テロ対策における国際協力の難しさ
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, March 21, 2024
敵の敵は時に味方となるのが、テロ対策といういちかばちかの世界である。しかし、それよりもはるかに複雑なこともある。
ジハード・テロリスト集団「イスラム国」(IS)のアフガニスタン支部「イスラム国ホラサン州」(IS-K)による脅威が急速に高まり、米国と、ロシア、イラン、さらにはアフガニスタンの支配者タリバン政権など、米国の宿敵が接近している。これらの国々は、IS―Kから直接、攻撃を受け、死傷者が出ている。ロシアも何度も標的となり、危うく災難を免れてきたようだ。
米国の伝統的な同盟国であり、近年は何度も米国と北大西洋条約機構(NATO)側の悩みの種になってきたトルコでさえ、IS-Kの攻撃によって国内で流血の惨劇を経験している。
アナリストによれば、IS-Kの能力は急速に高まっており、米国外の権益を攻撃したいという欲求も高まっているという。米中央軍司令官のマイケル・クリラ陸軍大将は3月、上院の委員会で、IS-Kを含むイスラム国の関連グループは攻撃する「能力と意志を保持している」と述べ、「早ければ6カ月以内、ほとんど警告なしに」攻撃する可能性があると述べた。
米国防総省によると、イランと、その支援を受ける民兵組織の標的になることをいとわず、3000人以上の米軍がイラクとシリアに駐留しているのは、ISが、かつての強大な「カリフ制国家」を再建するのを阻止するためだという。
クリラ氏は、こうしたISの攻撃は彼らが到達できないであろう米国自体よりも、米国や欧州の同盟国の権益に対して行われる可能性が高いと述べた。それでも、IS-Kに対する直接的な行動がなければ、状況は変わる可能性があると専門家らは警告する。
増長していく敵に直面した米国は、IS-Kを封じ込めるための大陸を超えた広範な取り組みの中で、ある意味、主要な敵国と同盟を結んでいる。一部のアナリストは、関係する大国間の敵意と不信感は非常に強く、テロ対策で直接協力する機会は限られていると警告している。
米国は、IS-Kに関する情報をイランやロシアのような敵対勢力とどの程度共有すべきか慎重に検討しなければならない。欧州や中東での自国の利益を促進するために利用される可能性があるからだ。
トランプ前政権で国務省テロ対策調整官を務めたネイサン・セールス氏は、「これは、敵の敵が必ずしも味方ではないという状況の一例だ」と指摘する。
現在は大西洋評議会の非常勤上級研究員である同氏は、「私が期待しているのは、軍と軍の衝突回避や警告の情報共有といった一歩踏み込んだ協力だ」と語った上で、「しかし、それ以上の深い協力は期待できない。なぜなら、敵はしばしばテロ対策を口実にして自国の利益を促進し、米国の利益を損なうようなことを行うからだ」と述べた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はシリアなどへの派兵の根拠として、ISとの戦いで同盟国であるシリアのバシャール・アサド大統領の政権を支援することを挙げている。イランも、中東のテロ組織と戦っていると主張しているが、その一方でイラン国軍はイラクとシリアのカタイブ・ヒズボラ、レバノンを拠点とするヒズボラ、ガザを拠点とするハマスなどの過激派組織を明らかに支援していると米国の非難を受けている。
セールス氏は、どのような情報を共有するかを決める際には、こうした動向を慎重に検討する必要があると述べた。