ロシア国防相が訪朝、弾薬不足で支援要請か
By Andrew Salmon – The Washington Times – Wednesday, August 2, 2023
【ソウル】ロシアのショイグ国防相が先週、異例の北朝鮮訪問を行ったのは、同盟関係が良好だからではなく、ウクライナでの戦争に対してロシア政府内で悲観的な見方が強まってからだと米政府高官らは指摘した。
一方、中国は北朝鮮に対し慎重な姿勢を取り、北朝鮮の朝鮮戦争終結70周年を祝うために低レベルの代表団を派遣した。中国はそれ以来、「パートナー」国のロシアに武器を提供しないという方針を強めている。
「戦勝節」を記念して7月27日に平壌で行われた夜間の軍事パレードでは、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が閲兵台に立ち、ロシアと中国からの訪問団が両側から見守った。
ショイグ氏は、ウクライナでの作戦指揮についてロシア国内で批判を浴びている。米国防総省のライダー報道官は今週、国防総省で記者団に対し、膠着状態にある軍事作戦が1年半を迎えようとしている中、ショイグ氏が訪朝したのは不足している武器を調達するためだったと指摘した。
ライダー氏は「確かに、ロシアが北朝鮮のような国から軍需品を入手しようとしたことは過去にある」と指摘、今回のショイグ氏の訪問は、「弾薬の補給や補充を行うためであり、ロシアが窮地に立たされていることを浮き彫りにしている」と述べた。
ブリンケン国務長官は最近、ロシアのプーチン大統領にも同じ問題があると指摘。「ウクライナ侵攻を続けるために、ロシアは必死になって支援や武器を探している」と述べた。
ショイグ氏は、ソ連崩壊後、ロシアの国防相として初めて北朝鮮を訪問した。これは、ロシアが積極的な支持をどこからも得られず、これまで下に見てきたパートナー国に依存していることを物語っている。
ロシア出身でソウルの国民大学で教鞭をとる北朝鮮専門家のアンドレイ・ランコフ氏は、「何十年もの間、北朝鮮はロシアで非常に評判が悪かった。今回の訪問でロシアの孤立が明らかになった。何らかの支援をしてくれる国を探している」と述べた。
中国が低レベルの訪問団を送ったことも注目されている。代表団を率いたのは、全国人民代表大会常務委員会副委員長で中国共産党政治局委員の李鴻忠氏だ。中国ウオッチャーは、李氏は長年の共産党幹部だが、ショイグ氏のような知名度も影響力もないと指摘した。
これは、中国のウクライナ侵攻に対する熱意が冷めつつあることを示しているが、その一方で中国は、プーチン氏のウクライナや西側諸国に対する批判に対しては支持を表明している。中国企業がロシアに防弾ベストを輸出したと報じられ、バイデン政権は懸念を抱いているものの、中国はこれまで武器や軍需品をロシアに供給していない。
中国は7月31日、ウクライナとの戦闘に使われる可能性があるとして、ロシアへの長距離民生用ドローンの輸出を停止した。
北朝鮮とウクライナ
米政府は昨年11月、北朝鮮がロシアに弾薬を積んだ列車を送ったと非難した。北朝鮮は否定したが、供給の証拠が浮上している。「フィナンシャル・タイムズ」紙は先週、ウクライナ軍がロシアから捕獲したと思われる北朝鮮のロケット弾を発射しているのを目撃したと報じた。
小火器から弾道ミサイルに至るまで、北朝鮮の兵器はほぼワルシャワ条約機構とロシアの兵器を基にしている。82ミリ迫撃砲、122ミリ「グラッド」多連装ロケットシステム、152ミリ榴弾砲など、主要な兵器の口径は同じで、一方のロシアは弾薬を必要としている。
同盟軍のある高官筋が先週、フィナンシャル・タイムズに明らかにしたところによると、戦争初期にはウクライナの砲弾1発に対してロシアが複数の砲弾を発射していたが、現在では、ロシアとウクライナの弾薬の消費はほぼ同等になっているという。
ウクライナの夏の攻勢が低調な一方で、ロシアの兵器のほとんどすべての性能が低いことを考えると、火砲が弱くなるということは致命的となる可能性がある。
攻撃側のロシア軍は、ホストメルやウーレダールといった都市で大きな損害を被った。ロシアの冬の攻勢の先頭に立ち、ロシアの攻撃を補うために数千人の戦闘員を送った民間軍事会社ワグネルは、この地域から撤退した。
英情報機関は昨年末、ロシア正規軍の自動車化部隊の大隊戦術グループが再編成されたと報告した。ロシア空軍は制空権を獲得できず、海軍はウクライナの黒海沿岸から撃退されている。
ロシア軍の武器で手ごわいのは戦術砲兵で、前線でウクライナの兵員と装備を壊滅させた。
弾薬が不足し、ウクライナが砲兵や兵器庫を徹底的に攻撃し、ロシアの火砲の能力が低下すれば、ウクライナに遠征しているロシア軍が不利になる可能性がある。
ロシアからのメッセージ
ランコフ氏は、ショイグ氏の狙いは、弾薬の調達以外にもあると考えている。
「ロシアが本当に武器や弾薬を買いたいのなら、なぜこのような見せ場を作るのか。軍服を着ていない政府高官を送り、秘密の会合を行うことはできなかったのか。なぜ兵器見本市に出向き、テレビに取材させるのか」
その答えは、メッセージ性だとランコフ氏は言う。
「これは、ロシアが北朝鮮との軍事協力を再開する意思があるというシグナルを世界に送るためだったのかもしれない。これは米国にとっては、ロシアが米国にとって新たな問題を引き起こす可能性があるということだ」
別のロシア情報筋はフィナンシャル・タイムズに、ショイグ氏の訪問は、7月15日に韓国の尹錫悦大統領がウクライナを電撃訪問したことを受けたものである可能性があると語った。韓国はウクライナを積極的に支援し、非致死的な軍事装備を供給しているが、軍事援助には消極的だ。
一方、中国の代表団の北朝鮮での行動は控えめだった。
ソウルの韓国外国語大学のジョエル・アトキンソン教授(中国研究)は、「李鴻忠氏は無名ではないが、ショイグ氏に比べれば相対的に序列が低い。理論的には、中国はもう少し上位の人物を派遣することもできたはずだ」と指摘した。
アトキンソン氏によれば、この比較的低レベルの官僚の派遣には二つの意味があるという。それは、中国が北朝鮮を「中国の支援なしには存在できない小国」とみなしていると示すこと、韓国と米国に中国は協力に前向きであるというメッセージを送ることだ。
中国がロシアへの兵器提供に消極的であることについてアトキンソン氏は、中国の習近平国家主席はプーチン氏の敗北を望んでいないが、「挑発的すぎることは避けたい」と考えているためだとみている。
中国の経済と外交は危機に瀕している。アトキンソン氏は、「中国企業は制裁の影響を受けやすい」と指摘、武器を供給すれば「中国の欧州の友人を孤立させることにもなる」と述べた。