アジアの米空軍基地は中国のミサイル攻撃に極めて脆弱-調査
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, December 12, 2024
12日に公表された軍事報告書によれば、将来、地域紛争が発生し、インド太平洋地域の空軍基地の滑走路を中国がミサイルで攻撃すれば、米軍の軍事力は著しく制限されることになる。
米シンクタンク、スティムソン・センターの報告書によれば、最近まで日本など域内の主要な米空軍基地は敵の攻撃を受けることはないとされ、30年以上にわたって空爆による迅速な戦力投射を提供してきた。
報告書は「その聖域の時代は今や終わりを告げ、インド太平洋地域は特にその傾向が強い。中国は、この地域一帯の米軍基地を射程に収めることができる、大規模で洗練された地上発射弾道ミサイルと巡航ミサイルの製造に多大な投資を行っている」と指摘している。
中国の軍事戦略家は、米国の航空戦力は前線基地が最も弱いとみており、特に、ミサイル攻撃で滑走路が破壊されれば、紛争の重要な期間に戦闘機や支援機の離着陸を妨げることができると考えている。人民解放軍(PLA)はこの地域の滑走路や誘導路を精密誘導ミサイルで攻撃すれば、制空権を獲得でき、戦争で優位に立てると報告書は結論づけている。
13人の議員が5月にこの問題を指摘、空軍と海軍の指導者に、インド太平洋地域の基地に強固な航空機シェルターを建設するよう求める書簡を送った。「今こそ行動を起こす時だ」と共和党議員らは訴えた。
報告書は、シェルターや掩蔽壕を強化するだけでは十分ではなく、脆弱な滑走路は空軍のアキレス腱だと指摘している。スティムソン・センターの研究者は、日本や北マリアナ諸島、その他の太平洋諸島の滑走路や誘導路に中国がミサイル攻撃を繰り返し実施した場合の影響をモデル化したシミュレーションを行った。
この研究では、ミサイル攻撃によって、紛争の初期に滑走路や誘導路が数日から数週間閉鎖されると結論づけている。
「これらの攻撃により、米空軍は紛争が始まってから約12日間、日本の米空軍基地から戦闘機の運用ができなくなり、グアムやその他の太平洋地域の米空軍基地からは2日間ほど戦闘機の運用ができなくなる可能性がある」と報告書は強調している。
中国は、台湾に圧力をかけて併合を受け入れさせるか、武力行使で台湾を併合することを視野に、ミサイル戦力の増強に取り組んでいる。南シナ海でも中国の海軍や沿岸警備隊がフィリピンに、東シナ海では日本に対して挑発行為を行っており、緊張が高まっている。
軍用機の運航が妨げられるだけでなく、重要な空中給油機や輸送機の飛行が、日本では滑走路攻撃から1カ月以上、他の基地では半週間中断されることになる。横田基地は空軍の重要な戦略的軍事拠点であり、東京の西、日本の中央に位置している。
空中給油機が使えなくなると、最新鋭のF35など多くの米軍戦闘機の有効性は低下し、滑走路が損傷すれば、紛争開始時に米軍爆撃機がオーストラリア、ハワイ、アラスカの基地などかなり離れた場所で活動することを余儀なくされると報告書は指摘している。このような混乱の中で、飛行時間は数時間増加し、1日の爆撃機の出撃を大幅に減少させることになる。
「米空軍基地に対するこのような脅威に対処することは、間違いなく、現在の米空軍が直面している最も重大で困難な課題だ。空軍は、統合軍が戦闘空中哨戒を迅速に行ったり、台湾海峡で中国船を撃沈したりすることが必要になる軍事衝突の開始時に、まったくではないとしても、期待されたほど効果的な運用ができないという危険にさらされている」
さらに悪いことに、PLAの戦争計画立案者らは、台湾侵攻のような攻撃に米軍が反撃できるようになるまでに30日以上の猶予があると考えている。
空軍の広報担当者は、この報告書についてのコメントを避けた。彼女は、ケビン・シュナイダー空軍大将(太平洋空軍司令官)の9月の演説に言及し、司令官が主に懸念しているのは「弾道ミサイル、巡航ミサイル、核のレトリック」だと述べた。
空軍は、「迅速な戦力展開」と呼ばれる新しい戦略を採用し、「生き残りのために」主要作戦基地から部隊を分散させている。
シュナイダー氏は、「われわれは、適切な時間と場所を選定し、直ちに部隊を再編成し、殺傷力を高め、効果的な攻撃を行う」と語った。米インド太平洋軍のサム・パパロ司令官(海軍大将)は、中国による台湾急襲を遅らせることが重要な優先事項だと述べている。
パパロ氏は「ヘルスケープ(地獄絵図)」と呼ばれる戦略を採用しており、何千もの空中と海上の無人兵器を使って、援軍が到着するまで中国軍の進軍を遅らせる。
「もし中国が、軍事的に素早く簡単に勝利できると結論づけた場合、その行動を抑止するのは非常に難しくなる可能性がある」と報告書は述べている。
予備基地や民間飛行場への航空機の分散、滑走路の迅速な修復、ミサイル防衛の強化といった米軍の対策だけでは、停止した空中給油機の運用を再開させるには不十分だ。
報告書は、航空優勢を獲得する役割を地域の同盟国やパートナー国に移し、精密兵器による攻撃を強化する空軍新戦略の採用を推奨している。米国の同盟国はまた、大規模な米国の戦闘機や爆撃機に頼ることなく、紛争の初期段階で中国の攻撃を鈍らせるために、より多くの無人機やミサイルで航空戦力を増強すべきだ。
報告書は「何よりも、米国の政治的、軍事的指導者たち、そして米国民は、幻想を抱いてはならない。戦争になれば、中国の射程の長いミサイルによる米空軍基地への攻撃は回避できない」と警告している。
68ページに及ぶ報告書「滑走路破壊の効果:インド太平洋の米空軍基地に対する中国のミサイルの脅威」は、スティムソン・センターの研究者ケリー・A・グリーコ、ハンター・スリングバウム、ジョナサン・M・ウォーカー各氏によって執筆された。