ロシアの欧州領空侵犯相次ぐ 空港へのサイバー攻撃にも関与か

2022年8月15日月曜日、ドイツ・ノイブルク・アン・デル・ドナウのノイブルク基地で離陸準備をするドイツのユーロファイター。(Daniel Karmann/dpa via AP, File)
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Sunday, September 21, 2025
ドイツとスウェーデンが21日、バルト海上空を飛行中のロシアの偵察機を監視するため、戦闘機を緊急発進させたことが報じられた。この偵察機は、無線による交信に応じず、飛行経路も明らかにしていなかった。ロシアはこれまでにも同様の飛行を行っており、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、NATOの反応を試す挑発行為とみて警戒を強めている。
両国の当局者によると、ロシア機は飛行中ずっと国際空域に留まり、敵対行動には至らなかった。しかし欧州では週末に、空港を標的としたサイバー攻撃が起きたばかりだ。安全保障の専門家らは、この攻撃がロシア政府とその代理組織によるものである可能性を指摘した。また、ロシアの戦闘機がエストニア領空を侵犯したとされる事件(ロシアはこれを否定)からわずか2日後だった。
国連安全保障理事会は22日、エストニアでの事例について協議する。この数週間、ロシアによるNATO領空侵犯が相次いでいる。安保理会合は今週ニューヨークで開催される国連総会の最中に行われる。ロシア・ウクライナ戦争と、NATO領空へのロシアの侵入増加が主要議題となる見通しだ。
ロシア軍機がNATO加盟国の領空に侵入するのは従来極めてまれだったが、状況は変わりつつあるようだ。
今月初めにはロシア軍機がルーマニア領空を侵犯したと報じられ、ルーマニアは戦闘機を緊急発進させた。最も深刻な事例では、今月初めに少なくとも20機のロシア軍ドローンがポーランド領空に侵入。NATO軍がこれらのドローンの一部を撃墜した。欧州空域で敵目標を攻撃するのは、NATO史上初めてだった。
こうした動きの背景には、ロシアによるウクライナ侵攻が続いていることがある。ロシアはトランプ米大統領によるロシア・ウクライナ間の和平への仲介を無視しているようだ。欧州の指導者らは、ロシアが作戦を拡大し、軍事的圧力をかけることでNATO同盟内の亀裂を探ろうとしていると指摘する。
エマニュエル・マクロン仏大統領は21日に放送されたCBS「フェイス・ザ・ネーション」のインタビューで「ロシアが欧州での不安定化要因かつ攻撃的勢力であることは明らかだ」と述べた。
「この数週間、キーウへの攻撃を強化し、多くの民間人を殺害している」
マクロン氏は、ウクライナ政府の公的施設だけでなく、英政府や欧州連合(EU)の施設も破壊した」と指摘。「同時に、同じ数週間でポーランドとルーマニアの領空を侵犯した。間違いなくウクライナの領土を最大限に破壊し、ウクライナで勝利を収め、彼らが望むもの、すなわちNATOの弱さを白日の下にさらすという計画はある」と述べた。
これとは別に、一部の国家安全保障関係者は、ロンドン・ヒースロー空港や欧州中の他の空港でフライトの混乱や大幅な遅延を引き起こした大規模なサイバー攻撃は、ロシアと関係のあるグループによるものである可能性があると考えている。チェックイン技術を手掛けるコリンズ・エアロスペース社がハッカーの標的となったと報じられている。
サイバーセキュリティー企業NymVPNの最高デジタル責任者ロブ・ジャーディン氏は「背後にロシアが関わっている可能性は十分にある。欧州中の情報機関が、エネルギー・通信ネットワークに対するロシアの国家的支援による妨害工作の証拠を繰り返し報告している。ロシアは、中国に次ぐ世界第2位の規模のハッカー集団を擁しており、ロシア政府にとって、サイバースペースは新たな最前線となっている。冷戦は決して終わっていない。単に、大陸全体に広がるデジタルインフラへと移行しただけだ」と指摘した。
ジャーディン氏は記者団に配布したコメントで、「この攻撃は、ロシアがNATOの領空に侵入したと報じられたわずか数時間後に発生しており、そのタイミングは疑惑を深めるには十分だ」と述べた。
伝統的な軍事分野でロシアとNATOの緊張が高まる中、NATO関係者は、すでにサイバー領域でロシアと戦っていると述べた。
NATOノーフォーク統合軍司令部副司令官を務める英海軍のジェームズ・モーリー中将は最近、ワシントン・タイムズとの独占インタビューで「われわれは基本的に毎日、ロシアとサイバー空間で戦争状態にある」と語った。
22日に国連安保理の会合が開催されるが、エストニアがこのような緊急会合を要請するのは初めてだ。エストニア当局者は、国連がロシアの欧州に対する挑発行為に対処すべきだと主張している。
エストニアのマルグス・ツァフクナ外相は声明で次のように述べた。「9月19日、武装したロシア軍戦闘機3機がエストニア領空に12分間侵入した。これはエストニアの領土保全を侵害し、武力による威嚇または行使を禁じる国連憲章に違反する行為である。わが国の領空を公然と侵犯する行為は、国連加盟国全体の安全保障に不可欠な原則を損なうものである。したがって、こうした行為-特に安全保障理事会の常任理事国によるもの-は、まさにこの国連安保理において対処することが極めて重要である」
ロシアは米国、英国、フランス、中国とともに国連安保理の常任理事国であり、拒否権を行使して決議を阻止することができる。
ロシア国防省は、自国軍機がエストニア領空を侵犯した事実を否定した。
ロシア国営メディアによると、同省は声明で次のように述べた。「9月19日、ロシア軍ミグ31戦闘機3機がカレリアからカリーニングラード州の飛行場へ予定飛行を実施した。飛行は国際空域規則に厳密に従い、他国の国境を侵犯することなく行われた。これは客観的監視によって確認されている。飛行中、ロシア機は合意された飛行経路から逸脱せず、エストニア領空を侵犯しなかった。飛行経路はバルト海の中立地帯海上、バインドロー島から3キロ以上離れた位置にあった」
しかしこの事件はNATO全体の怒りを引き起こした。米NATO代表部は20日深夜に発表した声明で、同盟国の領土を防衛することを確約した。
米代表部はX(旧ツイッター)に「われわれはロシアによるエストニア領空侵犯を強く非難する。同盟国エストニアと固く連帯し、NATO全領域を断固として防衛する」と投稿した。