公衆衛生局長官:ソーシャルメディアの使い過ぎは心の健康に害がある
By Tom Howell Jr. – The Washington Times – Tuesday, May 23, 2023
ソーシャルメディアが米国の若者に害になると「懸念すべき理由」がある、米国の公衆衛生局長官は火曜日に勧告を発表し、10代から上の若者の大半が、オンラインのメディアサービスを常時利用していることに高まりつつある懸念を上書きするような勧告を出した。
ビベク・マーシー公衆衛生局長官が出した勧告の中で、10代以降の若者にソーシャルメディアがもたらすメリットの一つとして挙げたのは、性的少数者(LGBTQ)や障害者が互いにやり取りし、連帯感を維持できることだ。その一方で同長官は、オンラインで過ごす時間が長くなるにつれて潜在的リスクが高まる、と指摘した。
「ソーシャルメディアの利用が、子供や青少年に害を及ぼす懸念を裏付ける証拠は日増しに多くなっている」「児童や青少年は極めて不適切かつ有害なコンテンツにさらされ、ソーシャルメディア上で1日3時間以上過ごす人は、うつ病や精神不安など、心の健康のリスクが倍になる」(同勧告から)。
多くのユーザーはオンライン上で、「悪感情を刺激するコンテンツ」や、自殺・自傷行為を示唆するコンテンツを目にしている。思春期の女子は、ソーシャルメディアで目にしたコンテンツが原因で、自分の体に不満を感じやすくなる。
複数の調査によると、13?17歳のユーザーの46%が、ソーシャルメディアによって自分の体のイメージが悪くなったと回答し、40%は良くも悪くもならなかった、わずか14%が良くなった、と回答した。
マーシー博士によると、10代の男女の95%がソーシャルメディアを利用しており、同じく10代の3分の1以上が「ほぼ常に」利用している、と回答していて、事態は深刻だと述べている。
さらに8歳から12歳の40%がソーシャルメディアに触れていると報告している。これらの年齢層の児童は脳の発達にとって大事な時期におり、ソーシャルメディアの影響を受けやすい。
「子供たちは暴力や性的なコンテンツ、いじめや嫌がらせまで、ソーシャルメディア上の有害な情報にさらされている」、マーシー長官は指摘した。「非常に多数の子供たちが、ソーシャルメディアの利用により、自身の睡眠時間や、大切な家族・友人との対面時間を減らしている。全国で若者のメンタルヘルスが危機に直面し、ソーシャルメディアがその主要な要因であることを懸念している。」
マーシー博士はまた、ソーシャルメディアの安全性を判定するために、それが及ぼす影響に関して十分研究をしてこなかったと認めた。同博士の今回の勧告は、アメリカ心理学会(APA)がソーシャルメディアの使用によって子供たちが殊更に害を受けたり益を得たりしているわけではない、という趣旨の健康アドバイスを示してから2週間も経たない時期に出された。心理学会の見方は、ソーシャルメディアの影響には個別差が大きく、良し悪しは様々だというものだ。
「ソーシャルメディアの使用は若者にとって、本質的に有益でも有害でもない」、APA報告は述べている。「青少年のオンライン上でのあり方は、オフラインでの生活に反映され、影響を与えている。ほとんどの場合、ソーシャルメディアの影響は、青少年自身の個人的および心理的特徴や対人関係の在り方に依存している。」
若者世代の多くがデジタル時代の生まれだが、ソーシャルメディア自体が顕著になったのは過去20年間の比較的新しい現象なので、その成り行きを十分把握できない。専門家たちは、医療関係者が時代の流れに追いつくことが重要だと語っている。
コロンビア大学で医療心理学を専門にしているザカリー・K・ブラムキン助教授は、2012年以降、児童・青年世代のメンタルヘルス問題が大幅に増していると指摘した。
「コロナ大感染が、この傾向をさらに悪化させたようだ」と同助教授は言う。「この増加傾向は、社会の少数派、例えばアメリカインディアン、黒人、性的少数者(LGBTQ)さらに女性たちの、それぞれの10代の若者にアンバランスな影響を与えている。その主要原因は特定できていないが、ソーシャルメディアが一定の役割を果たしていることは明らかだ。従来になかったほど、児童が集団暴力とか地球温暖化、自然災害、政治の対立など、社会の現状に目と耳を向けざるを得ない。児童や若者の中には、そうした情報を適切かつ有益な形で摂取できない場合もある。
今回の勧告では、情報ハイテク企業がプラットフォームを設計するに当たって、年齢規制や子供のプライバシー保護を遵守するよう求めている。そして、それらの企業が当該プラットフォームの社会的影響に関するデータを、第三者の研究者と共有するよう求めている。
さらに勧告では、親たちが子供との良好な関係を維持し、彼らの睡眠を守るため、ハイテク技術環境から離れる時間と空間を確保する必要があることを強調し、また若者ユーザーは同世代の友人が安全でないコンテンツを遮断できるように助けたり、ソーシャルメディアのコンテンツによって苦しむ若者たちを自主的に助けるよう求めている。
また政策立案者には、「安全規準を強化し、アクセスを制限するために、すべての年齢の子供たちにソーシャルメディアが今より安全なものとなり、また児童のプライバシーが効果的に保護され、デジタルおよびメディアリテラシーの増進を支援し、いっそうの研究活動に資金提供するなど」の措置を検討するよう勧告した。
ブルームキン博士は特に、年少の子供たちはソーシャルメディアを使うべきではないと強調した。
そして、もし彼らが「ソーシャルメディアを使用している場合は、すべてのプラットフォームを監視して、該当年齢に適わしいものかを確認し、プライバシーの設定をわきまえることが不可欠だ」、とブラムキン博士(前掲)は指摘した。
「ソーシャルメディアのリスクについて、児童・青年と率直に語り合うことは、あらゆる年齢にとって大事なことだ。」
一部の州では、子供のソーシャルメディア利用を規制する方向だ。
アーカンソー州のサラ・ハッカビー・サンダース知事は最近、未成年者がソーシャルメディアのアカウントを設定する際には、事前に親の同意を必要とする法律に署名した。
これにより9月から、プラットフォーム企業は、第三者の仲介業者とユーザーの年齢を確認し、18歳未満の場合は保護者の同意を得る必要があることを明示しなければならない。
ユタ州のスペンサー・コックス知事も今年初め、似たような趣旨の法律に署名し、それは2024年3月に発効する。同知事はまた、午後10時30分から午前6時30分までの間、未成年者がソーシャルメディアを利用することを禁止した措置に署名した。
公衆衛生局長官の勧告では、青少年のほぼ3人に1人が平日の夜半過ぎまで、画面で様々なメディアを使用している。
モンタナ州は最近、ネット企業のTikTokを州全体で禁止したが、その理由は、中国にある同社の親会社への懸念だ。TikTok側は、この決定が憲法修正第1条に違反しており、中国政府がユーザーデータにアクセスできるとの主張には「根拠がない」と主張し、禁止措置に対して訴えている。
しかし多くの専門家によれば、ソーシャルメディアが子供に害を及ぼす可能性があることはほとんど疑いの余地がなく、公衆衛生局長官がそれを指摘したのは妥当だという。
「過去数年間、InstagramやTikTokなどのプラットフォームが普及したことで、摂食障害やうつ病が増えるなど、子供たちに深刻な結果をもたらしてきた」、保守的シンクタンクのヘリテージ財団で技術政策センターに務めるジェイク・デントン氏は主張した。「これらプラットフォームは、次世代の無数の人々に、間違いなく取り返しのつかないダメージを与えており、その悪影響がどこまで及ぶのか見当がつかない。」
議会の議員や医療専門家、そして親たちは、手遅れになる前に、これらプラットフォームによって引き起こされるリスクの厳しい現実を直視するべきだ。アメリカの家族は、オンライン上の子供たちを守るため、必要な措置を断固とした法律で解決するに値するものだ。