中東で大型無人機リーパー3分の1喪失 補充巡り論争

MQ-9 リーパー。著者:アメリカ空軍上級空軍兵ヘイリー・スティーブンス。(出典:DVIDS 2019)
By John T. Seward – The Washington Times – Sunday, June 14, 2026
米空軍はトランプ政権発足以降、中東での戦闘によって、運用可能な無人偵察機「MQ9リーパー」の約3分の1を失った。イランとの戦争だけでも24機以上が撃墜された。
議会関係者、軍当局者、防衛産業関係者によると、追加生産のための製造ラインは既になく、国防総省や議会も後継機導入に向けた予算付き計画を策定していない。
2001年同時多発テロ後の対テロ戦争で広く知られるようになったMQ9は、対イラン軍事作戦で中心的役割を果たしてきた。ケネス・ウィルズバック空軍参謀総長は同機を「極めて優れた能力を持つ」と評価している。しかし、政策担当者らが後継機をどう確保するか検討する中で、深刻な問題が浮上している。
MQ9は、2月28日に始まったイラン攻撃で空軍が被った損失の一部にすぎない。議会調査局(CRS)は最近の報告書で、少なくとも42機の航空機が失われたと指摘した。その内訳はMQ9が28機、F15Eストライクイーグル戦闘機4機、F35戦闘機1機、KC135空中給油機7機などとなっている。
さらに過去9年間にわたり、イランが支援するイエメンのテロ組織フーシ派との戦闘でも17機の無人機が撃墜された。
イランの新型の徘徊型無人機、防空ミサイル、さらには最近のイランによる米軍基地攻撃などによって、空軍のMQ9戦力は徐々に消耗してきた。
総保有数は機密扱いだが、ワシントン・タイムズが取材した関係者によると、2017年以降、中東で少なくとも45機のMQ9Aが失われたことが確認されている。
その結果、国防総省と議会が中東で失われた戦力の補充策を模索する中で、MQ9計画は重大な岐路に立たされている。
複数の関係者によると、今週行われた機密ブリーフィングで、米中央軍のブラッド・クーパー司令官は上院議員らに対し、失われたMQ9の補充が必要だと訴えた。
しかし、それをどのように実現するのかは不透明だ。
■無人機リーパーとは
MQ9の製造元、ジェネラル・アトミクス社は、空軍からの発注減少を受け、2025年にMQ9Aの生産を終了した。現在は失われた約10億ドル相当のMQ9Aの代替としてMQ9Bスカイガーディアンを提案している。
ただし、その導入には議会による新たな予算措置が必要となる。
同社のC・マーク・ブリンクリー戦略広報部長はSNSへの投稿で、「MQ9Aリーパーの生産ラインは2025年に閉鎖されたが、これはジェネラル・アトミクスの判断ではなかった。われわれは反対したが受け入れられなかった。保管中のリーパーを再び運用可能にすることはできる。それで一定数の機体は確保できるが、長期的な解決策ではない」と指摘した。
MQ9Aが高い評価と広範な運用実績を得たのは、その優れた性能による。MQ9は米軍で最も代表的な無人システムの一つであり、当初は攻撃能力を持つ監視・偵察機として開発された。
その後、対テロ戦争においてヘルファイア・ミサイルやペイブウェイ誘導爆弾、大型GPS誘導爆弾を搭載する「ハンターキラー」型の攻撃プラットフォームとして活躍した。
価格は1500万~3000万ドル。翼幅66フィート(約20メートル)の主翼の最大6カ所に装備を搭載でき、高高度で24時間以上飛行可能だ。搭載センサーには赤外線センサー、高倍率ズーム機能付きの昼夜兼用カラー映像装置、レーダーなど、大型有人機に匹敵する能力が備わっている。
空軍は長年にわたり後継機の開発を模索し、「MQ9ネクスト」計画を進めている。しかし、それらの機体が現状の能力不足をすぐに解消できるわけではない。
ジェネラル・アトミクスによると、部品や同社所有機を活用できる余地はあるが、その数は10機未満にとどまる。空軍は、他のMQ9から部品を取って利用する「共食い」で、可能な限り多くの機体を中央軍へ提供する方針を公表している。また、別の選択肢も検討されている可能性がある。
ウィルズバック氏は6月9日、議会で「現在保有する残存機の改修と再整備を進めている。機密事項なので具体的な数字は言えないが、まだ相当数を保有している」と述べた。
同氏は「現時点でMQ9を巡る危機的状況にはない」と強調した。
しかし、デービッド・テーバー副参謀総長(空軍計画・プログラム担当、中将)は5月、空軍が深刻なMQ9A不足に直面しており、「可能な限り多くを買い戻そうとしている」と議会で証言した。
テーバー氏が5月に議会で明らかにしたところによると、空軍が保有するMQ9は135機にすぎない。イランおよびイエメンでの損失により、全保有機数の最大3分の1が失われた計算になる。
その補充策として、ジェネラル・アトミクスはMQ9Bスカイガーディアンの購入を提案している。
ブリンクリー氏は「MQ9Bはフル装備型も、改造した簡易型も購入できる。それが長期的な解決策だ。他国も同じ判断をしており、既に購入している。生産ラインは稼働中で、価格は要求仕様によるが、米軍向けフル装備型MQ9Bは約3000万ドルで、簡易型ならさらに安価になる」と説明した。
MQ9Bの生産ラインでは現在、多数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国向けの機体が製造されている。約100機が10カ国向けに生産中で、英国、カナダ、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ポーランドなど近年国防支出を大幅に増やしているNATO加盟国が含まれる。
同社によると受注は好調で、生産ラインは今後数年間安定稼働できる見通しだ。これらは全て対外有償軍事援助(FMS)案件であり、必要なら米空軍が優先的に発注して機体を確保することも可能だという。
ブリンクリー氏は「米空軍にモジュール方式のMQ9Bを、国防総省の要求に応じた、将来ではなく今すぐ納入可能な価格で提案している」と強調している。
■失われたリーパーは補充すべきか
しかし、生産能力だけでは問題は解決しない。そもそもリーパーを補充すべきなのか疑問視する専門家もいる。
ワシントンのシンクタンク、ディフェンス・プライオリティーズの軍事分析責任者ジェニファー・カバナ氏は、「MQ9は中東で生存性が極めて低いことが証明された」と指摘する一方で、「紛争、特に大国間の紛争での、この兵器の有用性そのものが問われるべきだ。警察機関などに売却された機体を買い戻すことには一定の価値があるかもしれないが、イランで失われた機体の補充に巨額の資金を投じることには懐疑的だ」と語った。
同シンクタンクは米軍の海外関与を抑制すべきだと主張している。
カバナ氏は、宇宙関連システムや「失うことを前提とした安価な偵察用無人機」の方が有効かつ費用対効果に優れるとの見方を示した。
ただし、そうした代替手段は現在の戦争には間に合わない。
同氏は「米国の動きは非常に遅く、低価格無人機の生産で他国に大きく後れを取っている。多額の資金と注目が集まっているにもかかわらず、進展は極めて遅い」と述べた。
議会では現在、トランプ政権が要求する1兆5000億ドル規模の国防予算を審議している。その一方でクーパー氏はMQ9増強を求めている。当初は新技術や将来兵器への投資に充てられる予定だった予算の一部も、現在は対イラン作戦向けに振り向けられつつある。
パット・ハリガン下院議員(共和党、ノースカロライナ州)は、「イラン攻撃では衝撃的な問題が実際に起きたが、一方で、われわれが導入してきた技術が非常に優秀で、実際によく機能していることが改めて確認できた」と語った。
元陸軍特殊部隊員でもある同氏は、無人機の新技術への投資を訴えてきた議員の一人であり、下院軍事委員会で、軍の近代化に意欲的に取り組んでいる。
しかし現在は予算不足を懸念している。
ハリガン氏は、新技術への投資と中東で失われた装備の補充について、「どちらも必要だが、どちらがどの程度ということになると、誰に聞くかで変わる。両方を実現するだけの無限の予算があるとは思えない」と語った。
ジョン・ホーベン上院議員(共和党、ノースダコタ州)も先週の空軍幹部らの公聴会でMQ9の損失について、「向こうでは多くのMQ9が失われている」と指摘した上で、「MQ9Aの生産ラインは停止しているが、B型の生産ラインは動いているので選択肢はある」と強調した。
新たな軍事予算の多くは議会への追加予算要求によって賄われる見込みで、その中にはMQ9補充費用も含まれている。しかしMQ9Aではなく高価なMQ9Bを購入する場合、さらに大きな予算が必要になる可能性があり、議会もその問題を認識している。
ホーベン氏はワシントン・タイムズに対し、「現在生産されているのはB型だが、われわれがこれまで使ってきた装備の多くはA型だ。国防上必要な課題なので取り組んでいるが、予算面は懸念している」と語った。
問題は補充費用だけではない。戦争によって想定外の支出が次々と発生し、政権の追加予算要求全体に圧力がかかっている。
リサ・マーカウスキー上院議員(共和党、アラスカ州)はワシントン・タイムズに「これが今われわれが直面している課題だ」と語った。
同氏は、問題は中東に限らないと考えている。一部の重要計画の予算が不足し、ロシアとの激しい戦争を続けるウクライナ支援を維持するのが難しくなっていると懸念を示した。
同氏は「弾薬の急速な消耗やさまざまな計画の状況について、われわれは真剣に問い直さなければならない」と述べた。
議会が失われたMQ9を含む重要装備の補充予算を確保したとしても、イランでの紛争は続いている。議会の意思決定は遅い。特に議会は正式な宣戦布告を行っておらず、現実に追いつけない兆候も見え始めている。こうした状況は議員たちも十分認識している。
ホーベン氏は「いつものことだが、この街では何事も遅れがちだ。だが、現場の兵士たちはリアルタイムで戦っている」と語った。

