「神の力が働いた」ポーランド元大統領ワレサ氏、ウクライナ・新世界秩序を語る

(2024年2月14日)

2021年8月26日、ポーランドのグダニスクにあるオフィスで、ポーランドの右派現政権に憲法を尊重するよう促すTシャツを着たレフ・ワレサ元大統領。ワレサ氏は2023年9月29日(金)に80歳になった。(AP Photo/Czarek Sokolowski)

By David R. Sands – The Washington Times – Sunday, February 11, 2024

 数カ月前に80歳を迎えたレフ・ワレサ氏は、吐き出してしまいたい心の中のわだかまりが少しあるようだ。

 ノーベル平和賞受賞者で元ポーランド大統領のワレサ氏は、ワシントンの共産主義犠牲者博物館で演説し、ロシアのウクライナ侵攻で米国は指導的役割を放棄すべきでないと警告した。

 労働組合「連帯」の指導者だったワレサ氏はまた、ロシアとの現代の情報戦、新しい世界秩序を構築するための闘い、ポーランドの地理的な不運、5度の「暗殺未遂事件」を生き延びることがどのようなことなのかについて、自身の考えを語った。

 ロシアとの長くもつれた歴史を持つポーランドは、ロシアの侵攻に端を発した戦争が2年の節目を迎えようとしている中、先頭に立って隣国ウクライナに対する西側の支援を呼びかけている。

 ワレサ氏は活気に満ち、名前や政党名を挙げることは避けながら、戦争で最大の危機に瀕しているウクライナを米国は見捨ててはいけないと訴えた。

 バイデン政権は、ウクライナ支援のための国防総省の予算が間もなく底を突くとして、議会にウクライナへの新たな軍事援助のための640億㌦を要求してきたが、議会はそれを何週間も拒否している。

 ワレサ氏は通訳を介して、「ロシアにその力さえあれば、米国を攻撃するだろうということは証明するまでもない。これは唯一のチャンスであり、全世界がロシアに対して団結するまたとないチャンスだ。米議会は、このチャンスを無駄にしてはいけない」と述べた。

 西側諸国がウクライナの戦いに協力しなければ「後の世代は私たちを許さないだろう」。

 ポーランドのグダニスクにある造船所の電気技師だったワレサ氏。トレードマークの口ひげは白くなり、ロックバンドU2のボノをほうふつさせる黄色がかった眼鏡をかけていた。演説は、広範囲に及び、哲学的な雰囲気だった。

 スーツやドレス姿の人々が多い集まりの中で、ワレサ氏は、青いボタンダウンのシャツを着ていた。右胸には15㌢ほどの聖母の刺繍が施されている。

 このイベントは、ワシントンを拠点とする共産主義犠牲者記念財団と米研究基金「プロジェクト・ウィットネス」が主催した。

 ワレサ氏は自らを「現場主義」の実務的な政治家だとした上で、「われわれが行ったことはすべて、古い秩序を解体し、新しい秩序を築くためのものだった」と語ったが、ソ連崩壊後の欧州の新しい秩序はまだ生みの苦しみの中にあると指摘した。

 一方で「今機能しているのは道路交通法だけだ。それ以外はすべて作り直さなければならない」とユーモアのあるところを見せた。

 また、ロシアや米国などの大国は過去、「小国を境界線内に取り込むことで成長してきた」と指摘。

 「しかし、20世紀末には新しい成長概念が登場し、大きな組織に加わることが選択できるようになった。国連、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)だ。それによって、(拡張の)二つの概念のどちらが勝つかという問題が生じた。ロシアと中国が依然として古い概念を使っているからだ」

 「もし私たちが互いに連帯して行動するならば、新しいコンセプトが勝つ」

 新型コロナの感染拡大や環境災害など、現在世界が抱えている問題の多くは、いかに強大な国であっても、一国だけで対処することは不可能であることを示しており、この問題についてワレサ氏は

「大陸ベース、グローバルベースの考え方に移行しなければ、終わってしまう」と訴えた。

 古い政治的対立も見直さなければならない。

 「左派であること、右派であることの意味をゼロから再定義しなければならない。この国でも、二つの政党間の古い分裂を再定義する必要がある。選挙をうまく行うことがいかに難しいか、皆さんは見てきたはずだ。それはすべて古い時代に由来するものであり、すべてを修正し、やり直す必要がある」

 偽情報やネットでの情報戦というホットな話題については、大きな犠牲を伴うプーチン大統領の戦争に対するロシア国民の支持を弱めるための具体的な提案を披露した。

 「情報戦でもっと闘う必要がある。例えば、(ウクライナでの)ロシア人の死傷者をすべて記録し、出身地に送る。地元のバーでよく一緒に飲んでいた人が、プーチンの政策のせいで死んだ。階下の女性はプーチンのせいで息子を亡くした。あす、あなたは徴兵されるかもしれない-それを望むのか」

 さらに「もっと情報を使ってプロパガンダを行い、現状を変えなければならない。指導者らにその方法を考えさせなければならない」と強調した。

 ワレサ氏は、わずか1時間あまりの演説で、驚くほど幅広い話題に触れた。エジプトのピラミッドの謎、知識人に人気だった共産主義と東欧諸国民が冷戦時代に実際に経験した体制の間のギャップ、ドイツとロシアの中間に位置するという「不運」な地理的条件など話題は多岐にわたった。

 「ご存知のように、(ロシア人とドイツ人は)観光客と軍人だ。互いに行き来したい。当時の技術では、互いを訪問するためにはポーランドを通らなければならなかった」

 ワレサ氏は普通なら考えられないような人生を送ってきた。1981年に同じポーランド人のローマ法王ヨハネ・パウロ2世を暗殺しようとした人物が、当初はワレサ氏を狙っていたという報道について尋ねられると、笑みを浮かべながら、「皆さん、私は5回、命を狙われたが、私には上にコネがある。聖人を何人か知っていたので、なんとか逃れることができた」と語った。

 「信じられないようなことをいくつも経験してきた。神の力が働いたとしか思えない」

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