金正恩氏、イメージ刷新 北朝鮮メディアに変化
By Andrew Salmon – The Washington Times – Wednesday, August 30, 2023
【ソウル】北朝鮮国営メディアのファンは今後、笑顔の金正恩氏の画像が減り、欧米の人々を楽しませてきた奇妙で奇抜なコンテンツにこれまでほど注力されなくなることを覚悟しておく必要がある。
韓国のある有力な学者は、北朝鮮のプロパガンダ専門家らが、孤立し、権威主義のこの国から流れてくる画像や映像が、外の世界で嘲笑の的になっていることに気付き、洗練された宣伝へ腕を上げていると述べた。
朝鮮中央通信(KCNA)などによる報道には創作が付け加えられているにもかかわらず、国外からは細かなところまでチェックされている。金政権は、不透明で、何をしようとしているのかよく分からないこともあり、その政権が国民に何を知らせようとしているのか、その兆候を探るためだ。
ソウルのエリート校、韓国大学のタチアナ・ガブロセンコ教授(北朝鮮研究)は外国人記者へのブリーフィングで、「私の分析では、北朝鮮メディアは完全に国家の統制下にある。しかし、それは北朝鮮のメディアが全く変わらず、変革を経験していないという意味ではない」と述べた。
プロパガンダが日々の北朝鮮のニュースから消えることは決してない。KCNAなどの国営メディアは8月30日のトップニュースで、政権の75周年を売り込む切手の発行、好調な経済、政府の災害救援活動、100歳になる国民への金氏からの祝いのメッセージ、金氏を「威厳ある強力な国家の新しい時代を切り開いた比類なき愛国者」と称賛する政府機関紙「民主朝鮮」の記事を報じた。
厳しく統制された北朝鮮メディアを30年間見てきたガブロセンコ氏は、現行世代のニュース運営者は海外の資本主義国のメディアから学んでいると述べた。
ガブロセンコ氏は「最近、彼らは自国のメディアをより感動的で魅力的にするために外国メディアを積極的に模倣している。ハリウッド、韓国ドラマ、TikTokを模倣して、新しい形やジャンルを開拓している」と述べた。
黒い革ジャンにサングラスといういでたちで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、移動式発射台(TEL)と共演した恰幅(かっぷく)のいい金氏をフィーチャーした、トップガンスタイルの2022年の動画に、世界中の多くの人々が衝撃を受けた。立派な格納庫の前を歩く金氏のスローモーション動画が流れ、金氏と将官らが見守るなか、カウントダウンが行われ、ミサイルが天空へと上っていく。
欧米の主要メディアでさえ、ウェブサイトでその動画の全編を流すことに抗(あらが)えなかった。
海外のニュース報道を細かなところまでまねている。ミサイルの前で説明を受ける金氏の最近の写真では、セキュリティー上の理由からだと思われるが、戦略軍当局者の顔がぼかされていた。
これらの新たな傾向は海外の視聴者を失望させ、金氏と北朝鮮の生活に関する公式メディアの一風変わったちょうちん報道を、つまらないものにしてしまうかもしれない。
2014年には、潤滑油工場のパイプから黄色い物質がにょろにょろと出てくるのを見て喜ぶ金氏の画像が拡散された。女性兵士らに囲まれ、思い切りニヤニヤ笑う金氏、山のような薬用キノコに挟まれた金氏の写真も海外で嘲笑の的となった。