され、相互干渉を防ぎつつ調整している」と説明した。

 ウクライナ最大の郵便サービス「ノバ・ポシュタ」で働いていたゴルブは、皮肉を込めて言った。「以前は小包を配達していた。今は未来を届けている」

 地下室の比較的安全な空間の外では、戦争は常に身近にある。

 鳥のさえずりは砲撃音や時折響く自動小銃の連射に掻き消される。

 ゴルブはモニターを見つめながら、「ロシアのドローンを撃墜しようとしているんだろう」と呟いた。

 間もなく、スピーカーから女性オペレーターの声が雑音交じりに流れた。オートバイに乗ったロシアの攻撃部隊が移動中だという。

 オペレーターたちは画面を走査したが、何も見つからなかった。

 アリエスは「見つけるのが一番難しいんだ」とため息をついた。彼のスマホに通知が入り、幼い息子の壁紙が表示された。父親そっくりだった。

 数分後、彼は迷彩ネットの下に隠されたアンテナを調整するため、階上へ向かった。

 バルコニーからは四方八方に壊滅的な光景が広がっていた。左側ではアパートが炎上し、粉々になった窓から煙の柱が立ち上っている。遠くでは紺碧の空を背景に複数の火災が燃え上がり、砲撃のリズミカルな轟音が街路樹の並ぶ大通りへと響き渡っていた。

 それでも数千人の民間人が、去る意思も能力も持たずに残っている。兵士たちは疲労困憊しながらも屈しない。撤退の代償を知っているからだ。「前線は今や無人機システムで支えられている。何があってもここを守らねばならない」とゴルブは言った。

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