トランプ氏、軍事行動の可能性を示唆 ナイジェリアでキリスト教徒襲撃が増加

2022年6月6日、ナイジェリアのオウォで礼拝者を標的とした襲撃事件の翌日に、聖フランシスコ・カトリック教会内で警官が警戒に当たる。(AP通信/サンデー・アランバ、ファイル写真)
By Joseph Hammond – Special to The Washington Times – Thursday, November 6, 2025
トランプ大統領は、過激派組織からキリスト教徒を守るためにナイジェリアに米軍を派遣する可能性を示唆したが、アフリカで最も人口の多いこの国の宗教指導者、政治指導者からは、一部で評価の声が上がる一方で、警戒の声も出ている。
トランプ氏は、遊牧民フラニ族の過激派とイスラム教徒の反政府組織によるキリスト教徒に対する残忍な攻撃が急増したことから、ナイジェリアでの行動の可能性に備えるよう米軍作戦立案者に要請したと述べた。
「ナイジェリアが望まないことをするつもりだ。恐ろしい残虐行為を行っているイスラムテロリストを完全に一掃するために、あの問題の国に銃を持って乗り込むかもしれない」
その上で、もし米国がナイジェリアでイスラム反政府勢力などの過激派グループに対して行動を起こすことになれば、「素早く、容赦のない、痛快なものになる」と語った。
トランプ氏は先週、ナイジェリアを「特に懸念すべき国」として米国の監視リストに加えた。ナイジェリアで昨年、3100人という、世界のどの国よりも多くのキリスト教徒が殺害されたことを受けた措置だ。
国際的な監視団体「オープン・ドアーズ」によると、この3100人という数字は、世界中で殺害されたキリスト教徒のほぼ70%に相当する。
原因は、ボコ・ハラム、イスラム国西アフリカ州(ISWAP)、フラニ族の過激派であり、彼らは頻繁にキリスト教徒の農民を攻撃している。
今年初めに公表されたオープン・ドアーズの報告書によると「これまで、キリスト教徒が狙われるのはイスラム教徒の多い北部諸州だけだったが、中部のミドルベルトやさらに南部にも広がり続けている。攻撃は衝撃的なほど残忍だ。多くの信者、特に男性が殺され、女性は誘拐され、性的暴力の標的にされている」。
トランプ氏はナイジェリアを2020年に監視リストに記載したが、バイデン大統領(当時)は2021年にその命令を撤回した。
指定は、ナイジェリアと2億3300万人(イスラム教徒とキリスト教徒がほぼ半々)の国民に対する制裁につながりうる。米国の人口は3億4000万人だ。
キリスト教団体「インターナショナル・クリスチャン・コンサーン」のショーン・ライト会長は、「指定は重要であり、深く感謝している。これは、ナイジェリアの多くの家族を悲しませ、地域社会を荒廃させた残虐行為に立ち向かうために、国際社会を動員するための重要な一歩だ」と語った。
ナイジェリア北西部ソコト州のローマ・カトリックのマシュー・ハッサン・クカ司教は今週、ニューズウィーク誌に対し、トランプ氏の警告がナイジェリア政府に行動を起こさせることを期待していると語った。
「トランプ大統領の警告は、政府にとっての恐怖、キリスト教徒にとっての希望の両方を生み出すための一歩と見るべきだ。しかし、問題は単純に白か黒かでないことを私たちは知っている。ナイジェリアのキリスト教徒は、懸念に感謝している」
フラニ族はガンビアからスーダンに至るアフリカの広い範囲に住む遊牧民で、4000万人に上るが、大半は主に牧畜を生業とする平和的な人々だ。一部の過激派は、チャドからブルキナファソまで、サハラ砂漠南部一帯のサヘル全域でキリスト教徒への攻撃に関与している。ボコ・ハラムやISWAPのようなテロ組織も、この地域のキリスト教徒を標的にしている。
宗教的憎悪、土地の奪い合い、国家の統治能力の低下など、いくつかの要因からサヘル地域で衝突が発生、それらが連鎖し、エスカレートしているように見える。
ジェイムズ・ウーイェ牧師は「キリスト教徒が殺され、ナイジェリア北部では、教会を閉鎖せざるを得なくなった牧師もいる」と語った。ウーイェ師は、1990年代の内紛で、敵対するイスラム民兵と戦ったキリスト教民兵組織の元指導者だ。1992年の衝突で右手を失った。1995年、一連の宗教間和平イニシアチブを通じてかつての敵に手を差し伸べ始めた。
「市民的自由と法の支配のための国際協会」の2023年の報告書によると、現在の戦闘が始まった2009年以降、少なくとも10万人のキリスト教徒と6万人のイスラム教徒が殺害されたという。
ウーイェ師は、「イスラム教徒がそのような殺害について不平を言うことはない。アラーのみ心のままにだからだ。しかし、キリスト教徒がキリスト教徒を殺したとしたら、事情は変わってくる。前に進む唯一の道は、信教の自由を守ることだ」と語る。
イスラム教徒とキリスト教徒はナイジェリアのどの州にもいる。しかし、北部はイスラム教徒が多く、南部はキリスト教徒が多い。南部のイスラム教徒であり、さまざまな民族が住むラゴス州の知事だったボラ・ティヌブ大統領は、北部のイスラム教徒であり、軍人である前任のムハンマド・ブハリ氏よりもはるかに宗教的に多様な内閣を樹立した。
ティヌブ氏は、トランプ氏の発言についての質問に、「政府はこの問題を注視しており、あらゆる宗教を信仰するナイジェリア国民が、この問題に共に取り組み始めていると思う」と述べた。
宣教師であり、迫害被害者支援団体「イクイッピング・ザ・パーシキューテッド」の事務局長であるジャド・サウル氏は、ナイジェリア社会の一部で過激派が影響力を持つにつれ、状況は悪化していると述べた。
この団体は米国の宣教師団体で、このような攻撃の犠牲者に医療支援を提供し、自警団に防護服や戦術装備を提供する活動を行っている。ソール氏は2011年にナイジェリアで活動を開始した。
「この問題が大きくなったのは、過激派イスラム教徒、特にフラニ族のイスラム教徒がナイジェリア政府内で勢力を拡大し、有力な地位を占めているからだ」とサウル氏は言う。
フラニ族の政治家が政権を握っている他の国々でも、状況は似ている。
サヘル全域で、暴力の悲劇的な連鎖が起きている。ボコ・ハラムや各地のイスラム国(IS)系組織などのサラフィー・ジハード・グループは、定住コミュニティーを標的にすることが多い。
これらの攻撃に対して地元の民兵がフラニ族の野営地を報復として襲撃することも多い。フラニ族は、間違っていることもあるが、反政府組織に協力していると非難されることが多い。このような報復はフラニ族によるさらなる攻撃を招き、このサイクルは続く。
「ボコ・ハラムはよくフラニ族を目、耳として利用し、攻撃できそうな場所を探っている。両者が一緒に攻撃を行うケースもある」とサウル氏は言う。
ボコ・ハラムとISWAPのイデオロギーは異なる。ISWAPは世界的なカリフ制国家を目指し、ボコ・ハラムの活動はナイジェリア北東部に集中している。どちらも民間人を標的にしている。ISWAPはカヌリ族とフラニ族の過激派を統合しようとしているが、言語的、文化的な相違から成功していない。
ボコ・ハラムやフラニ族過激派と意見が合わなかったり、反フラニ族民兵に加わったイスラム教徒の多くが殺害されている
宗教的・民族的緊張は暴力の連鎖を助長する要因の1つに過ぎないと専門家は指摘する。
この地域の気候変動と砂漠化の進行が、資源をめぐる競争の激化につながっていると指摘する専門家は多い。人口の増加は遊牧民のライフスタイルを圧迫している。
経済的要因からの農民と牧畜民の対立は、米国の歴史にも相通じるものがある。19世紀末の米国では、農民と牧場主の間に同様の緊張関係が生まれ、西部一帯で「フェンス切断戦争」が勃発した。
やがて米政府と各州の権力が強まり、西部開拓時代は落ち着きを取り戻した。サヘルの大部分は逆の方向に進んでいる。中央の権威が弱まるにつれ、地方の民兵やテロリストがかつて国家が占めていた空白を埋める。その結果、西アフリカ内陸部の大部分で無法地帯化が進んでいる。
