無制限の中絶へと進む民主党

(2022年5月21日)

2022年5月11日(水)、シカゴに向かい、その後イリノイ州カンカキーに向かう途中、アンドリュース空軍基地でエアフォースワンに乗り込むジョー・バイデン大統領(AP Photo/Gemunu Amarasinghe)。

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Wednesday, May 11, 2022

 民主党は近年、中絶問題で大幅に左傾化し、バイデン大統領もその動きに同調している。

 バイデン氏は、人工妊娠中絶に反対していた過去を捨て、中絶禁止へのほぼ全面的な反対へと傾斜するベテラン民主党議員らに歩調を合わせている。30年前にクリントン大統領がこの中絶を「安全、合法、まれ」でなければならないとした指針を捨ててしまったのだ。

 バイデン氏はかつて、いくつかの中絶処置を犯罪化することに票を投じ、最近では2019年に中絶に対するいかなる連邦政府の資金援助にも反対した。しかし、過去20年の間に立場を変え、党内の最もリベラルな層との連携を強めている。現在は、出生までの中絶を事実上合法化する法案に署名すると公約している。

 かつて穏健派だった他の民主党議員も、中絶に関して立場を変えている。

 ペンシルベニア州のロバート・ケーシー上院議員は、議会で最もプロライフ(中絶反対)寄りの民主党議員の一人と考えられていたが、10日、出生前までの中絶を合法化する上院法案に2度目の賛成票を投じる予定であることを発表した。

 ケーシー氏は、3月に同法案に賛成したほぼ全ての民主党議員の中に含まれていた。

 これはケーシー氏が左傾化していることを示している。2019年には、議会でプロライフを支持してきた民主党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)とともに、共和党の多数派と協力して、妊娠20週以降の中絶を禁止する法案推進に賛成した。

 民主党の法案は、49対51で、法案を表決へと進めるために必要な上院の60票を大きく下回った。民主党は50票を握っており、共和党は今のところ法案を支持すると表明していない。民主党で共和党に賛成したのはマンチン氏だけだった。

 投票前、下院の民主党女性議員らは、「私の体のことは私が決める」と訴えながら議事堂内を抜けて、上院へと向かった。

 ケーシー氏は、全国的に全米で中絶を合法化した1973年の判決「ロー対ウェイド」を覆すアリート判事の意見書の草案がリークされたことを受けて、「中絶に関する議論全体を取り巻く状況は変化した」との声明を発表し、法案への支持を正当化した。

 ケーシー氏は、共和党が11月の中間選挙で過半数を取り戻した場合、中絶の6週間禁止を連邦で制定することを目指していると警告した。

 「今、本当に問われているのは、中絶の完全な禁止を支持するかどうかだ。任期中、そのような禁止に賛成したこともなければ、支持したこともない」

 バージニア大学の政治学教授、ラリー・サバト氏は、中絶に関する態度が変わっているのは民主党だけではないと述べた。中絶に関して、共和党の穏健派はほぼ消滅してしまった。

 共和党の上院議員で自らをプロチョイス(中絶賛成)と称している、スーザン・コリンズ(メイン州)、リサ・マーコウスキー(アラスカ州)の両氏だけだ。

 サバト氏は「イデオロギーと政策をめぐる党内の分極化はほぼ完了した。中絶の権利を受け入れずに民主党のリーダーになることは、不可能ではないにせよ、非常に困難だ。バイデン氏は何十年も前から中絶に宗教面から疑問を抱いており、中絶という言葉を口にすることさえ好まない。それでも彼が頑強な中絶権推進派の大統領へとシフトしたのは、政治的に現実的な代替案が存在しないためだ。共和党の場合はその逆だ。中絶権推進派の共和党大統領を想像することはできない。ドナルド・トランプ氏は、かつては中絶権推進派だったが、中絶権反対派として大統領を務め、最高裁判事3人を選んだのは、彼らがロー対ウェイド判決を覆す準備ができていると考えたからだと言っている。彼は正しかったようだ」

 バイデン氏は、党内のリベラル派から左派へと追いやられた。党内のリベラル派は、共和党が強い州が中絶手術を制限するようになったことや、中絶を合法化した1973年のロー対ウェイド判決を最高裁がひっくり返すという脅威が迫っていることから、党議員に対してより強い立場での支持を要求するようになっている。

 リークされたアリート判事の多数派意見草稿によれば、最高裁はこの画期的な判決を覆し、決定を州に差し戻す構えのようだ。バイデン氏は実践的ローマ・カトリック教徒であり、かつて、中絶は妊婦だけが決めるべきものではないと言っていたが、今では党内の最もリベラルな派閥に味方し、報道官を通じて妊娠9カ月の中絶に反対することを拒否してさえいる。

 倫理・公共政策センターの客員研究員、アレクサンドラ・デサンクティス氏は、ワシントン・タイムズ紙に「ジョー・バイデン氏は、合法的中絶とロー対ウェイド判決を支持する一方で、カトリックの信仰を理由に、何十年も『個人的にプロライフ』を自称してきた。しかし、2020年の大統領選に出馬して以来、彼はさらに極端になり、中絶に対する民主党の過激な姿勢を完全に受け入れている」と述べた。

 バイデン氏の中絶に対する立場は、過去40年の間に劇的に変化した。1982年、上院司法委員会で、ロー対ウェイド判決を覆し、その決定を州に委ねる憲法修正案を推進することに票を投じた。その15年後、バイデン氏は、母体の命を救う場合を除き、部分出産による中絶を禁止することに票を投じた。また、中絶に対する連邦政府の資金援助を禁止するハイド修正条項を一貫して支持し、連邦職員が、ほとんどの中絶に政府の健康保険を利用することを阻止することに票を投じた。

 2015年の時点でバイデン氏は、カトリックの教義上、中絶は「常に間違っている」と述べ、人間の命は受胎から始まるという教会の見解も受け入れていた。

 バイデン氏は大統領就任から2年足らずで、2019年の大統領選で党内のリベラル層からの圧力で撤回したハイド修正条項の支持をはじめ、プロライフの立場をことごとく放棄している。

 5月3日のアリート判事の意見書草案リーク後、バイデン氏は記者団との激しいやり取りで応戦した。彼はこの判断を「過激」と呼び、「女性の選択権は基本的なものだ」と言い切った。

 5月5日の記者会見で、ジェン・サキ大統領報道官は、バイデン氏が現在、中絶への何らかの制限を課すことを支持しているかどうかについて明言を避けた。

 「大統領の見解は、女性は自分自身の健康管理について選択できるようになるべきだというものだ」とサキ氏は述べた。

 バイデン氏は、上院で審議中の法案に署名し、1973年のロー対ウェイド判決を成文化し、さらに州の規制を踏み越え、生存可能期間まで、さらには医師が必要だと判断した場合には出生まで中絶を合法化すると公約している。

 中絶に関する民主党の転換にもかかわらず、一部のリベラルな活動家はまだ満足しておらず、議員らはさらに進める必要があると述べている。彼らは、バイデン氏や民主党の指導者らがこの問題について語るとき、「中絶」という言葉を避けていると非難し、民主党がホワイトハウスと議会の多数派を支配しているにもかかわらず、中絶の合法化に向けて行動を起こしていないと非難している。

 もし最高裁がロー対ウェイド判決を覆せば、いくつかの州は6週以降の中絶を禁止することになり、多くの女性が中絶手術を受けることが困難になる。

 いくつかの州は、妊娠6週目または15週目以降の中絶を禁止する法律を制定している。これまでのところ、これらの州の裁判所は、最高裁がこの法律に対する異議申し立てを却下した後、6週間以降の禁止を制定したテキサス州を除いて、法律の発効を阻止している。

 中絶権活動家らは、1973年の判決を覆すことを秘密裏に支持したとされる最高裁判事の自宅の前で、今週ずっと抗議行動を続けている。

 彼らは民主党にも容赦しない。

 FOXニュースは、中絶団体「ルース・セント・アス」の活動家らが、ナンシー・ペロシ下院議長の自宅前で抗議を行ったと報じた。彼らは、迫り来る最高裁判決を阻止するために十分なことをしていないと非難し、2017年に中絶は党にとって「リトマス試験であってはならない」と宣言した彼女を批判した。

 これに先立ち、ペロシ氏はバイデン氏ら他の民主党幹部とともに、アリート、ブレット・カバノー、ニール・ゴーシュ、クラレンス・トーマス、エイミー・コニー・バレットの各判事の自宅前で行われた、あるいは計画されている抗議活動を、バイデン氏ら民主党幹部とともに支持していた。

 ペロシ氏は今週、仲間の民主党議員に宛てて次のように書き送った。「私たちは地域社会での大変な苦悩を見て、聞いてきたが、多くの人々がその正当な怒りを有意義な行動に向けていることに感動している。自分たちの声を届けるために、行進や動員を計画している」

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