タリバンの攻勢、非難されるバイデン政権
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Monday, August 9, 2021
アフガニスタンの分断が急速に進み、タリバン勢力は勝ちゲームを続ける一方、米国支援の政府は首都カブールからも逃げ腰で、バイデン政権は惨状を食い止めるのに必死だが、米政界と世界が非難の矛先を探している。
タリバンの反乱勢力は月曜日までに、アフガニスタンの六番目の州都を手中に収め、戦略的地域で政府軍を圧倒している。首都カブールの米国大使館はアメリカ人に即時国外退去を勧告した。北部のサマンガーンの州都アイバクがタリバンの手に落ちた事実は、米軍撤退を待って大規模な都市攻撃を開始する、というタリバン側の目論見が正しかったことを確認する形になった。
タリバンの一連の勝利は改めて、アフガニスタン治安部隊の信頼性を疑わせるものだった。米国が数百億ドルを投じて20年間訓練してきたが、過去数週間の主な戦闘で決定的敗北を喫した。
こうした状況悪化を受けて、米軍の全面撤退というバイデン大統領の政策によって、連鎖的なアフガン政府の崩壊とアルカイダの復権をもたらすと警告してきた米国の批評家たちに、格好の材料を提供している。共和党首脳は報道をもとに、バイデン大統領に非難の矛先を狙い定めている。なぜなら大統領は、将軍たちの忠告を拒否して、米軍の完全撤退を決定したからだ。
「現実の流れは、バイデン政権の最上層部を除いて誰の目にも明らかだった。…政府の決定は希望的観測に根差しているだけで、他の何物でもない」、共和党の上院総務ミッチ・マコーネル議員(ケンタッキー州)は議場で訴えた。
「国外からの支援だけで、アフガニスタン正規軍がタリバンの攻勢を阻止できるだろう、というのは希望的観測に過ぎなかった。タリバンが国際社会との外交交渉に応じる、というのも希望的観測に過ぎなかった」、マコーネル議員は言い切った。「米軍撤退がフルスピードで進められ、専門家たちの警告は致命的現実になってしまった。」
バイデン大統領が言ってきたのは、アフガニスタン撤退の絶好機など決してないだろう、歴史的に混沌としてきた国で「終わりなき戦争」を続けたくないということだ。またアフガン撤退の決定は、2020年2月にタリバンと協定を結んだトランプ大統領の路線に従うものだ。同協定はタリバンによる国内の安全保障と引き換えに、米国の撤退を規定した。
米軍3,500人に加え、NATO軍の数千人が国外に出た。NATOの同盟諸国は、タリバンの攻勢を目の当たりにしても、撤退完遂に固執している。
「世間と議会は、我が国の軍隊を戦場に送り込み、少なくても一世代の期間、他の国々の軍隊と一緒に国外に留まる用意があるだろうか。そうでなければ、同盟諸国と共同撤退することは妥当な決断であろう」、ドイツ国防相のアネグレート・クランプ・カレンバウアー氏は自身のツイッターに投稿している。
米国と欧州の当局者はタリバンに対して、アフガン政府との長期的な停戦合意を要請した。しかしアナリスト一般の見方は、武装した反乱勢力が交渉の場で少しでも影響力を行使するためには、できるだけ軍事作戦を続けるはずだ。
バイデン大統領と軍トップは、テロリストがアフガニスタンに拠点を構築した場合は、テロリストを攻撃できる「地平線の彼方」に能力を維持すると誓った。米空軍は最近、主要都市に対するタリバンの攻勢を遅らせるため、タリバンの拠点に打撃を与えようとした。
しかし米軍の空爆は不十分で、国防総省が空からの攻撃を劇的に増強する兆候はほとんどない。国防総省のトップは、より積極的な爆撃作戦をしなくても、戦闘がカブールなど主要都市に迫った場合、米軍の訓練を受けたアフガン治安部隊はタリバンを撃退できる技能と装備を保持していると主張してきた。しかし、この見通しには重大な問題がある。
アフガン軍の「メルトダウン」
報道によれば、国のいくつかの地域でアフガン軍は戦闘をあきらめ、他の地域では敵に圧倒されて警察本部や刑務所、その他の重要な政府の建物をタリバンに明け渡した。地元の識者はそうした現実を、世界が直視する必要があると主張する。
「(アフガン正規軍に対する)能力の増強、訓練、装備など、それらは一体どこにあるか。」「アルジャジーラ」はパキスタンのシャー・メヘムド・クレシ外相が月曜日の記者会見で語った言葉を引用した。「国の統治に関する諸課題と、アフガン国防軍のメルトダウンを精査するべきだ。」
一部の外交政策アナリストはこうした見方に同調する一方で、アフガン軍の欠陥を見ていると、カブール政府の機能強化という不毛な努力に、これ以上米国民の血税を費やし、米国人の命を危険にさらすよりは、今すぐ撤退するべき理由がある、と主張する。
「(アフガニスタンの)国家建設という任務は挫折している。弱い国家基盤の上に有能な軍隊を建設するのは不可能に近い」、シンクタンク「ディフェンス・プライオリティ」の政策ディレクタを務めるベンジャミン・フリードマン氏は指摘する。同シンクタンクは米国外交の抑制を提唱し、長年アフガニスタンからの撤退を主張してきた。
フリードマン氏は続ける、「このところのタリバンの攻勢はアフガニスタンの悲劇だが、おおむね不可避だった」「我々が学んだことは、米軍がアフガニスタンの治安部隊を際限なく支え続け、タリバンの勝利を遅らせることは可能だが、米軍が介入し他者の内戦を戦い続ける覚悟がないかぎり、戦闘を終わらせられない、ということだ。」
こうした状況で、米政府はアフガニスタンに滞在している米国市民に国外退去するよう警告した。カブールにある米国大使館は月曜日、次のような警告を発出した。「利用可能な民間航空便を利用し、ただちにアフガニスタンを離れるよう米国市民に督促する」。 「治安状況と大使館の限られた人員数からして、アフガニスタンに滞在中の米国市民を保護する大使館の能力には、カブール市内でさえ極めて限られている。」
米国大使館はカブール市内にあり、数百人の海兵隊が保護している。タリバンがアフガニスタンの他の地域で勝利を広げているにもかかわらず、要塞化された首都カブールへの攻撃は反乱勢力にとっても困難な作戦になるだろう。首都以外の主要都市は防御能力がずっと弱く、その脆弱性は証明済みだ。
タリバンは最近アイバクを落としたほか、クンドゥズ、サレプル、タロカン、ザランジ、シェベルガーンの州都を占領した。現在までに国の34の州都のうち6つが、タリバンの手に渡った。
アフガニスタン当局は、これら州都が完全に奪われた、との見方には異論を唱え、政府軍がまだ街に駐留し、激しい戦闘が依然続いている、としている。しかし伝えられるところでは、タリバンの戦闘部隊が各都市の大部分を支配し、警察署や行政府などの主要な建物を抑えている。アイバクでは、タリバンによる占領が事実上完了しているようだ。サマンガーンの州副知事はアルジャジーラに対して、タリバンは市街を「完全に抑えた」と語った。