北朝鮮、ロシアと関係強化か-ウクライナ東部親露派の独立承認
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Friday, July 22, 2022
北朝鮮は今月中旬、ウクライナ東部ドンバス地方の親ロシア派「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認した。両自治州を承認したのは北朝鮮、シリアの2カ国だけで、国際的な影響はあまりないとみられているものの、これを受けて、北朝鮮、ロシア両国がいっそう関係を深めるのではないかと懸念されている。
承認は、制裁下の北朝鮮にとって政治的、経済的に大きな意味を持つ可能性がある。ウクライナ侵攻で破壊されたドンバス地方のインフラ再建で北朝鮮労働者が受け入れられる可能性があるからだ。制裁で疲弊する経済を支える絶好のチャンスであり、西側諸国の裏をかくという政治的な意味合いもある。
シンクタンク、民主主義防衛財団のデービッド・マクスウェル上級研究員は、北にとって「非常に魅力的」と指摘した上で、「犠牲を払うことなく、注目を受けることもできる。その上、中露は国連安保理常任理事国であり、両国が反対すれば追加制裁は回避できる」と警戒を呼び掛けた。
承認を受けてウクライナは北朝鮮と断交、欧州連合(EU)も強く非難した。しかし、北朝鮮は「主権国家の正当な権利」と主張、撤回する兆候は見られない。
マクスウェル氏は、両国接近の長期的な影響について、「北朝鮮の金正恩総書記は将来の『ビジネス』チャンスの条件を整えることを考えているのではないか」と強調、交わされたばかりのウクライナの穀物輸出合意が北朝鮮の食料不足解消に利用される可能性も指摘した。
北朝鮮は2017年の核実験を受けた国連制裁で、国外への労働者の派遣が禁止されている。中露を含む5常任理事国の承認を受けた制裁だが、違反に対する罰則をロシアが事実上、阻止する可能性はあるとみられている。
一方、アナリストらは、中国などの大国が承認に動く可能性は小さいとみている。
ジム・タウンゼント米元国防次官補代理は、「各国は(制裁など)承認に伴うコスト」を考え承認に慎重とした上で、「両自治州を承認すれば、直ちに他の地域がそれに呼応する」と他国へ波及し、混乱を招く可能性を指摘した。