米中間の緊張が高まる中、ペロシ氏が台湾に到着
By Joseph Clark – The Washington Times – Tuesday, August 2, 2022
ナンシー・ペロシ下院議長(民主、カリフォルニア州)は2日、中国からの警告にもかかわらず、台湾入りし、数週間前から予想されていた台湾訪問をめぐる憶測に終止符を打った。
ペロシ氏は、他の5人の下院民主党議員と共にアジアをめぐる代表団を率いており、現地時間の午後11時前に台北に到着した。
20年以上前に当時の下院議長ニュート・ギングリッチ氏(共和、ジョージア州)が、中国本土から100マイル(160キロ)余り離れたこの自治の島を訪れており、ペロシ氏はそれ以降に台湾を訪問する米高官の中で最高位となった。
代表団のメンバーは2日の共同声明で、今回の訪問は「台湾の活気ある民主主義を支援するという米国の揺るぎないコミットメントを履行するものだ」と述べた。
ペロシ氏は、ワシントン・ポスト紙に掲載された論説で、現職の下院議長として台湾への画期的な訪問を果たした理由を詳しく説明した。
彼女は40年以上前に台湾関係法が成立し、米台間の経済・外交関係の繁栄の基礎ができたと振り返った。
また、「米国が台湾の防衛を支援するという厳粛な誓い」を強調した。
「きょう、米国はその誓いを思い起こさなければならない。中国共産党の加速する侵略に直面して、私たちの議会代表団の訪問は、民主的なパートナーである台湾が自国とその自由を守るために、米国が毅然とした態度を取るという明確な意思表示と見なされるべきだ」
複数のメディアやペロシ氏のスケジュールに詳しい人物によると、ペロシ氏は3日に台北で台湾政府高官らと会談する。
議員らは「台湾の指導者との話し合いでは、私たちのパートナーへの支持を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の推進を含む、共通の利益を促進することに焦点が当てられるだろう。台湾の2300万人の人々との米国の連帯は、世界が独裁か民主主義かの選択に直面している今日、これまで以上に重要だ」と述べた。
中国当局は直ちに代表団を非難し、中国国営新華社通信を通じて、人民解放軍が台湾海峡で、実弾演習を含む「台湾島周辺の一連の合同軍事作戦」を実施すると発表した。
中国外務省は声明で、「中米関係の政治的基盤に深刻な影響を与え、中国の主権と領土の一体性を著しく侵害する。中国はこれに断固として反対し、厳しく非難し、米国に強い抗議を行った」と表明した。
中国政府は、台湾は中国の一部であり、自国領と主張。正式には「中華民国」と名乗る台湾政府は、独立国ではなく、非合法な分離主義者と非難している。
中国は、米国と台湾は報復を受けることになると警告した。
王毅外相は2日の声明で、「一部の米国の政治家」が「台湾の問題で火遊びをしている」と非難。米国は「自国の信用を破綻させることになる」と訴えた。
「これは間違いなく良い結果をもたらさない。米国の弱い者いじめの顔が再び表れ、世界最大の平和の破壊者であることが明らかになった」
中国政府は、今回の訪問は「一つの中国」政策を覆そうとする米政府の行動としては、カーター政権以来だとし、すでに緊張状態にある二国間関係に深刻な打撃を与えると警告した。
ホワイトハウスは、ペロシ氏の訪中について言及せず、米国の公式な政策に変化が生じることはないと主張した。
米国は公式には台湾を中国の一部とし、中華人民共和国を合法的な政府と認めているが、事実上独立した台湾の現状を変えるための一方的な動きや武力行使には反対している。
ペロシ氏や同行した議員らは、今回の訪問は「台湾へのいくつかの議員団の一つ」であり、決して「長年の米国の政策と矛盾するものではない」と述べた。
「米国は現状を変えようとする一方的な努力に反対し続ける」
しかし、議員らの主張にもかかわらず、一部の評論家らは、ペロシ氏の訪台は「台湾をめぐるスタンドプレー」であり、すでに微妙になっている台湾海峡の平和を揺るがす恐れがあると主張している。
ディフェンス・プライオリティーズのアジア担当ディレクター、ライル・ゴールドスタイン氏は2日、声明で、「台湾は米国の政治家の遊び場ではない。もしペロシ下院議員や他の議会指導者らが、米中間の直接的な軍事衝突による国家安全保障上のリスクを本当に理解していれば、米国人を戦火にさらすような軽率な行動はとらない」と述べた。
「この愚かな政治的スタントが直ちに戦争を引き起こすことはなさそうだが、将来のある不特定の時期に、世界的・国家的大惨事へとふらふらと進んでしまう悲惨なプロセスを加速させるだけだ」
共和党議員を含む他の人々は、米代表団の訪台を支持する発言をした。
共和党のミッチ・マコネル上院院内総務(ケンタッキー州)は、ペロシ氏には「行く権利がある」と述べ、訪問を受けて関係を悪化させた中国を非難した。
マコネル氏は2日の上院本会議で「彼らは力によって現状を変えようとしている。この侵略の当事者が、ペロシ下院議長の訪問が挑発的だと文句を言うのは、全く馬鹿げている」と述べた。
上院情報委員会のベン・サス委員(共和、ネブラスカ州)は、ペロシ氏が「台湾を訪問するのは正しい」と述べた。
「中国共産党は台湾を支配しているわけでも、議会を操っているわけでもない。米政権は自制しているが、この訪問は、米国に同盟国との強固な関係を維持してほしいと考える誰にとっても心強い兆候だ」と述べた。
他の26人の共和党上院議員グループは、ペロシ氏の決定を支持し、「米国の一つの中国政策に合致する」と渡航を擁護する声明を発表した。
中国外務省の華春瑩報道官は、ペロシ氏の訪問は「悲惨な結果」をもたらす可能性があると記者団に語った。
「ペロシ氏の渡航の理由が何であれ、それは愚かで危険、そして不必要な賭けだ。これほど無謀で挑発的な行動は考えらない」
ペロシ氏率いる代表団がマレーシア、シンガポール、韓国、日本をも含む歴訪に出発した後、中国は7月30日に台湾の対岸で「実弾演習」を行うと発表し、台湾を攻撃するつもりではないかとの懸念が強まった。
1日には、中国外務省の趙立堅報道官が、状況は戦争に発展する可能性があると警告した。
「中国側はいかなる事態にも完全に備えており、中国人民解放軍は決して座視することなく、中国の主権と領土の一体性を守るために断固とした対応と強力な対抗措置を取ることを、改めて米側に明確にしたい」
米国は、代表団の訪問を前に、この地域での軍事力を強化すると警告した。米政府当局者らは1日、空母ロナルド・レーガンや海兵隊のF35B戦闘機を搭載した強襲揚陸艦トリポリなど、複数の米艦艇が台湾近くで活動していると発表した。
中国が本気で事態をエスカレートさせようとしている兆候は、ペロシ氏の台湾到着が近づくにつれて明らかになった。
複数の報道機関によると、台湾当局者らは、中国軍機が2日朝、台湾海峡の中間線付近を飛行したと発表した。
台湾の国防部(国防省)はその後、「国軍は台湾海峡周辺の海と空域の動向を完全に把握できている」と述べ、この主張を撤回した。
台湾総統府は、ペロシ氏訪問前の2日夕、ウェブサイトが「海外からのサイバー攻撃」の標的にされたと発表した。サイトは1時間足らずで復旧した。
ホワイトハウスは、「中国の反応は長期に及ぶ」と予想しており、今回の訪問が当面の間、米中関係に影を落とす可能性があることを示唆した。
国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は記者団に対し、「どれくらいの期間になるか、確実なことは分からないが、追加の大規模な射撃演習を発表するなど、今回の訪中以降も反応することは間違いないだろう」と述べた。
バイデン氏は先月、米軍の指導者らが台湾訪問をあまりに挑発的だと考えていることを認めた。
バイデン氏は7月21日、台湾訪問の計画が初めて報道された後、「軍は今のところ良いアイデアではないと考えている」と述べた。
ホワイトハウスはそれ以来、訪問に関するコメントを控え、中国とその人権侵害を長年にわたって批判してきたペロシ氏自身が訪問を決定したと主張していた。
カービー氏は、今回の訪問は「一つの中国」という「長年の米国の政策」に合致するものであるという政権の姿勢を改めて明らかにした。
彼は、中国がこの訪問を機に「何らかの危機」を招来したり、台湾海峡やその周辺での攻撃的活動や軍事活動を強化する口実にしたりする理由はないと述べた。
「米国は危機的状況が起きるとは考えていないし、望んでいない。私たちは、中国政府の選択に対処する用意がある」