本紙独占:不正取得した市民権を保持しやすい国土安全保障省の提案
By Stephen Dinan – The Washington Times – Wednesday, October 13, 2021
国土安全保障省(DHS)が配布している提案メモによると、不正手段を用いて取得された市民権を剥奪しようとすることが大幅に難しくなる。
ワシントンタイムズは、DHSのアレハンドロ・マヨルカス長官から入国管理に携わる三機関の長に送られる同メモの草案を目にする機会があった。このメモには、将来の市民権喪失を懸念した人々が、市民権申請をしない可能性がある、と書かれていた。
「帰化した者の市民権は、最後まで保障されるべきだ」とメモには書かれていた。 「DHSの政策は、合法的に永住している者が帰化を申請する際、脅迫効果や障壁を与えてはならない。」
市民権はく奪は連邦法の一部だ。それには裁判所命令が必要だが、刑事事件または民事訴訟の結果次第で提起することができる。
このメモによると、DHSが市民権はく奪の対象にするのは、国家安全保障上の脅威とか、性犯罪の有罪確定者や人権侵害の重罪犯、または「悪化する要素のある」詐欺等に限定すべきだという。
目下DHSが追っている事案は、提案メモの影響で却下される可能性がある。
このメモが狙っているらしいのは、役所側の誤りによるもののほか、多くは犯罪の前科があったり、不正な手段で市民権を申請したのが見過ごされた人々の市民権を探して取り消す、という、トランプ政権時代の縛りから解き放つことだ。
トランプ政権下で市民権・移民局(USCIS)の政策責任者だったロバート・ロー氏によれば、提案メモの文言は非常に制約が強いので、「市民権はく奪の事案を誰も追求しなくなるだろう」と指摘した。
「提案されているこの政策でマヨルカス長官が言わんとしているのは、市民権が実際に意味がなく、移民詐欺は報われる、ということだ」、現在は移民研究センターで規制問題と政策を担当しているロー氏は指摘した。
DHSは今週、コメントを求める要望に応答していない。
日付なしの提案メモには、「案文」と「公式使用のみ」のマークが付いていた。ロー氏は、このメモが回覧済みで、マヨルカス長官の裁決を待っているものだ、と説明した。
このメモの宛先は、米国の移民関連業務のバックボーンを形成しているUSCIS、税関国境警備局、および米国移民税関局となっている。
この提案メモによって市民権はく奪を禁止するわけではないものの、市民に偽装した人物がその当時に弁護士を依頼していたか、扶養家族がいたか、「健康上の問題」があったかなど、事案を選り分けるための規準リストを設定している。
同提案メモは、旧ユーゴスラビアに起因した事案、つまり悪名高い人権侵害者や戦争犯罪人に対する市民権はく奪の取り組みを停止することはないだろう。
それよりも、もっと一般的な市民権偽装の事案を、結果的に保護する可能性がある。
ブッシュ政権とオバマ政権の期間で、市民権剥奪の事案は年平均で約12件に過ぎない。全国移民フォーラムによると、その件数は2017年に少なくとも30件に増加した。
2016年の監察官報告では、国外追放された後に米国に不法再入国し、異なる身分を騙って市民権を賦与された数百人もの人々を特定している。
国外追放の権限を持つ米国移民税関局から提出された指紋カードは紙の形式で検査されていなかったため、USCISはそれらの事案を取り上げなかった。
監察官による調査結果を受けてUSCISは、より広範な見直しを実施し、もっと多くの該当事案を掘り起こした。
2018年にUSCISはロサンゼルスに、市民権はく奪実施チームを立ち上げた。当時のUSCIS局長は、「潜在的に数千件の事案」が、市民権はく奪の対象として司法省に送られると期待した、と語っている。
2020年に司法省は、市民権はく奪事案に特化した新しい部署を発表した。
移民権利の擁護派は、DHSの実施チームと司法省の新しい部署について辛らつな不満を表明した。マヨルカス長官が提案を決済すれば、同長官は擁護派の要求に応じることになるだろう。
擁護派は市民権はく奪について、トランプ政権で合法的移民の能力を制限する「目に見えない壁」の一部として、不法移民に自給自足を勧める政策と、USCISによる強制力に新たな焦点を当てた。
しかしロー氏によれば、市民権はく奪を不安に感じる必要があるのは、そもそも市民権を手に入れるべきではなかった人々だけだ。
市民権はく奪の取り組みが増え出したのはオバマ政権の時期だった。現在の提案原文の主な作成者たちの一部が写真に写っている。
その中には、米国市民権・移民局(USCIS)の責任者を務め、DHSの副長官だったマヨルカス氏が含まれていた。現在USCISの局長であるウル・M・ジャッドウ氏は、2014年から2017年まで同局の主任弁護士を務めた。
ジャドゥ女史は今年の任命聴聞会で、トランプ時代の市民権はく奪実施チームの活動を支持するかどうか尋ねられた。それに対して彼女は、その4年間は在職しておらず、「2017年以降のUSCISの調査結果と活動を慎重に検討・評価する」必要がある、と述べて質問を無視した。
しかしジャドゥ女史は非在職期間にも、この件についてフォローし続けていた。彼女は2018年にWNYCラジオ局の「The Takeaway」プログラムで長いインタビューに応じ、問題の実施チームについて懸念を表明し、潜在的な米国市民を怖がらせるトランプ大統領の取り組みの一環だ、と述べていた。
「私が懸念しているのは、なぜ多くの公告をするのか、ということだ。いったい問題は何なのか。なぜ今、これを公的に実施しているのか」、彼女はインタビューの中で語っていた。
ロー氏によれば、バイデン政権下のチームは、監察官の調査から派生した事案を追跡するために設置された実施チームを空洞化した。同チームのロサンゼルス事務所は空(から)になっており、そのスタッフも異動された、とロー氏は指摘した。
ワシントンタイムズは、実施チームの現状と、市民権はく奪に関するジャドゥ女史の過去の発言について、USCISに連絡を取り回答を求めている。