北朝鮮情勢「見通し立たず」―元米情報長官

(2024年2月10日)

2018年5月9日(水)、ペンシルベニア州エリーのベイフロント・コンベンション・センターで開催された恒例のエリー郡弁護士会ロー・デー昼食会に先立ち、高校生や大学生からの質問に答えるバラク・オバマ大統領下のジェームズ・R・クラッパー元国家情報長官。77歳のクラッパーは昼食会の基調講演者だった。(Christopher Millette/Erie Times-News via AP)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Wednesday, February 7, 2024

 朝鮮半島の緊張緩和への期待は急速に薄れつつある――米国の元情報トップがこう指摘した。北朝鮮の挑発的な行動はますます強まり、米国の外交的影響力はほぼ完全に失われている。

 ジェームス・クラッパー元国家情報長官は6日、ワシントン・タイムズ財団が主催する月例フォーラム「ワシントン・ブリーフ」で講演し、北朝鮮が取り組むミサイル発射実験や核戦力拡大、韓国への敵対的な姿勢に対して、米国と同盟国に取りうる選択肢はほとんどないと述べた。

 クラッパー氏は、バイデン政権は北朝鮮に対する野心的な政策をほとんど持っていないように見えると述べた。仮に北朝鮮に関与すると決めたとしても、外交的な働きかけがどのようなものになるかは明らかではないと同氏は言う。また、トランプ大統領の歴史的な、個人的なオリーブの枝外交は、恒久的な非核化の合意を北朝鮮から引き出すことができなかったと指摘した。

 クラッパー氏は、元中央情報局(CIA)当局者のジョセフ・デトラニ氏が司会を務めるワシントン・ブリーフのイベントで、「現時点では、残念ながら緊張緩和の見通しはあまり立っていない」と述べた。

 「この政権が何らかのイニシアチブをとることに関心があるようには見えない。仮にそうであったとしても、北の行動に真の変化をもたらすためにわれわれがかつて持っていた影響力の多くは失われたと思う。…北は、外交を放棄しており、少なくともわれわれとの交渉はあり得ない」

 「ある時点では、彼らは外交に関心があり、交渉に関心があり、認められることに関心があったと思う。今はそうではないと思う」

 バイデン政権は、前提条件なしの直接会談の用意があると繰り返し表明しているが、北朝鮮は回答を拒否しており、米朝の直接接触は事実上停止している。

 クラッパー氏は今後の展望について厳しい見方を示した。緊迫し、分断された朝鮮半島での変化は目まぐるしく、国家安全保障・情報機関では、この地域が危険な時期に差し掛かっているという見方がいっそう強まっている。先週、北朝鮮は西海岸で巡航ミサイルの発射実験を行ったばかりだ。今年に入ってこの種の実験は4回目となる。

 アナリストによれば、金正恩総書記の下の北朝鮮軍は、大量破壊兵器の配備方法を多様化し、地上配備型ミサイル以外にも拡大しようとしている。

 韓国の尹錫悦大統領は先週、4月の総選挙を控え、北朝鮮はさらなる挑発を行う可能性があると述べた。

 他にも、情勢が悪化していることを示す象徴的な出来事が起きた。北朝鮮は平壌にある韓国との和解を象徴する記念碑を取り壊した。その数日前、正恩氏は韓国を敵対国と正式に宣言した。

 同時に、正恩氏はロシアとの戦略的同盟関係を深めており、ロシアにウクライナ攻撃のための武器と弾薬を提供している。

バイデン政権は失敗したのか

 北朝鮮が挑発的な動きを見せても驚くことはないが、専門家によれば、そのような行動が非常に多いこと、さらに米国主導の外交に動きが見られないこととが、警戒を強めさせる要因になっているという。

 ジョージタウン大学安全保障研究センターのアレクサンドル・マンスーロフ教授は、ワシントン・ブリーフのフォーラムで講演し、「それに加え、最近のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験、巡航ミサイル発射実験、地表発射実験、潜水艦発射実験など、(大量破壊兵器)開発計画を加速しており、これまで見たことのない異常な事態が目の前で繰り広げられているという印象を強く受けている」と語った。

 「ここで問いたい。バイデン政権は本当に失敗したのか」

 クラッパー氏は、米国は基本的に「立ち往生」していると述べた。政権は、北朝鮮に譲歩の姿勢を見せるような外交をとっていない。クラッパー氏はいずれ、米国内政治で「大きな議論」を招くことになると述べた。

 「現時点では、北朝鮮にどのようにアプローチするかについて、誰かが素晴らしい新アイデアを持っていたとしても、まったく役に立たないだろう」

 トランプ政権時代、米国は正恩氏に、核兵器開発計画を検証可能な形で終了させることと引き換えに、制裁を緩和し、北朝鮮への経済投資を開放するための合意を交わす絶好の機会を与えたように見えた。トランプ氏は合意を交わすため、正恩氏と前代未聞の3回の直接会談を行ったが、合意には至らなかった。

 米国の表向きの目標である半島の非核化もまた、憂慮すべき兆候を示している。デトラニ氏によれば、複数の調査で韓国国民の70%以上が、自国の核兵器保有や、1990年代初頭まで韓国に配備されていた戦術核兵器の復活を米国に求めることを支持しているという。

 クラッパー氏は、非核化を最終目標とすることをやめ、北朝鮮が核保有国であることを認めることが、米国の最善の行動かもしれないと述べた。

 「私は現実を認識し、公式に北朝鮮が核戦力を持っていることを認めることを支持する。そうすることで、北の本質的な脅威が増えることも減ることもないし、その『メンツ』や尊厳への欲求に応えることができる。ひょっとすると交渉へのムードが高まるかもしれない」

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